戦略的創造研究推進事業(公募型研究)における平成17年度
新規採択研究代表者・研究者及び研究課題の決定について


○個人型研究(さきがけ)

戦略目標「新たな手法の開発等を通じた先端的な計測・分析機器の実現に向けた基盤技術の創出」
研究領域:「生命現象と計測分析」

氏名 機関名 所属部署名 役職名 研究課題名
秋山 修志 独立行政法人
理化学研究所
播磨研究所 基礎科学特別研究員 時間と共に離合集散を繰り返す分子機械のX線小角散乱・動的構造解析
石本 哲也 富山医科薬科大学 大学院医学系研究科 助手 記憶形成の脳内イメージング
上杉 志成 京都大学 化学研究所 教授 生命現象分析のための小分子転写因子創成
小椋 俊彦 独立行政法人
産業技術総合研究所
脳神経情報研究部門 研究員 蛋白質電顕画像を用いた自動 in silico 擬似結晶構造解析法の開発
金子 智行 東京大学 大学院
総合文化研究科
助手 オンチップ多電極刺激計測系による細胞ネットワークの構成的理解
喜多村 和郎 University College
London
- Senior Research Fellow 神経活動のin vivo高速イメージングと光操作
末田 慎二 九州工業大学 情報工学部 助手 2段階ビオチン化反応を利用したタンパク質解析
楯 真一 技術研究組合
生物分子工学研究所
機能制御研究部 部長 超高分子量蛋白質の分子形態変化を観測するNMR技術
谷 正彦 大阪大学 レーザーエネルギー学
研究センター
助教授 生体分子計測用THz帯CARS分光イメージング装置の開発
寺田 純雄 東京大学 大学院医学系研究科 講師 細胞内生体分子間ネットワークのリアルタイム検出法の開発と細胞生物学的応用の検討
中西 淳 早稲田大学 先端科学・健康医療
融合研究機構
助手 時空間を制限した細胞内シグナルの発生とその計測
松崎 政紀 自然科学研究機構 生理学研究所 助手 広狭域2重2光子励起顕微鏡による神経回路網の計測

五十音順に掲載

総評:研究総括 森島 績(京都大学 名誉教授/立命館大学理工学部 客員教授)

 本研究領域は、生命現象の解明のために必要な新たな原理や手法に基づく計測・分析の技術に関して独創的な発想に基づく革新技術を創出し、生命現象の本質に迫る諸問題を解決することを目指したもので、本年度から募集を開始しました。
 これまでに活発に研究されてきた生体分子の科学から生命現象の科学への進展には、生命現象にかかわる計測・分析技術の飛躍的発展が不可欠となります。細胞内での生体分子間相互作用など複雑な化学的諸過程を含む生命現象を解明するためには、物理・化学・生物現象を利用した新規な発想に基づく先端的計測分析法の開発が必須となります。また、このような計測技術の開発を支える新しい試薬の開発などの周辺技術研究も公募の対象としました。さらには細胞レベルにとどまらず個体や生態・環境レベルでの研究も対象としました。
 本研究領域の公募に対し、広い研究分野から計212件の応募があり、これらの研究提案を9名の領域アドバイザー、2名の外部評価者の協力を得て厳正に書類選考を行い、特に優れた研究提案26件に対して面接選考を行いました。面接選考に際しては、研究のねらい、研究計画などの観点のほか、研究構想が提案者のオリジナルのアイデアに基づくこと、当該研究分野において新規性に富んでいること、研究実施体制が個人規模であること、などを重視しました。
 採択課題数は12件で、新しい発想に基づく意欲的な研究課題を採択することが出来ました。競争率は20倍弱と極めて高い倍率となり、本研究領域と関連するほかの研究領域への応募数をも勘案すると、この分野の研究に対する関心が極めて高いことになります。物理原理に基づく新しい計測法、既存の手法の革新的高性能化、分子生物学的手法による細胞内生体高分子の動態解析、化学合成による高感度プローブの開発、新しい分離分析チップの開発など多数の優れた提案がありました。採択された課題はいずれも意欲的かつ挑戦的なもので、準備状況も進んでいるものが多くありました。他方、提案課題の中には独創性は高い反面、準備が進んでいないものがあり、来年度以降再度挑戦していただきたいと思います。また、斬新な装置開発に関する研究や新規性が高くシンプルな計測・分析手法、大胆なアイデアに基づく提案などが少なく、今後に期待したいと思います。