資料1

戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ICORPタイプ)
(平成16年度発足)


<研究領域>
「量子スピン情報」

<研究総括>
樽茶 清悟 氏
(東京大学 工学系研究科 教授)


<研究領域「量子スピン情報」の概要>

粒子相関は、超伝導や強磁性など、ときに鮮明な現象として現れる。その物理の深遠さや応用への期待によって、20世紀後半から現在に至るまで、数多くの研究成果が生み出されている。一方、この10数年、急速に進歩した微細加工技術によって世に送り出された量子細線やドットなどの低次元構造では、当初から強い電子相関が期待されていたものの、その実像を捕らえることは、理論の複雑さや実験の難しさもあって容易ではなかった。最近になってようやく、電子相関を議論しうるレベルの低次元構造が作られるようになり、物理に踏み込んだ研究が可能になってきた。また、応用の面でも、相関を利用したスピントロニクス、量子情報処理などの革新的な技術が開発され始めている。とくに、量子情報は、将来のセキュリティや情報産業を一変させる可能性があることから、急速に関心を集めている。

本研究領域では、人工原子(量子ドット)系での知見をより自由度の大きい「人工分子」に拡張し、より多彩な「スピン相関の世界」の探求と量子情報処理への研究展開を図る。具体的には、結合の対称性、トンネル結合・交換結合を厳密に制御することにより、分子的量子論の解明とスピン相関の制御を目指す。これらの応用として、スピン量子ビット、量子もつれを実現し、量子計算の性能を見極める。さらに、電子情報の有用性の拡大をねらいとして、単一電子スピンから光子、核スピンへの情報転写を目指す。また、本研究領域は半導体エレクトロニクス、量子物性、量子情報の融合領域にあり、その推進には最高水準の半導体技術、低温o高周波測定、量子情報理論を用いる。これらのことにより、本研究領域は戦略目標「情報通信技術に革新をもたらす量子情報処理の実現に向けた技術基盤の構築」に資するものと期待される。

日本側   樽茶 清悟(東京大学 工学系研究科 教授)
オランダ側 Leo P. Kouwenhoven(デルフト工科大学 教授)
スイス側  Daniel Loss(バーゼル大学 教授)