資料4

新規採択研究代表者・研究者および研究課題概要


○個人型研究(さきがけ)

戦略目標「プログラムされたビルドアップ型ナノ構造の構築と機能の探索」
3 研究領域:「構造制御と機能」
研究総括:岡本 佳男(名古屋大学エコトピア科学研究所 客員教授)

氏名 所属機関 所属学部・
学科など
役職 研究課題名 研究課題概要
赤井 恵 独立行政法人
科学技術振興機構
ICORPナノ量子導体
アレープロジェクト
研究員 一次元分子細線へのキャリア注入と新機能素子開発 一次元高分子鎖であるポリジアセチレン分子ワイヤー一本から構成される1分子素子を構築します。素子内においてポリジアセチレン分子鎖に直接キャリア(ポーラロン)を注入し、分子ワイヤーの金属転移を誘起します。分子ワイヤーの電気伝導性をコントロールすることによって新機能素子の開発を目指しています。これらの結果はこれまで知られていなかった一次元分子鎖の新物性発現をもたらすものと期待しています。
伊丹 健一郎 名古屋大学 物質科学
国際研究センター
助教授 3次元空間の精密有機建築化学 3次元空間を原子・分子レベルから思いのままにビルドアップする手法の確立は化学者に託された大きな課題です。本課題では、プログラムされた新しい分子構築方法論の開拓と特異な3次元骨格構築を可能にする新しい合成反応の開発を2本柱として、ナノサイズの空間・構造体の創製および機能発現を実現したいと考えています。最終的には「精密有機建築化学」という物質創製における新しい考え方や方向性を提供することを目指します。
井上 将行 東北大学 大学院理学研究科 助教授 電位依存性チャネルの完全化学合成と新機能創製 電位依存性イオンチャネルは、我々のあらゆる感覚・感情・思考・動作を統御する超高機能ナノデバイスですが、そのナノレベルでの動的開閉機能は未解明です。本研究は、電位依存性チャネル形成天然毒ポリセオナミドAによる総合的なチャネル研究を計画しており、天然物として最大級の分子量(5000)をもつポリセオナミドAの完全化学合成・チャネル分子の動的開閉機構の解明・高機能化ナノデバイスの創製を目指します。
片平 正人 横浜市立大学 大学院
国際総合科学研究科
教授 インテリジェント生物素子の創製 これまでの研究で、ある種の核酸の立体構造が、カリウムイオンの有無によって大きく変化する事を見出しました。これを応用すれば細胞内のカリウムイオン濃度を検知して、必要な場面でのみ活性がオンになる自律的な酵素や有害物質捕捉分子(アプタマー)を創製することができ、また核酸性のイオンチャネルを構築できる高い可能性もあります。本研究では、インテリジェント生物素子(自律的酵素・自律的アプタマー及び人工イオンチャンネル)の創製を行います。
小林 健二 静岡大学 理学部 助教授 ヘテロ原子間相互作用に基づく分子集合と機能発現 本研究では、ヘテロ原子間相互作用をナノ構造構築プロセスの新規制御モチーフとして捉え、ポリアセンに硫黄原子を導入し、硫黄原子間相互作用に基づくポリアセン環のπ-πスタッキングを実現し、有機トランジスタ特性を最大限に引き出します。また、水溶性のテトラヨードお椀型分子を合成し、ミセル化と疎水部ミセル中心でのヨード原子間相互作用を駆動力として水中でキュービックカプセルを構築し、特異的包接反応場へ展開します。
齋藤 健一 広島大学 自然科学研究支援開発センター 助教授 光と機能性流体の融合による先端ナノ材料の創製と評価 本研究では、超臨界流体中で固体材料に高強度レーザーを照射し、「色と形」を制御してナノ材料を創製します。この手法は世界にさきがけて開発され、その特徴は1)数分で創製、2)任意の物質に適用可、3)流体の圧力を変えるだけで異なる材料を創製、です。さきがけでは、色の異なるナノシリコン、形の異なる金ナノ粒子(球、棒状、三角柱)の創製・評価をさらに発展し、また他の物質についてもナノ材料を開拓していきます。
坂口 浩司 静岡大学 電子工学研究所 助教授 分子ワイヤ・シンセサイザー 電気を流す分子細線を絶縁基板上に1個の分子レベルで大面積に作り・並べ、分子末端に電極を接続する日本発の画期的な有機デバイス構築技術“分子ワイヤ・シンセサイザー(分子細線製造機)”を開発します。この方法を用いた有機電子デバイスを試作し、従来型と比べて劇的な性能向上と世界最高性能を目指します。達成されれば装着可能な軽くて曲がるデバイスや高性能バイオセンサなど様々な分野での応用が期待されます。
芹澤 武 東京大学 先端科学技術研究センター 助教授 ポリマー結合ペプチドのビルドアップと機能探索 最近、ペプチドが無機化合物の結晶面を認識し特異的に相互作用する可能性が見出されています。これまでの研究で、汎用性ポリマーの一つであるポリメタクリル酸メチルの立体構造をペプチドが認識するといった予備知見を得ています。そこで本提案では、様々な立体構造あるいは集合構造を有するポリマーに結合するペプチドを分子進化工学的手法を駆使してビルドアップし、特異ペプチドが持つナノ材料としてのポテンシャルを発掘します。
高野 敦志 名古屋大学 大学院工学研究科 助教授 高分子メゾスコピックダイヤモンド構造の構築 フォトニック結晶は光の絶縁体として注目され、理想的な3次元構造にダイヤモンド構造があります。これまでのトップダウン方式による結晶作成に対し、ボトムアップ方式によりダイヤモンド構造を構築することは重要なテーマです。その一つの解が高分子複合材料の自己組織化を利用した目的構造作製で、実現すれば構造周期の制御、材料加工性から極めて有用です。本研究では、アニオン重合法を用いて分子量、組成などを精密に制御したABC星型共重合体試料の合成を行い、その自己組織化によりメゾスコピックスケールのダイヤモンド網目構造の構築を世界に先駆けて試みます。
江 東林 自然科学研究機構 分子科学研究所 助教授 樹木状金属集積体を用いたスピン空間の創出と機能開拓 本研究では、空間形態が明確な樹木状高分子を活用することで、集積型金属錯体の高度な配列制御を通じて、小分子には見られない特異な機能を開拓することを目的とします。具体的に、「分子設計→集合体の配列制御→機能発現」という構想に主眼を置き、スピン活性ナノマテリアルの設計の基礎を築き、光誘起スピン転移や孤立空間における電子スピンの制御を実現し、次世代スピンデバイスを担う機能性ナノ物質群の創出を目指します。
津田 明彦 東京大学 大学院工学系研究科 助手 超分子ナノクラスターのキラル科学 本研究は、超分子ナノクラスターが動的不斉場において誘起する超分子キラリティーを基礎とした、革新的キラルナノテクノロジーの開発を目的とします。超分子ナノクラスターが、不斉環境に応答して、自身の構造を変化させる性質を利用し、“不斉炭化水素の不斉認識”や“撹拌・回転などの物理的キラリティーの分子不斉への変換”など、これまできわめて困難とされてきたキラル科学に挑戦します。
平岡 秀一 東京大学 大学院理学系研究科 助手 自己集合性動的分子システムの開発 金属イオンの持つ配位構造の多様な変化と配位子交換といった動的特性を最大限に引き出す場を提供する新規ディスク状多座配位子をデザインし、金属錯体型の分子運動素子、分子機械の開発、および動的ナノカプセルの構造変換に伴う内部空間における分子認識能や反応性の自在コントロール、構造変換から導かれる情報伝達系の開発を行います。さらにこれらの複合系から作られる動的分子システムの開発を図ります。
村田 靖次郎 京都大学 化学研究所 助手 分子手術法による新規内包フラーレン類合成と機能開発 中空のフラーレン骨格内部に小分子・原子・金属イオン等が閉じこめられた内包フラーレンは従来法では純粋な物質の大量合成が困難です。本研究では、比較的安価に得られる空のフラーレンを原料として、フラーレン骨格に穴を開け、そこから小分子や金属イオンを導入した後、穴を閉じるという、いわば「分子手術」とも言える手法によって、新しい内包フラーレンを有機化学的手法により合成し、新規物性の発現を目指します。
村橋 哲郎 大阪大学 大学院工学研究科 助手 炭素鋳型法による低次元性ナノ金属化合物のビルドアップ型創製 「共役炭素」が多数の金属原子をサンドイッチするとき、挟まれた金属原子は炭素のπ-共役構造に沿って集合・整列する性質があります。この新しく見出した性質を利用して、サブナノレベルからナノレベルまでの金属構造をサイズ・形状選択的に構築する手法を開拓します。これまで構築が困難とされてきた「1次元金属ワイヤー」や「2次元単層金属シート」を自在構築し、有用な機能を構造-活性相関に基づいて解明します。