JSTトッププレス一覧 > 科学技術振興機構報 第1344号
別紙1-2

戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)
課題「脱炭素社会実現のためのエネルギーシステム」新規採択研究開発課題および研究責任者

(B)ワイヤレス電力伝送(WPT)システム

研究開発項目名 研究開発課題名 概要 研究責任者
B-①
WPTシステム基盤技術開発
持続可能スマート社会実現のためのWPTシステム基盤技術 新しい電力供給形態として期待されるワイヤレス電力伝送(WPT)システムとして、MHz帯を用いた非放射型電力伝送システムおよびマイクロ波帯を用いた放射型電力伝送システムの基盤技術開発を行う。それぞれのワイヤレス電力伝送システムにおいて小型化、高効率化、大電力化に適したデバイスおよび回路の研究開発を実施し、13.56MHz帯と5.8GHz帯において電力伝送システムとして機能の実証(POC)を行う。この研究開発成果により、IoT社会で多様化する電力消費要求に応えるとともに、社会全体のエネルギーマネージメント効率化、脱炭素化に寄与する。 天野 浩
(国立大学法人 名古屋大学 未来材料・システム研究所 教授)
B-②
電気自動車への給電
互換性・安全性を考慮した電気自動車への走行中ワイヤレス給電 脱炭素社会の実現に向けて自動車のCO排出量削減は急務であり、電気自動車は有力な解決手段である。しかし、航続距離や充電待ち時間といった利便性の課題がある。そこで走行中にワイヤレスでエネルギーを供給する走行中給電の実現が期待されている。本研究では①機器互換性と金属異物検出手法の確立、②高速走行に対応した高効率走行中給電技術の確立、③経済成立性の検討、の3つの課題に取り組む。①では異なるメーカーの機器間での互換性確保のため必要な設計制約条件を提示し、その評価施設を構築して実験検証を行なう。また、安全面の課題である金属異物検出手法の提案と実験検証を行なう。 岩野 浩
(一般財団法人 日本自動車研究所 業務執行理事)
B-③
屋外での給電
屋外無線給電技術の研究開発・実証 日本では人口減少が進む中、社会インフラ維持管理に従事する人員確保は困難となり、代替え手段としてドローンやロボットなどへの期待が高まっている。ドローンなどを実適用するには、長時間安定して稼働することが必須であり、ワイヤレス電力伝送(WPT)システムはこれを支える重要な技術となる。本提案は、ドローンを対象に、駐機時近距離での大電力WPTシステムおよび飛行時遠距離での追尾送電制御WPTシステムの開発を目的とする。WPTシステムの課題である送電側・受電側の高効率化、伝送技術の高度化や機器干渉回避技術などの開発とともに、ドローン搭載に不可欠な受電部の小型・軽量化および高耐電力化を図る。 濱田 浩
(東京電力ホールディングス株式会社 経営技術戦略研究所 技術開発部 次世代電力インフラエリア エリアリーダー・部長)
B-④
屋内での給電
センサーネットワークおよびモバイル機器へのWPTシステムの開発 WPTシステムとして、2つの給電方式と双方の方式に共通する課題の研究開発を提案する。これらを実現するにあたり、時間・空間・周波数の3次元分割により、人体や他システムへの影響を低減するiTAF-WPTという新しいコンセプトを提案し、この実現により高い給電効率を実現する。目標としては、以下の2点である。(1)分散アンテナによる協調ビーム制御方式:本方式は家庭や工場および介護施設などの屋内空間に多数配置された環境センサーや物流センサーおよび生体センサーの電池レス、配線レスを実現するためにμW~mW級広域な給電を目指す。(2)高度ビームフォーミング方式:本方式において、モバイル機器、IoTセンサー、情報端末への充電、工場などで移動するセンサーの給電を実現するために、数mW級から数W級の給電を目指す。 梶原 正一
(パナソニック株式会社 マニュファクチュアリングイノベーション本部 マニュファクチュアリングイノベーションセンター 主任技師)

(C)革新的炭素資源高度利用技術

研究開発項目名 研究開発課題名 概要 研究責任者
C-①
メタン酸化的低温改質プロセス技術の開発
平衡制約脱却を目指した低温部分酸化型CH4改質プロセスの開発 本研究開発では、千代田化工建設で開発された高生産性(超高線速=106hr-1)と高安定性(850℃、1MPa、1000時間でCH4転化率~80%、合成ガス選択率>90%を維持)とが確認されている酸化的改質触媒、三菱ケミカルで開発されたCO共存下で750℃という比較的低温で作動する酸素吸蔵能を有する複合酸化物担体を用いた金属担持改質触媒、北海道大学で開発された金属担持強酸性ゼオライト触媒並びに東京工業大学で開発されたメタンからのメタノール合成用ゼオライト触媒の知見をベースに低温活性な酸化的メタン改質触媒プロセスを開発する。 横井 俊之
(国立大学法人 東京工業大学 科学技術創成研究院 准教授・ナノ空間触媒研究 ユニットリーダー)
C-②
安価な酸素製造技術の開発
高速酸素吸脱着材料による革新的排熱利用酸素製造装置の開発 各種産業セクターにおける多量の酸素ガスのニーズに対し、酸素吸脱着材料を用いた酸素製造技術が注目されている。本研究では、低コストと性能を両立した新規材料、対象材料のスケールアップ製造法、最適なPSAプロセス、熱源としての排熱回収技術を開発する。これらの新規技術に基づき、テストモジュール設計・製造、パイロット運転を行い、現行法比で大幅なエネルギー消費量低減を見込める排熱利用酸素製造装置を開発する。 本橋 輝樹
(神奈川大学 工学部 教授)
C-③
膜分離・精製技術の開発
オレフィン分離精製用ゼオライト膜の性能実証と分離プロセスの構築 ゼオライト分離膜を利用した革新的省エネルギー型C2-C4オレフィン精製プロセスの確立を目指し、ラボスケール膜、および工業スケール膜のプロピレン精製性能を実証する。C2、C3、C4オレフィンの精製技術に対して、実プロセス中不純物の処理を含めた精製プロセス基本設計を行い、その省エネ性を明らかにし、パイロットスケール実証への道を拓く。 松方 正彦
(早稲田大学 理工学術院 教授)
C-④
ライフサイクルアセスメント(LCA)を考慮したCO排出量を最小化する評価手法の開発
プロセスシステム設計とLCAの統合によるCO排出量の評価 CO排出量削減を目的とした化学品製造プロセス技術が数多く提案されているが、真のCO削減につなげるためには、CO排出量を正しく評価する必要がある。本研究では、化学プロセスの設計段階からライフサイクルアセスメント(以下、LCA)の概念を取り入れることで、プロセスシステム設計とLCAを統合したCO排出量の新規評価手法を開発する。LCAは、原料調達―運搬―生産―流通―使用・廃棄までの間に製品が環境に与える影響を定量的に評価する手法である。本研究では、化学品製造コストや消費エネルギーなどの制約のある中で、CO排出量を最小化する化学プロセスを設計・提案し、工場や地域レベルでのCO排出量を総合的に評価し、化学品製造における最適な炭素資源高度利用につなげることを目指す。 遠藤 明
(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 材料・化学領域戦略部 研究企画室 室長)

(D)ユニバーサルスマートパワーモジュール(USPM)

研究開発項目名 研究開発課題名 概要 研究責任者
D-①
WBG系半導体向け高速デジタルコントローラーの開発
超高速デジタル制御を有するノイズフリーUSPMとその応用技術の開発 パワーエレクトロニクス機器の設計技術のノウハウを持たないメーカーでも容易に市場に参入でき、省エネルギー化、再生可能エネルギー利用導入を急速に拡大することを目的とし、誰もが使いやすい「ユニバーサルスマートパワーモジュール(USPM)」による新しい電力変換器のシステム構成を提案し、新しい価値を創造する。パワーエレクトロニクス分野における集積(IC)化による変革を目指し、1)ノイズフリーEMCフィルター、2)デジタルアクティブゲートドライバー、3)瞬時デジタル駆動制御用コントローラー、4)マスターコントローラーによる各USPMの制御技術とその応用、の4つの技術開発を行う。 伊東 淳一
(長岡技術科学大学 大学院工学研究科 教授)
D-②
高パワー密度、高温動作可能で①のデジタルコントローラーに対応可能なパワーモジュールの開発
高パワー密度、高温動作可能なWBGチップ搭載パワーモジュール 再生可能エネルギーなどの不規則な変動電源にも常に高効率の対応が可能で、新WBGチップの優れた特性を極限まで発揮でき、低コストで高い機能性、汎用性に富むUSPM開発が必要となる。このため以下の4項目を開発する。
1)微細配線・立体配線実装技術の開発
2)熱抵抗低減および高放熱冷却技術の開発
3)ゲートドライブユニット、デジタルコントローラーとの親和性技術の開発
4)ユニバーサル性を確保したアプリケーション側との最適配線技術開発
池田 良成
(富士電機株式会社 電子デバイス事業本部 開発統括部パッケージ開発部 課長)
D-③
WBG系半導体スイッチング素子として、SiC並みの低損失をSi程度のコストで実現するMOSFETの開発
コランダム構造酸化ガリウムを用いたパワーMOSFETの開発 コランダム構造酸化ガリウムα-Gaを用いて耐圧600V以上のパワーMOSFETを開発する。中間目標(3年目)では、耐圧600V以上、電流容量10A、特性オン抵抗8mΩcmのプレーナゲート構造縦型パワーMOSFETを開発し、最終目標(5年目)では耐圧600V以上、電流容量10A、特性オン抵抗4mΩcmのトレンチゲート構造縦型パワーMOSFETを開発する。 四戸 孝
(株式会社FLOSFIA 取締役CTO)

研究開発課題名および概要は調整中であり、変更される場合があります。