参考1

研究領域の概要


<チーム型研究(CREST)>


○ 戦略目標:「安全・安心な社会を実現するための先進的統合センシング技術の創出」

1 「先進的統合センシング技術」
研究総括:板生 清(東京理科大学専門職大学院総合科学技術経営研究科 研究科長・教授)
研究領域の概要
 本研究領域は、自然災害や人為的作用など社会の安全・安心を脅かす危険や脅威を早期かつ的確に検知し、その情報を迅速に伝達する統合センシング技術を創出することを目指す研究を対象とするものです。
 具体的には、危険物・有害物質や、ビル・橋などの人工物・建造物の劣化・異常の検知や人間のバイタルサインの検知など、人間環境や人工環境、または自然環境の状態を検知する高感度・ワイヤレス・超小型の革新的なセンサ技術、ネットワーク異常発生時や災害時などにもデータ伝送を保証するネットワーク技術、センサからの多様なデータを解釈し、異常検知・迅速な対応・処置を提示する情報処理技術に関する研究などを対象とします。
 さらに、個別要素技術の組み合わせにより、検知の感度・精度・選択性の飛躍的な向上を実現する技術、情報処理・ネットワーク技術にブレークスルーをもたらすセンサ・ネットワーク・システム技術、一体的なシステムを実現する技術などを目指した研究などが含まれます。

○ 戦略目標「通信・演算情報量の爆発的増大に備える超低消費電力技術の創出」の下の研究領域

2 「情報システムの超低消費電力化を目指した技術革新と統合化技術」
研究総括:南谷 崇(東京大学先端科学技術研究センター 教授)
研究領域の概要
 本研究領域は、情報通信システム・ネットワークにおいて、回路・デバイス、アーキテクチャ、システム・ソフトウェア、アルゴリズム・プロトコル、応用・サービスにおける革新的要素技術の階層統合的な管理、制御によって既存技術による低消費電力化の限界を打破する研究を対象とするものです。
 具体的には、動的電圧制御技術、適応的エネルギー管理技術、動的再構成アーキテクチャ、省電力ネットワークアーキテクチャ、省電力アルゴリズム、並列処理言語・コンパイラ技術等の個別要素技術において飛躍的な高性能化・高信頼化と低消費電力化を実現する研究、各階層の要素技術の統合的管理によってシステムの超低消費電力化にブレークスルーをもたらす研究、さらには抜本的な超低消費電力化を可能にする新しい原理に基づくハードウェアおよびソフトウェア基盤技術の創出を目指す研究が含まれます。

○ 戦略目標「次世代高精度・高分解能シミュレーション技術の開発」の下の研究領域

3 「マルチスケール・マルチフィジックス現象の統合シミュレーション」
研究総括:矢川 元基(東洋大学工学部 教授/日本原子力研究所計算科学技術推進センター センター長)
研究領域の概要
 本研究領域は、世界最先端レベルの超高速・大容量計算機環境と精緻なモデル化・統合化によって、複数の現象が相互に影響しあうようなマルチスケール・マルチフィジックス現象の高精度且つ高分解能の解を求めることを研究の対象とします。
 具体的には、地球環境変動、異常気象、およびそれに起因する災害予測、人工物の安全性・健全性の評価、複雑な工業製品の設計・試作、ナノレベルの材料挙動、生体内たんぱく質構造と生体内薬物動態など、支配因子が未知あるいは不確定性を含む現象やスケールが極度に異なる現象等のモデル化の研究、そのようなモデルの統合数値解析手法の研究、モデルや入力データの妥当性・結果の信頼性の評価方法の研究などが含まれます。

○ 戦略目標「代謝調節機構解析に基づく細胞機能制御に関する基盤技術の創出」の下の研究領域

4 「代謝調節機構解析に基づく細胞機能制御基盤技術」
研究総括:鈴木 紘一(東レ株式会社 専任理事、先端融合研究所 所長)
研究領域の概要
 本研究領域は、細胞内の代謝変化を統合的あるいは網羅的に解析し、細胞の恒常性維持のメカニズムを解明することにより、細胞機能の向上・改変・付与や恒常性の乱れを回復するための、細胞を制御する基盤的な新技術の創出を目指す研究を対象とします。
 具体的には、代謝産物群のパターンによる外部刺激に応じた正常細胞の細胞内状態の変化や病態、発生過程等における細胞状態の評価・分類、既存あるいは個別測定データに基づく細胞モデリングと機能変化予測、それらの研究に基づく代謝経路を特異的に制御する化合物の予測と制御物質設計に関する研究、およびこれらの研究に基づいた新機能を付与した細胞の作製技術などが含まれます。

○ 戦略目標「光の究極的及び局所的制御とその応用」の下の研究領域

5 「新機能創成に向けた光・光量子科学技術」
研究総括:伊澤 達夫(NTTエレクトロニクス株式会社 取締役相談役)
研究領域の概要
 本研究領域は、情報処理・通信、材料、ライフサイエンスなど、基礎科学から産業技術にわたる広範な科学技術の基盤である光学および量子光学に関して、光の発生、検知、制御および利用に関する革新的な技術の創出を目指す研究を対象とするものです。
 具体的には、情報処理・通信技術や計測技術などの飛躍を目的とした量子ドット、フォトニック結晶、非線形光学の応用などによる新しい光機能素子などの原理や技術、分子・原子や化学反応の制御、生体観察・計測、産業・医療などへの利用を目的とした未開拓の波長域発生などの新しい光源・検出手法の開発・高度化と利用技術、近接場光などを利用した光と物質の局所的相互作用の解明と超微細加工や超大容量メモリなどの利用技術、光による原子の量子的制御技術や光の本質に基づく新たな物質科学などの創出を目指す研究を対象とします。
 また、以上の研究にブレークスルーをもたらす、新材料に関する研究も対象とします。

○ 戦略目標「新たな手法の開発等を通じた先端的な計測・分析機器の実現に向けた基盤技術の創出」の下の研究領域

6 「物質現象の解明と応用に資する新しい計測・分析基盤技術」
研究総括:田中 通義(東北大学 名誉教授、多元物質科学研究所 研究顧問)
研究領域の概要
 本研究領域は、物質や材料に関する科学技術の発展の原動力である新原理の探索、新現象の発見と解明に資する新たな計測・分析に関する基盤的な技術の創出を目指す研究を対象とするものです。
 具体的には、新材料や新規なデバイスの創出、新規な微細加工技術の創出等に資する計測・分析技術、環境中等に含まれる極微量物質の化学的存在形態に関する新規な計測・分析技術等を対象とします。また、ナノスケールでの物質の形態に応じた物性や、表面、界面の化学組成や物性に関する新規な計測・分析技術も対象とします。
 さらに、既存の基本原理に基づく技術であっても、計測・分析の速度、感度、精度を飛躍的に向上させる技術あるいはその限界に挑む技術等、新原理の探索や新現象の発見と解明に資する研究や物質科学技術にブレークスルーをもたらすことが期待できる研究を含めます。

7 「生命現象の解明と応用に資する新しい計測・分析基盤技術」
研究総括:柳田 敏雄(大阪大学大学院生命機能研究科 教授)
研究領域の概要
 本研究領域は、生命系科学技術の発展の原動力である未解明の生命現象の解析に資する新たな計測・分析に関する基盤的な技術の創出を目指す研究を対象とするものです。
 具体的には、生命現象を司る生体分子の作用機構の本質に迫る解析技術や、生体または細胞中での生体分子のその場観察技術、単一細胞レベルでの分析技術、個体から生態系にわたる多様なスケールでの新規な計測・観測技術などを対象とします。また、環境試料中に含まれる極微量物質が生体に与える影響を計測・分析するための新規な技術も対象とします。
 さらに、既存の基本原理に基づく技術であっても、計測・分析の速度、感度、精度を飛躍的に向上させる技術あるいはその限界に挑む技術等、新原理の探索や新現象の発見と解明に資する研究や生命系科学技術にブレークスルーをもたらすことが期待できる研究を含みます。

○ 戦略目標「メディア芸術の創造の高度化を支える先進的科学技術の創出」の下の研究領域

8 「デジタルメディア作品の制作を支援する基盤技術」
研究総括:原島 博(東京大学大学院情報学環・学際情報学府 教授)
研究領域の概要
 本研究領域は、情報科学技術の発展により急速な進歩を遂げたメディア芸術という新しい文化に係る作品の制作を支える先進的・革新的な表現手法、これを実現するための新しい基盤技術を創出する研究を対象とします。
 具体的には、コンピュータ等の電子技術を駆使した映画、アニメーション、ゲームソフト、さらにはその基礎となるCGアート、ネットワークアート作品等の高品質化(多次元化も含む)を目的とした映像や画像の入力・処理・編集・表示技術、インターフェイス技術、ネットワーク技術等に関する研究を行います。視覚や聴覚以外の感覚の表現をも可能とする人工現実感技術、現実空間と人工空間を重畳させる複合現実感技術等も含みます。また、デジタルメディアとしての特徴を生かした斬新な表現手法の研究、快適性や安全性の観点から人間の感性を踏まえた表現手法の研究、物語性に優れた作品の制作を可能にする高度なコンテンツ制作手法の研究、誰もが自由にデジタルメディア作品の制作を効率的に行うことが出来るソフトウェア・ハードウェアに関する研究なども対象とします。

○ 戦略目標「情報通信技術に革新をもたらす量子情報処理の実現に向けた技術基盤の構築」の下の研究領域

9 「量子情報処理システムの実現を目指した新技術の創出」
研究総括:山本 喜久(スタンフォード大学応用物理・電気工学科 教授/情報・システム研究機構国立情報学研究所 教授)
研究領域の概要
 本研究領域は、ミクロの世界で観測される量子力学的現象を制御し、記憶、演算などの情報処理を行うシステムへ展開していくための基盤となる新しい技術の創出を目指す研究を対象とするものです。
 具体的には、光・電子・原子・原子核など様々な系を対象として、量子効果に基づく基本的なデバイスや多量子ビット化の技術、量子情報の伝送技術や中継技術、さらにそれらの基盤となる要素研究、例えば量子もつれ現象の制御・観測に関する研究等に関して、シミュレーションを含めた実証的な研究を対象とします。

○ 戦略目標「教育における課題を踏まえた、人の生涯に亘る学習メカニズムの脳科学等による解明」の下の研究領域

10 「脳の機能発達と学習メカニズムの解明」
研究総括:津本 忠治(独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センター ユニットリーダー)
研究領域の概要
 本研究領域は、脳を育み、ヒトの一生を通しての学習を促進するという視点に、社会的な観点も融合した新たな視点から、健康で活力にあふれた脳を発達、成長させ、さらに維持するメカニズムの解明をめざす研究を対象とするものです。
 具体的には、感覚・運動・認知・行動系を含めた学習に関与する脳機能や言語などヒトに特有な高次脳機能の発達メカニズムの解明、及びそれらの臨界期(感受性期)の有無や時期の解明、発達脳における神経回路網可塑性に関する研究、高次脳機能発達における遺伝因子と環境因子の相互作用の解明、健やかな脳機能の保持を目指した研究、精神・神経の障害の機序解明と機能回復方法の研究、社会的な環境の変化が脳機能に及ぼす影響に関する研究等が含まれます。