<用語解説>

*1 層状物質
2次元シート状の伝導相・絶縁相が交互に積層した物質で、電子は基本的に伝導相に閉じ込められている。この低次元性という特異性が引き金となって、電子が3次元的に広がっているような物質では見られないような現象が層状物質では起こることが多い。
*2 高温超伝導
金属が低温で電気抵抗ゼロになる現象を超伝導という。超伝導のメカニズムは超伝導の標準理論(BCS理論)によって説明される。しかし、層状銅酸化物における超伝導は、従来の超伝導転移温度(最高はNb3Geの23 K)よりも7倍以上も高いものもあり(最高は圧力下で164 K)、そのメカニズムは標準理論では単純には説明がつかないと考えられている(非従来型超伝導)。層状銅酸化物においてみられる転移温度が高い非従来型超伝導を高温超伝導と呼ぶ。
*3 κ-(BEDT-TTF)2Cu[N(CN)2]Cl
図3に示すようなBEDT-TTF層(伝導層)とアニオン層(絶縁層)が交互に積層した有機物電気伝導物質。圧力下では約13 Kの非従来型超伝導を示す。
*4 相転移
 相互作用しあう基本要素(例えば、原子、分子、電子など)が無数集まると、もはや1つの要素の性質からは想像がつかないような、多体系としての性質を帯びてくる。多体系がある性質を帯びた状態を「相」という。例えばH2O分子が無数集まると、気体相、液体相、固体相(物質の三態)と、多体系として様々な様相を呈してくる。温度や圧力等の環境を変えると、多体系の相が変化することがあるが、このような変化を相転移と呼ぶ。液体相が気体相や固体相になる、金属相が超伝導相や絶縁相になるといった変化は、全て相転移の一例である。
*5 ユニバーサリティクラス
 臨界現象はいくつかの臨界指数の組(例えば δ, β, γ という文字で表記される指数の組)によって特徴付けることができる。世の中に臨界的な振る舞いを伴う相転移は、液体気体転移、金属超伝導転移など枚挙に暇がないが、驚くべきことに相転移を示す多体系の構成要素は様々(原子、分子、電子など)であっても、臨界現象は基本的な特徴を共有している、すなわち何らかの普遍性を有している。これは、相転移の見た目の多様性にもかかわらず、実際には臨界指数は限られた組しか見つかっていないことに対応する。つまり、臨界現象はいくつかのタイプ(ユニバーサリティクラスと呼ぶ)にグループ分けすることができる。図4に現在までに確立している代表的なユニバーサリティクラスの名前とその臨界指数の対応を示す。同じクラスに分類される相転移は同じモデルで統一的に理解することができるので、その相転移が分類されるユニバーサリティクラスを知ることは極めて重要である。