科学技術振興機構報 第15号
平成15年12月 5日
埼玉県川口市本町4−1−8
独立行政法人 科学技術振興機構
電話(048)226-5606(総務部広報室)
URL:http://www.jst.go.jp/

タンパク質・酵素を分子レベルでソフトにラッピングできる新材料を開発

 独立行政法人 科学技術振興機構(理事長:沖村憲樹)は、戦略的創造研究推進事業「合成と制御」研究領域(研究総括:村井 眞二)における研究テーマ「巨視的応答性を有する超分子ポリマーの創製(研究者:浜地 格)」において、自発的にヒドロゲルを形成する糖アミノ酸誘導体を新しく開発し、そのゲル中に酵素やタンパク質が活性を保ったまま包み込まれることを発見した。
 このヒドロゲルを利用することで、DNAに比べ構造が複雑で活性を失いやすいタンパク質等のバイオ分子をソフトに包み込んで活性を保持したまま固定化することができるので、疾病診断のツールと成りうるタンパク質・ペプチドアレイとして応用されることが期待できる。

 本研究成果は、英国科学誌「Nature Materials」での発表に先行して、平成15年12月8日(月) 午前3時(日本時間)にインターネット「URL:http://www.nature.com/nmat/」上にて事前公開される。
【論文内容および今後期待できる成果】
<Nature Materials掲載に至るまでの背景>
 浜地研究員は、糖とアミノ酸からなる小分子(糖アミノ酸誘導体)のコンビナトリアルケミストリー(多種類化学合成)法※1を開発している過程でそのいくつかが極めて低濃度で水を固める(ゲル化)能力を持っていることを偶然発見した。自発的にゲル化するこの糖アミノ酸誘導体の構造と機能解析を進める中で、この分子材料がペプチドや酵素などのバイオ分子の活性を保ったままでゲルの中に包み込む(図1)(セミウエット状態※2ことのできるユニークな材料であることを発見した。
<今回の論文概要>
 遺伝子DNAアレイ※3は次世代の医療診断法として期待され既に確立された技術になりつつある。これに対してタンパク質・ペプチドはもっと直接的で的確な生体内情報をもたらすと考えられているものの、DNAにくらべて構造が複雑で活性を失いやすいためにこれらのアレイ(チップ)化はこれまで十分な成功を収めていない。我々は今回、糖アミノ酸誘導体からなるヒドロゲルのナノメートルレベルでの精密な構造解析に成功した。このヒドロゲル※4は糖鎖部分を水相に突き出した繊維状のナノファイバーが集まって形成されており(図2)、生体適合性の高さが直感された。その構造的な知見に基づいて、このヒドロゲルにタンパク質や酵素を注入する実験をすすめ、このヒドロゲルがペプチド・タンパク質・酵素など従来固定化によって活性を失いやすいとされてきたバイオ分子をソフトに包み込んで生き生きと固定化することができることを発見した。マイクロリットルというごく微量のヒドロゲルをガラス基板のうえにスポットしていくと、ペプチドやタンパク質が並んだアレイを簡単に作製することができ、これを用いるとタンパク質や酵素の種類や機能を蛍光色の変化として簡便で精度良く識別できることも実証した(図3)
<今後期待できる成果(まとめ)>
 タンパク質・ペプチドアレイは、ポストゲノム時代※5の重要課題であるタンパク質機能解析:プロテオームの基盤技術としてこの領域の研究に大きく寄与すると期待される。本発明は、酵素やタンパク質の本来の機能を損なわず極少量ずつ固定化できるので、タンパク質機能やそのネットワークの解析およびそれらが関連する疾病診断などに強力なツールを提供するであろう。
 さらに、次世代の科学技術として期待されているものの一つナノバイオテクノロジー※6(ナノテクノロジーとバイオテクノロジーの融合領域)への展開である。この領域ではペプチドや酵素といったバイオ分子を生き生きと機能させるマトリックス材料の開発が望まれている。この論文で見いだした「セミウエット」状態でこれらの包み込む手法は、バイオ分子のナノマシンやナノセンサーなどへの利用を大きく拡大するものと期待できる。
【論文名】
Nature Materials 「title: Semi-wet peptide/protein array using supramolecular hydrogel」
( title和訳: 超分子ヒドロゲルを用いたセミウエット型ペプチド・蛋白質アレイ )
doi :10.1038/nmat1034
【研究領域等】
戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけタイプ)
「合成と制御」研究領域 (研究総括:村井 眞二)
研究課題名: 巨視的応答性を有する超分子ポリマーの創製
研究者: 浜地 格(九州大学先導物質化学研究所教授)
研究実施場所: 九州大学先導物質化学研究所
研究実施期間: 平成15年10月〜平成18年9月
 
【補足資料説明】 図1
図2
図3
【用語説明】
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【問い合わせ先】
浜地 格 (ハマチ イタル)
九州大学先導物質化学研究所教授/科学技術振興機構(JST) さきがけ研究者
〒812-8581 福岡市東区箱崎6-10-1
TEL: 092-642-4419, FAX: 092-642-2715
瀬谷 元秀(セヤ モトヒデ)
独立行政法人科学技術振興機構
戦略的創造事業本部 研究推進部 研究第二課
〒332-0012 埼玉県川口市本町4-1-8
TEL:048-226-5641,FAX:048-226-2144
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