科学技術振興機構報 第153号

平成17年 2月16日

東京都千代田区四番町5−3
科学技術振興機構(JST)
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カリウム型人工ゼオライトの製造装置の開発に成功

 JST(理事長 沖村憲樹)は、委託開発事業の開発課題「カリウム型人工ゼオライトの製造装置」の開発結果を、このほど成功と認定しました。
 本課題は、愛媛大学教授の逸見彰男氏の研究成果を基に、平成13年3月から平成16年11月にかけて、木村化工機株式会社(代表取締役社長 茨木徳彦、本社 兵庫県尼崎市杭瀬寺島2丁目1番2号、資本金 1,030百万円)に委託して実用化開発(開発費 約75百万円)を進めていたものです。

<開発の背景>
 国内では、火力発電所等から毎年840万トン近い石炭灰(フライアッシュ)が発生し、さらに増加の傾向にあります。石炭灰は、再生資源化すべき副産物として指定され、コンクリート混和剤、地盤改良資材等として利用が行われてきました。しかし、現状では約20%(約170万トン)が埋立・投棄され、また埋立地も不足しています。このため、石炭灰の新しい再資源化の道が要望されていました。
 石炭灰の新しい再利用方法として、人工ゼオライト(注1)への転換が開始されていますが、農業用の土壌改良資材向けに、植物に有害な交換性ナトリウム分を含まない新しい人工ゼオライトが期待されていました。

<開発の内容>
 本新技術は、石炭灰を水酸化カリウム(KOH)と水熱反応させ、効率良く、カリウム型人工ゼオライトを製造するものです。従来、石炭灰と苛性ソーダの反応からナトリウム型人工ゼオライトを作製し、これをイオン交換してカリウム型人工ゼオライトを製造する方式で、15時間以上かかるとされていたところ、本新技術では5時間以内の反応で、高い陽イオン交換容量(CEC)(注2)を持つ、カリウム型人工ゼオライトを製造するものです。

<開発の効果>
 本新技術で得られるカリウム型人工ゼオライトは、植物の3大栄養素の一つであるカリウムを大量に含有し、かつ、植物に有害な交換性ナトリウム分をほとんど含まないことから、農業や道路法面の植生栽培などにおいて、優良な土壌改良資材として広く採用されることが期待されます。また、発電所等での石炭灰の再資源化、ゼロエミッション社会の進展に貢献することが期待されます。

本新技術の背景、内容、効果は次のとおりです。

<背景>
植物に有害な交換性ナトリウム分を含まない土壌改良資材として、カリウム型人工ゼオライトを、石炭灰(フライアッシュ)から効率よく製造する方法が求められてきた。また、石炭灰の再資源化の促進が求められてきた。

 再生資源化すべき副産物として指定されている石炭灰の有効利用には、コンクリート混和材や地盤改良資材への利用、また人工ゼオライトへの転換などがあります。本新技術は、石炭灰と水酸化カリウム(KOH)を一段階水熱反応させることで、交換性ナトリウム分をほとんど含まないカリウム型人工ゼオライトを、製造することが可能となりました。

<内容>
シンプルな反応装置により、カリウム型人工ゼオライトを高効率で製造できる。

 従来、農業用土壌改良資材として、石炭灰と苛性ソーダの反応からナトリウム型人工ゼオライトを作製し、これをカリウム型に転換してカリウム型人工ゼオライトを製造することが検討されてきましたが、この二段階製造方式では、植物に有害な交換性ナトリウム分を数パーセント以下にできず、品質が不十分なため、実用化されませんでした。また、石炭灰と水酸化カリウムの一段階水熱反応により、カリウム型人工ゼオライトを直接製造する方式について、従来提案された方式では高品質の製品を得るためには15時間以上の反応が必要で、使用する薬品も高価なため、実用化されませんでした。本新技術では、石炭灰と5規定以下の水酸化カリウムの混合液の一段階水熱反応で、反応時間、反応温度を最適に設定し、また、低コスト大量製造プラントの最適化設計により、約5時間の反応で、高いイオン交換容量を持つカリウム型人工ゼオライトを、安価に製造することが可能となりました。

<効果>
植物に害のない交換性ナトリウム分を含まない優良な土壌改良資材として、カリウム型人工ゼオライトを提供できる。また、石炭灰の再資源化が促進される。

 年産3,000トン級の、既存カルシウム型人工ゼオライト製造設備の一部をカリウム型に換装して実証試験を実施し、次の結果を得ました。
1 反応時間5時間以内で、陽イオン交換容量(CEC)約270cmol/kgのカリウム型人工ゼオライトを製造する技術が確立できた。
2 カリウム型人工ゼオライト中の交換性ナトリウム分は約0.02%で、従来のカルシウム型人工ゼオライトなどの約1/1000であることを確認しました。このカリウム型人工ゼオライトは、農業や道路法面の植生育成等において、優良な土壌改良資材として広く用いられることが期待されます。

【用語解説】

1.人工ゼオライト

ゼオライトには天然ゼオライト、精製薬品から合成される合成ゼオライト、及び人工ゼオライトがある。人工ゼオライトはアルミノ・シリケートを母材とする産業副産物(石炭灰など)の粒子表層を溶解・ゼオライト結晶化したもの。

2.陽イオン交換容量(CEC)

cation exchange capacity。ゼオライトや土壌に交換態で保持されている陽イオンの総量。負荷電の総量。で、100gあたりのミリグラム当量数(meq)、あるいはcmol/kgを単位として表示される。

図1 カリウム型人工ゼオライト製造のフロー
図2 カリウム型人工ゼオライトの電子顕微鏡画像の例
図3 実証試験設備(年産3,000トン級)
開発を完了した課題の評価

【本件問い合わせ先】

独立行政法人科学技術振興機構 開発部開発推進課
     菊地博道、高野 晃(電話:03-5214-8995)

木村化工機株式会社 資源リサイクル事業推進室
     副参事  服部照夫(電話:06-6487-2310)