独立行政法人 科学技術振興機構(理事長 沖村憲樹)は、独創的シーズ展開事業・委託開発(注1)の開発課題「磁気光学空間光変調器」の開発結果を、このほど成功と認定しました。
本開発課題は、豊橋技術科学大学教授 井上光輝氏らの研究成果を基に、平成15年3月から平成17年3月にかけてFDK株式会社(代表取締役社長 杉本俊春、本社 東京都港区新橋5-36-11、資本金 22,756百万円、電話:03-3434-1271(代表))に委託して、企業化開発(開発費約178百万円)を進めていたものです。
光情報処理、光通信分野の技術の進展に伴い、光の強度、位相、偏光等の変調に用いる空間光変調器の高性能化への要求が高まっています。従来、液晶、DMD(デジタル ミラー デバイス)タイプ等のものは、画素の応答時間が、数十ミリ秒から十マイクロ秒程度であり、次世代の光記録媒体、光相関器等へ用いるには十分ではありませんでした。
本新技術は、磁性ガーネット膜の磁気光学効果を利用することで超高速駆動が可能な空間光変調器に関するものです。
フォトリソグラフィーを用いて加工した基板上に磁性ガーネット膜を成膜し、画素を形成することにより、平坦で画素間に溝がなく、磁気的に分離し独立に駆動する素子の製作方法を開発しました。さらに、画素を独立に駆動させる回路を考案し、素子を実装することで、画素の微細化、光応答速度の超高速化、消費電力の低減化を実現しました。
本技術により製作した空間光変調器は、画素の応答時間が15ナノ秒という超高速駆動を実現し、安定性に優れていることから、ホログラムを用いた超高密度の光メモリ装置、3次元プロジェクションシステム等への光変調デバイスとしての応用が期待されます。
なお、本開発成果である磁気光学空間光変調器は、井上教授が研究代表者を務めている当機構戦略的創造研究推進事業課題「超高速ペタバイト情報ストレージ」にて研究中のホログラム記録装置に搭載される予定です。
(注1)独創的シーズ展開事業 委託開発は、平成16年度まで、委託開発事業として実施されてきました。
本新技術の背景、内容、効果の詳細は次の通りです。(背景) ナノ秒クラスの光応答時間を有する空間光変調器が求められています。
空間光変調器は、光の強度、位相、偏光等を変調できるデバイスで、ディスプレイ、プロジェクタ等に利用されています。従来、液晶、DMD(デジタル ミラー デバイス)タイプ等のデバイスが利用されていますが、光情報処理、光通信分野の技術の進展に伴い、高性能化への要求が高まっています。特に、光応答時間高速化への要求は強く、現在の数十ミリ秒から十マイクロ秒程度から、十数ナノ秒程度への性能向上が、次世代の光メモリ装置、光相関器等へは欠かせない条件となっています。
(内容) 磁気光学効果(ファラデー効果)を利用した空間光変調器に関するものです。
本新技術は、磁性ガーネット膜の磁気光学効果を利用することで、超高速駆動が可能な空間光変調器に関するものです。
フォトリソグラフィーを用いて置換型ガドリニウム・ガリウム・ガーネット基板を加工し、その上に磁性ガーネット膜を成膜し、画素を形成することにより、平坦で画素間に溝がなく、磁気的に分離した素子を形成することが可能となりました。さらに、磁気光学効果により画素を駆動させる電極配線をX、Y方向に設計、製作することで、画素の微細化、光応答速度の超高速化、消費電力の低減化、信頼性の向上を実現しました。現在、画素数128×128で、画素サイズ14μmの空間光変調器が得られています。
(効果) 記憶容量がテラバイト級の次世代光メモリ装置が可能となります。
本新技術は、
磁気光学効果により、超高速駆動ができる
可動部がないため、安定性に優れる
ピクセルサイズ、間隔を容易に設定できる
という特徴を有しています。特に、光応答時間は、15ナノ秒という世界最速性能を持つものであり、次々世代の超高密度光メモリ装置であるホログラムディスクや3次元プロジェクションシステム等へのキーデバイスとしての応用が期待されます。
【用語解説】 |
図1.磁気光学空間光変調器の原理 |
図2.FDKが開発した磁気光学空間光変調器の外観 |
図3.ホログラム記録への応用イメージ図 |
開発を終了した課題の評価 |
この発表についての問い合わせは以下の通りです。
FDK株式会社 | 技術開発本部技術開発統括部Sプロジェクト | |
リーダー | 梅澤浩光 | |
TEL:053-575-2514 | ||
JST | 開発部 | 開発推進課 |
菊地博道、正木法雄 | ||
TEL:03-5214-8995 FAX:03-5214-8999 |