科学技術振興機構報 第173号

平成17年5月10日

東京都千代田区四番町5−3
科学技術振興機構(JST)
電話(03)5214-8404(総務部広報室)
URL http://www.jst.go.jp

小型・高抵抗で温度特性に優れた超精密チップ抵抗器の開発に成功

 独立行政法人科学技術振興機構(理事長 沖村憲樹)は、委託開発事業(注1)の開発課題「超精密薄膜チップ抵抗器」の開発結果をこのほど成功と認定しました。
 本課題は、秋田県高度技術研究所 所長 大内一弘氏らの研究成果を基に、平成14年2月から平成17年1月にかけてアルファ・エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長 楠美省二 本社 東京都千代田区内神田1-9-13、資本金333百万円)に委託して企業化開発を進めていたものです。

 近年、民生用から産業用までの高精度電子機器において、小型化・省電力化が進み、抵抗器に対しても高精度化・小型化・高抵抗化の要求が強くなっています。
 従来、抵抗体に特殊な合金箔を使用し、温度特性、長期安定性に最も優れる超精密級金属箔抵抗器がありましたが、金属箔の微細加工が難しく、小型化・高抵抗化には限界がありました。一方、抵抗体に金属皮膜を使用する金属皮膜抵抗器では高抵抗値が取得できますが、温度安定性・長期安定性が劣っていました。
 本開発では、抵抗体にニクロム系合金を採用し、薄膜スパッタ技術と、最適な熱処理管理、および半導体製造技術を応用した薄膜抵抗パターンの微細加工技術と、抵抗値に影響を与えないパッケージ方法を開発することにより、小型でありながら高精度・高抵抗で、耐環境性に優れた超精密級金属薄膜抵抗器の製造を可能としました。
 本新技術による製品は、米国防省の物品調達規格(MIL規格)にも準拠する耐環境性をもち、小型でありながらも高抵抗であることから、使用温度範囲の拡大と抵抗値変化の低減が可能となり、高精度・高信頼性が求められる産業用高精度電子機器、使用環境の厳しい航空宇宙の分野および車載用電子機器等への利用が期待され、数年で数百万個、数億円の売上げが期待されます。

(注1)委託開発事業は、平成17年度より独創的シーズ展開事業―委託開発―として実施しています。


本新技術の背景、内容、効果は以下の通りです。

(背景)
超精密級の抵抗器に対しても小型化・高抵抗化が求められています。

近年、民生用機器から、産業用の高精度電子機器までの幅広い範囲において、小型化・省電力化が進んでおり、精度が特に高い超精密級抵抗器に対しても小型化・高抵抗化の要求が強くなっています。一般に、抵抗器は小型化に伴い利用できる抵抗体部分の面積が減るため抵抗値も減少します。従来の超精密級金属箔抵抗器では金属箔の微細加工が難しく、これ以上の小型化・高抵抗化には限界があります。また、金属皮膜抵抗器では高抵抗値が取得できますが、温度安定性・長期安定性が劣るという問題があります。

(内容)
抵抗体としてニクロム系合金を基板に薄膜スパッタし、最適な熱処理と微細加工技術等により、小型・高抵抗で温度特性に優れた超精密チップ抵抗器の製造を可能としました。

 本新技術は、極薄膜の抵抗体の精度向上のため、アルミナ基板の表面がガラスコーティングされた平滑度の高いグレーズ基板を採用し、抵抗体にはニクロム系(Ni-Cr+数%の添加元素)合金を基板に薄膜スパッタしました。温度安定性の向上については、成膜条件の最適化により最適な温度特性条件と温度係数が最小となる熱処理温度を見いだしました。高抵抗値の取得については、微細パターンが精度良く露光できる条件を確立し、ドライエッチング法(イオンミリング法)により1MΩのパターンを得ました。抵抗値の精度向上は、抵抗パターンの中に予め調整用パターンを組み込み、このパターンをレーザトリミング(配線カット)することで、高精度の抵抗値を得ました。使用温度範囲の拡大と長期安定性の向上については、熱処理した抵抗体を安定化処理し、抵抗体表面に保護層を形成することで、広い温度範囲で経時変化を抑えることができ、外装樹脂や端部電極の形成についても熱膨張による応力を緩和する構造を確立しました。

(効果)
小型・高抵抗で、使用温度範囲の拡大と抵抗値変化の低減が可能

本新技術により、金属皮膜以上の小型・高抵抗でありながらも、金属箔抵抗器と同等の耐環境性と安定性を示すことが可能となり、全世界で1200億円程度の売上がある抵抗器市場において、高精度・高信頼性が求められる産業用高精度電子機器、使用環境の厳しい航空宇宙の分野および車載用電子機器等への利用がされ、シェアを取っていく事が期待されます。

図1 抵抗器の種類
図2 チップ抵抗器の構造
図3 2012型抵抗器
開発を終了した課題の評価

なお、本件についての問い合わせは以下の通りです。

アルファ・エレクトロニクス株式会社開発部

部長 佐藤牧夫(電話:0184-67-2905)
独立行政法人科学技術振興機構開発部 開発推進課

菊地博道、住本研一(電話:03-5214-8995)