別紙2

令和元年度(平成31年度) 採択研究課題の概要

※研究課題の並びは、研究代表者名の五十音順です。また、研究課題名は採択時のものであり、相手国関係機関との実務協議などの結果、変わることがあります。

※各研究課題が最も貢献する「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」をアイコンで示しています。SATREPSでは、SDGsに積極的に対応して国際社会に貢献していきます。

環境・エネルギー分野

研究領域「地球規模の環境課題の解決に資する研究」
(気候変動への適応、生態系・生物多様性の保全、自然資源の持続可能な利用、汚染対策などSDGsに貢献する研究)

研究課題名 東南アジア海域における海洋プラスチック汚染研究の拠点形成 貢献する主なSDGs 14.海の豊かさを守ろう12.つくる責任つかう責任
研究代表者
(所属機関・役職)
磯辺 篤彦
(九州大学 応用力学研究所 大気海洋環境研究センター 教授)
研究期間 5年間
相手国 タイ王国 主要相手国研究機関 チュラロンコン大学
研究課題の概要
本研究は、海洋プラスチック汚染に関する調査・研究拠点をタイに構築し、海洋プラスチックごみ軽減のための行動計画をタイ政府に提案することを目的とする。まずサッタヒープ郡において、プラスチックごみの発生量解析や現存量調査、環境影響評価、そして将来予測を集中的に行う。この結果を踏まえた行動計画を策定し、地域のポリシーメーカーや多様なステークホルダーと共に、プラスチックごみ発生量の削減を実現させる。続いて、特定地域の成果をエビデンスとして、対象をタイ全域に拡張した行動計画をタイ政府に提言する。本研究で形成されたプラスチックごみの調査・研究拠点は、本研究期間終了後も、持続的なごみ削減のために行動計画の強化・更新を行う上で、科学的根拠を与える司令塔となることが期待される。また、タイにおける取り組みや社会実装をもとにASEAN域内にロールモデルを波及させ、域内での海洋プラスチックごみの削減を目指す。
研究課題名 マレーシア国サラワク州の国立公園における熱帯雨林の生物多様性活用システムの開発 貢献する主なSDGs 15.陸の豊かさも守ろう4.質の高い教育をみんなに12.つくる責任 つかう責任
研究代表者
(所属機関・役職)
市岡 孝朗
(京都大学 大学院人間・環境学研究科 教授)
研究期間 5年間
相手国 マレーシア 主要相手国研究機関 サラワク州森林局
研究課題の概要
本研究は、サラワク州の広範な地域に点在する国立公園の熱帯雨林において、マレーシア研究機関の研究者と協働し、多様な生物の分布生息状況や保護状況を、次世代DNAシーケンサーを用いたDNAバーコーディングなどの先端技術を駆使して網羅的に調査し、生物多様性科学において重要な課題である熱帯雨林の生物多様性の全貌解明を目指す。また、その過程で得た知識と共に、生物多様性に関する最新の知見を整理・統合して、観光産業、遺伝子資源を利用したバイオ産業、住民の自然認識、科学・環境教育など、地域社会のさまざまな層の幅広い用途に適した情報を発信する、生物多様性情報プラットフォームの構築を目指す。さらに、それらの取り組みで得られた経験と成果に基づき、教育プログラム・社会普及プログラムを策定・実施して、生物多様性の知的資源の価値に対する認識を高め、科学的な技能を備えた人材の育成体制を確立する。
研究課題名 世界自然遺産・マラウイ湖国立公園における貴重な自然と調和した持続可能な地域開発モデルの構築 貢献する主なSDGs 12.つくる責任つかう責任2.飢餓をゼロに1.貧困をなくそう
研究代表者
(所属機関・役職)
佐藤 哲
(愛媛大学 社会共創学部 教授)
研究期間 5年間
相手国 マラウイ共和国 主要相手国研究機関 マラウイ大学チャンセラー校
研究課題の概要
本研究は、世界自然遺産であるマラウイ湖国立公園内の漁村を対象に人々の生活と福利を支える水産、農業、森林、観光などの各種資源と、その基盤となる自然環境を統合した、持続可能な資源管理の仕組みの構築を目的とする。研究者と地域社会でさまざまな立場から資源の持続可能な管理を試みている人々が協働して、最新の資源管理科学における「レバレッジ・ポイント(問題解決の鍵となるポイント)」の概念を用い、在来の知識・技術を融合させながら、実践から得た学びを通じて、開発途上国の農山漁村に広く適用可能な、複雑な社会生態系システムの統合資源管理システムを構築・運用し、環境保全と持続可能な開発、人間の福利の向上に貢献するものである。本取り組みによって開発途上国における農山漁村の新しい持続可能な地域開発モデルを構築し、人間生活と自然の調和を促す保護区管理政策の提案を社会実装として目指す。

環境・エネルギー分野

研究領域「低炭素社会の実現に向けた先進的エネルギーシステムに関する研究」
(クリーンエネルギー、気候変動の緩和などSDGsに貢献する研究)

研究課題名 パリ協定による2030年目標に向けた高温多湿気候下のインドネシアにおける低炭素アフォーダブル集合住宅の社会実装 貢献する主なSDGs 11.住み続けられるまちづくりを7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに13.気候変動に具体的な対策を
研究代表者
(所属機関・役職)
久保田 徹
(広島大学 大学院国際協力研究科 准教授)
研究期間 5年間
相手国 インドネシア共和国 主要相手国研究機関 公共事業・住宅省 人間居住・住宅研究所
研究課題の概要
本研究は、インドネシアにおいて今後増加が見込まれる中高層集合住宅を対象に2国間の産学官連携の下で包括的な低炭素技術を共同開発し、それらを確実に社会実装することを目的とする。高度シミュレーション技術により、温暖化の影響を考慮した2030年時点における主要都市の気象予測を行い、次に、蒸暑地域における居住者の温熱生理反応メカニズムを明らかにし、同地域ならではの新たな熱的快適性基準を開発する。これらの成果を基に、蒸暑地域に特化した低炭素建築技術を多面から開発し、統合したものを実際の集合住宅に導入する。研究成果を同国の国家規格に反映させるとともに、地方自治体と連携した実装プロジェクトを通じて、最終成果を法的拘束力のある建築規制に落とし込む。これにより2030年時点の高温化した気象条件下において、同国の温室効果ガス削減目標値の達成に寄与する集合住宅の包括的低炭素技術がハード・ソフトの両面で普及されることが期待される。
研究課題名 東アフリカ大地溝帯に発達する地熱系の最適開発のための包括的ソリューション 貢献する主なSDGs 7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに13.気候変動に具体的な対策を9.産業と技術革新の基盤を作ろう
研究代表者
(所属機関・役職)
藤光 康宏
(九州大学 大学院工学研究院 教授)
研究期間 5年間
相手国 ケニア共和国 主要相手国研究機関 ジョモ・ケニヤッタ農工大学
研究課題の概要
本研究は、大地溝帯に位置するケニアをモデルケースとして、地熱資源の探査・開発・利用それぞれの段階で発生が予想される問題についてその解決手法を研究開発し、最適な開発を促進するとともに、これらの研究開発を通じて若い技術者・研究者を育成し、ケニアと周辺諸国の地熱エネルギーの有効利用が促進されることを目的とする。探査段階においては、精密重力探査や地磁気地電流法に加えて、受動的微小地震探査やAIによる地下温度推定などの新技術を組み合わせたハイブリッド物理探査を実施し、これに地質・地化学調査の結果も含めて地理情報システム(GIS)に統合し、大地溝帯に特有の地熱系の構造を明らかにする。開発段階においては、地域住民の地熱発電や直接利用などに対する意識調査を実施し、社会受容性を高める方法や事業を立案する。利用段階においては、日本と異なるケニアの地熱系に特徴的なアルカリ性の熱水で発生するスケール対策の手法を確立する。

生物資源分野

研究領域「生物資源の持続可能な生産と利用に資する研究」
(食料安全保障、健康増進、栄養改善、持続可能な農林水産業などSDGsに貢献する研究)

研究課題名 遊牧民伝承に基づくモンゴル草原植物資源の有効活用システムの開発 貢献する主なSDGs 2.飢餓をゼロに8.働きがいも経済成長も15.陸の豊かさも守ろう
研究代表者
(所属機関・役職)
浅見 忠男
(東京大学 大学院農学生命科学研究科 教授)
研究期間 5年間
相手国 モンゴル国 主要相手国研究機関 モンゴル国立大学
研究課題の概要
本研究は、モンゴル草原の多様な植物についての遊牧民の豊富な知識と伝承に基づき、伝承を最新科学により解析し、短い夏に発揮される旺盛な成長力、貧栄養土壌などのストレス環境への耐性力、家畜の健康増進を進める薬効力などに優れた植物を探索する。伝承に基づく科学的解析においては、新規な遺伝子・化合物の探索、植物栽培法の確立を中心とし、その成果を基に、疲弊したモンゴル草原の「診断」「治療」による緑地の回復、回復した緑地への薬用植物の植栽化を複合的に実施することによって、モンゴル草原植物の有効活用化による草原保全、家畜健康保全を目指す。地球温暖化と過放牧によるモンゴル草原植物の生産性低下やモンゴルの遊牧畜産業の発展性阻害などの状況は、ユーラシア大陸内陸部の中央アジアおよび中東諸国共通の問題であるため、開発する草原植物の有効活用システムは、世界の遊牧畜産業の活性化に寄与することが期待される。
研究課題名 高栄養価作物キヌアのレジリエンス強化生産技術の開発と普及 貢献する主なSDGs 2.飢餓をゼロに15.陸の豊かさも守ろう
研究代表者
(所属機関・役職)
藤田 泰成
(国際農林水産業研究センター 主任研究員)
研究期間 5年間
相手国 ボリビア多民族国 主要相手国研究機関 サン・アンドレス大学
研究課題の概要
本研究は、近年の気候変動などにより、唯一の栽培可能作物であるキヌアの持続的生産が危惧されているボリビアの南部アルティプラノ高原において、持続可能な農業生態系の保全・管理技術をベースにしたレジリエンス(強靱性)強化キヌアの生産技術を開発し、普及させることを目的とする。具体的には、①キヌアおよび近縁野生種の遺伝資源の整備とゲノム育種基盤の構築、②早生などのレジリエンス強化につながる育種素材の開発、③休閑地管理や耕畜連携、有用生物資源探索などによる、在来生物資源を活用した持続的栽培体系の構築、④キヌア情報普及ネットワークの構築、の4課題を実施する。得られた成果は提言としてまとめ、政府・NGO主導の普及活動を促進する。これらの取り組みを通じ、将来的には、気候変動の影響を受けやすい世界中の乾燥地域を中心に栄養価の高いキヌアのレジリエントな農業生産体系を普及させ、飢餓や栄養改善に貢献することを目指す。
研究課題名 世界の台所ASEANにおける家畜生産と食品安全に関する新技術導入による畜産革命の推進 貢献する主なSDGs 2.飢餓をゼロに12.つくる責任つかう責任17.パートナーシップで目標を達成しよう
研究代表者
(所属機関・役職)
三澤 尚明
(宮崎大学 産業動物防疫リサーチセンター  センター長・教授)
研究期間 5年間
相手国 タイ王国 主要相手国研究機関 タイ農業協同組合省畜産開発局
研究課題の概要
本研究は、すでに日本側拠点と学術ネットワークを構築しているタイをASEANの拠点として位置づけ、畜産資源供給基盤強化に不可欠な新技術を社会実装することにより、ASEANが目指す畜産革命を推進することを目的とする。具体的には、①ASEANで問題となる家畜感染症や食中毒病原体のマルチ診断システムの開発、②家畜伝染病拡散モデリングとIoTを活用した感染症対策システムの開発、③畜産物の病原菌制御技術の開発を行うとともに、④異分野融合型の包括的防疫研究を共同で実施し、感染症防疫体制と安全な食肉処理技術の確立に必要なキャパシティー・デベロップメントを図る。これにより、タイにおいて、畜産資源の持続的発展と世界への供給に必要な基盤技術を構築する。さらに、これらの取り組みを通じ、ASEANにおける家畜資源の安定・安全供給技術が確立され、地球規模課題である食料安全保障へ貢献する。

防災分野

研究領域「持続可能な社会を支える防災・減災に関する研究」
(災害メカニズム解明、事前の対策、災害発生から復旧・復興までSDGsに貢献する研究)

研究課題名 気候変動下での持続的な地域経済発展への政策立案のためのハイブリッド型水災害リスク評価の活用 貢献する主なSDGs 13.気候変動に具体的な対策を6.安全な水とトイレを世界中に11.住み続けられるまちづくりを
研究代表者
(所属機関・役職)
大原 美保
(土木研究所 水災害・リスクマネジメント国際センター 主任研究員)
研究期間 5年間
相手国 フィリピン共和国 主要相手国研究機関 フィリピン大学ロスバニョス校
研究課題の概要
本研究は、従来の気候変動・水理水文・農業(作物成長)・社会経済モデルを結合させ、分野横断による新たなハイブリッド型洪水・渇水リスク評価モデルを創出し、データ統合・解析システム(DIAS)を基盤としたビッグデータも併せて活用することにより、水災害リスクを高精度に評価をする。フィリピンでは、気候変動による水災害の頻発により地方都市の持続的な発展が阻害され、将来的にマニラ首都圏への一極集中が加速することが懸念される。水災害が頻発する地方都市に評価モデルを適用し、事前の防災対策投資効果の客観的な評価と地方都市の健全な発展に向けた政策提言を行うことにより、国・地方都市での減災効果の高い気候変動行動計画の立案・実践を推進する。さらに、技術者・研究者への研修などを通して水災害リスク評価技術の定着を図り、最終的にはマニラ首都圏のさらなる一極集中の是正と国土の均衡ある発展への貢献を目指す。
研究課題名 スリランカにおける降雨による高速長距離土砂流動災害の早期警戒技術の開発 貢献する主なSDGs 11.住み続けられるまちづくりを13.気候変動に具体的な対策を17.パートナーシップで目標を達成しよう
研究代表者
(所属機関・役職)
小長井 一男
(国際斜面災害研究機構 研究部 学術代表)
研究期間 5年間
相手国 スリランカ民主社会主義共和国 主要相手国研究機関 スリランカ行政・災害管理省国家建築研究所
研究課題の概要
本研究は、豪雨の頻発と山岳地域への居住圏の拡大により、高速長距離土砂流動災害が急増しているスリランカにおいて、新たな早期警戒技術を開発することを目的とする。具体的には、①山地斜面での地形性乱流と風速の影響を反映した500m四方最大累積雨量の24時間前予測技術の開発、➁熱帯強風化土森林斜面における不飽和浸透による地すべり発生・拡大・流動範囲予測、③地すべり前兆現象の抽出の研究と広域地すべり危険度評価技術の開発、④災害情報伝達・リスク判断支援システムの開発を効果的に組み合わせることで目的を実現する。また、高速長距離土砂流動災害早期警戒技術の適用と普及、改良に関わる人材育成・能力開発を実施する。本研究で開発した諸技術の普及が進むことで、同種の災害が著しいモンスーン地帯の東南アジア諸国において高速長距離土砂災害が軽減することが期待される。

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