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別紙1

平成30年度 新規採択プロジェクトの概要一覧

「人と情報のエコシステム」研究開発領域

【研究開発プロジェクト】 実施期間:原則3.5年、研究開発費:数百万円~1千万円程度(上限目安2千万円)/年

プロジェクト名 研究代表者
所属・役職
概要 研究開発に参画する実施者、
協力する関与者の所属機関
データポータビリティ時代におけるパーソナル情報のワイズ・ユース実現支援プラットフォームに関する研究 柴崎 亮介
東京大学 空間情報科学研究センター 教授

データポータビリティ(Data Portability/DP)の導入により「統合的なパーソナル情報(Comprehensive Personal Information/CI-PI)」が生成される。これはサービス提供の過程で生成されるパーソナル情報を、個人がDP権を行使して集約することで生まれる新しい情報資産である。

本提案では、CI-PIの生成・流通・利用に関して、個人(消費者)、企業・産業、社会・公共の3つの視点からシナリオ分析と影響分析を実施し、その分析に基づき、社会システムとしてのCI-PI流通・利用メカニズムをデザインし、個人(消費者)、企業、社会・公共の三者の対話を支援するソフトウェアと専門家のコミュニティからなるプラットフォームを構築することで、ワイズ・ユースの実現を支援する。

  • 東京大学 空間情報科学研究センター
  • 慶應義塾大学 サイバーセキュリティ研究センター
  • 東洋大学 経済学部 総合政策学科
  • 慶應義塾大学 大学院メディアデザイン研究科 付属メディアデザイン研究所
  • ひかり総合法律事務所
  • 株式会社インテージ
  • 慶應義塾大学 大学院政策メディア研究科
  • 慶應義塾大学 大学院システムデザインマネジメント研究科
  • 日本情報経済社会推進協会
  • 国際大学 グローバル・コミュニケーション・センター
  • ナレッジキャピタル
  • 東京大学 地球観測データ統融合連携研究機構
  • 慶應義塾大学 大学院メディアデザイン研究科
パーソナルデータエコシステムの社会受容性に関する研究 橋田 浩一
東京大学 大学院情報理工学系研究科 教授

価値の大半は個人向けサービスに由来し、その価値を高めるにはサービス受容者である個人に関するリッチなデータを活用する必要がある。パーソナルデータの管理を本人に集約し、個人のリテラシーやスキルに応じて本人主導でそのデータを活用することにより、社会全体の価値が高まるようなパーソナルデータエコシステムを構築することが望ましい。

本研究では、社会受容性が高いパーソナルデータエコシステムを実現するため、個人や企業を含むあらゆる参加者が適正な価値(経済的価値に限らない)を享受し過度の負担や不安を免れるようなサービスやデータ共有・活用の方法を設計し、実証フィールドの調査等によって評価・検証する。これにより、パーソナルデータ活用による価値創造を持続的に発展させる仕組みを提言する。

  • 東京大学 大学院情報理工学系研究科 ソーシャルICT研究センター
  • 明治大学 大学院グローバルビジネス研究科
  • 文教大学 情報学部
  • 日本健康開発財団
  • 株式会社iTiDコンサルティング
  • 理化学研究所 革新知能統合研究センター
人と新しい技術の協働タスクモデル:労働市場へのインパクト評価 山本 勲
慶應義塾大学 商学部 教授

AIやロボティクスなどの新技術の普及は、労働者の雇用を奪うだけでなく、雇用の創出や働き方の変容など、労働市場に多面的な影響を与え得る。本プロジェクトでは、そうした多面的な影響を把握するとともに、新しい技術と人の協働を円滑に行える制度設計や人材マネジメントを政策立案者・ビジネスモデル設計者・労働者に提案する。具体的には、労働経済学を中心とした幅広い分野の知見を用いて、労働者の従事するタスクに注目しながら、①全国の労働者へのパネル調査・分析、②産業・地域レベルの分析、③新たな技術の先行導入・実験事例をフィールドとした調査・分析の3つを軸として研究を進める。さらに、ミクロ・マクロ両面の含意を踏まえ、教育・労働市場制度・再分配政策への提言や、次期科学技術基本計画に資する基礎資料の提供を目指す。

  • 慶應義塾大学 商学部
  • 東京大学 大学院経済学研究科
  • 早稲田大学 政治経済学術院
  • 早稲田大学 教育・総合科学学術院
  • 高崎経済大学 経済学部
  • 慶應義塾大学 グローバルリサーチインスティチュート
  • 慶應義塾大学 理工学部
  • 慶應義塾大学 パネルデータ設計・解析センター
人と情報テクノロジーの共生のための人工知能の哲学2.0の構築 鈴木 貴之
東京大学 大学院総合文化研究科 准教授

過去10年ほどの間に人工知能研究は大きな発展を遂げたが、真の汎用人工知能はいまだ実現していない。このような現状においては、汎用人工知能の実現における原理的な困難を明らかにすることや、近い将来実現可能な人工知能が持つ可能性を明らかにすることが、社会にとって重要な課題となる。

本プロジェクトでは、人工知能をめぐる過去半世紀ほどの哲学的考察の成果を、研究の現状を踏まえてアップデートし、人工知能を中心とした情報テクノロジーの研究開発および社会実装を論じる際の共通基盤となる概念枠組を構築することを目指す。具体的には、人工知能による広義の徳の実現可能性の考察を手がかりとして、人工知能が有用な道具として人間の能力を拡張する可能性や、人間とは異なる種類の知性として人間と協働する可能性を探る。

  • 東京大学 大学院総合文化研究科
  • 熊本大学 大学院人文社会科学研究部
  • 関西大学 総合情報学部
  • 高千穂大学 人間科学部
  • 北海学園大学 人文学部
  • 早稲田大学 創造理工学部
  • 東京大学 大学院医学研究科
想像力のアップデート:人工知能のデザインフィクション 大澤 博隆
筑波大学 システム情報系 助教

本プロジェクトでは、科学技術とその社会への受容過程を物語の形で描いてきたサイエンスフィクション(SF)が、人工知能技術の発展にもたらした影響を調査する。我々はまず人工知能技術に対する期待と不安を含む人々の想像力の歴史について、過去の文献をサーベイし、作家・クリエイター・編集者や、理学・工学・人文学研究者等の関係者を交え、AIとSFと社会の関係を整理・可視化する。そして、それらの関係者の力を合わせ、今後、人工知能・自律的知能技術が社会実装される過程の未来の在り方を、新たなデザインフィクションとして例示する。調査と創作の双方を通して、現在だからこそ起こり得る可能性・問題点を踏まえた未来社会の設計論を提示し、人類の新しい技術と社会の開拓に貢献したい。

  • 筑波大学 システム情報系
  • 日本SF作家クラブ
  • 東京大学 大学院理学系研究科
  • 京都大学 大学院文学研究科
  • 明治大学 総合数理学部
  • 日本デジタルゲーム学会
人文社会科学の知を活用した、技術と社会の対話プラットフォームとメディアの構築 庄司 昌彦
国際大学 グローバル・コミュニケーション・センター 准教授

人文科学、社会科学などの知識を活用し、技術と社会の対話プラットフォームを構築する。プラットフォームは、情報技術が社会にもたらすリスクなどを把握検討し技術開発・社会実装・普及をなめらかに推進していくためのメディアで構成される。

一般におけるAIや情報技術への印象や議論は、専門家の冷静な議論と乖離することが少なくない。また同様の分断は学術分野間でも見受けられる。本プロジェクトは、背景が異なる研究者、技術開発者、メディア製作者らが活発な議論を創発する「対話の場」を構築する。そして、その議論内容をアイデア源としたウェブサイト、マンガ・アニメなどの多種多様なメディアを製作し、それらを社会に届け、フィードバックを得ながら改善を図る。さらに、読者の間でさらなる議論やコンテンツが生まれるための方法論を広く提供する。

  • 国際大学 グローバル・コミュニケーション・センター
  • Whole Universe
  • 早稲田大学 文化構想学部
  • 武蔵野大学 データサイエンス学部
  • 自治医科大学 医学部
  • 株式会社&Co.
  • Tokyo Graphic Recorder
  • レインボーバード合同会社
過信と不信のプロセス分析に基づく見守りAIと介護現場との共進化支援 北村 光司
産業技術総合研究所 人工知能研究センター 主任研究員

多くの人手に頼った現場では、センサーやAI技術を活用した新たなやり方が求められているが、AI技術に対する不信と過信があり、すぐに導入することは難しい。また、AI技術の導入により、プライバシー侵害の問題や自律的な判断によるリスクの高まりや負荷の増加といった不具合が生じ得る。この問題を乗り越えるためには、人とAI技術が互いに得意・不得意なことを理解し合い、互いに高め合うような適切な関係性を構築する必要がある。本プロジェクトでは、介護現場を対象に、AI技術を活用しながら、介護の仕方を変えたり、AI技術の活用方法を変えたり、といったプロセスを繰り返しながら、互いを理解し合い、適切な関係性の構築を目指す。その変容の過程を俯瞰することで、適切な関係構築のデザインを可能にする支援の仕組み作りを行う。

  • 産業技術総合研究所 人工知能研究センター
  • 特別養護老人ホーム 愛全園
  • 虎ノ門協同法律事務所

<領域総括総評>國領 二郎(慶應義塾大学 総合政策学部 教授)

領域が2016年にスタートして3年の間に、AIを始めとする情報技術はますます進化し、産業界も本腰を入れて取り組みを開始するようになっています。世界的な気運の高まりに加えて、日本では高齢化やそれに伴う労働力不足を突破する切り札としての期待が寄せられています。

一方で、技術を活用する上での社会的な課題への対応の重要性にも理解が深まってきました。機械の下した判断に対する責任問題や、AIによる人々の行動監視の是非などについて、一貫した考え方を持った制度設計ができなければ、技術の活用を進める上でのボトルネックになってしまいます。すでに、データの活用が制限されていることで、AIの進化が妨げられているという印象を持っている技術者の方も多いのではないでしょうか。一方で、技術開発が社会的な懸念を無視して突き進むことが、技術への根拠のない反感や、それに基づく過剰な規制などを生み出すことも過去の経験から分かっています。社会に対して技術の意味を伝えていく努力と、社会から寄せられる懸念を体系的に理解し、技術や政策の設計に的確に意味のある形でフィードバックしていく継続的な仕組みが必要です。また、文化や社会体制の違いによる考え方の違いが鮮明になってきており、国際的な対話も欠かせないように思います。

高まる関心を背景に、今年のプロジェクト募集には50件もの提案をいただきました。いずれのプロジェクトも志高く、真剣に実行計画を練ってくださったもので、審査も非常に悩ましいものとなりました。ご提案いただいた全ての皆様に心からお礼を申し上げます。

採択に当たっては、これまでの領域で足りなかった、社会一般の方々とのコミュニケーションや、AIによるプロファイリングなどで従来とは異なる様相を見せ始めている、プライバシーに配慮した情報活用の取り組みを重視しました。予算の制約もあって、大変に優れたご提案をいただきながら採択できなかったものがあり、おわび申し上げます。

社会との親和性の高い技術が開発されることで、普及が進み、技術レベルがさらに高まる好循環を生み出すべく、領域として努力を続けてまいる所存です。ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

「科学技術イノベーション政策のための科学 研究開発プログラム」

【研究開発プロジェクト】 実施期間:原則3.5年、研究開発費:500万円程度/年

プロジェクト名 研究代表者
所属・役職
概要 研究開発に参画する実施者、
協力する関与者の所属機関
子どもの貧困対策のための自治体調査オープンデータ化手法の研究 阿部 彩
首都大学東京 人文社会学部 教授

地方自治体は膨大な社会調査データを保有しているものの、それらを必ずしも十分に政策形成に活用できていない現状にある。データが外部に公開されていないために自治体関係者以外が利用できないほか、他の自治体と連結が可能な形でデータを作成、保有していないことから、他の自治体との比較や個別自治体を越えた大規模な分析を行うことも困難となっている。

本プロジェクトは、子どもの貧困対策を題材としながら、自治体における調査データのオープンデータ化の手法の開発およびその普及を行う。そのために、近年多くの自治体が実施している子どもの貧困実態調査のデータを収集・統合し、分析を行う。その上で、子どもの貧困対策に関する政策提言を取りまとめることにより、協力自治体に成果を還元するとともに、埋もれているデータの活用の有効性を示す。

さらに、これら活用事例を積極的に発信することにより、子どもの貧困分野に限らず、さまざまな分野の調査データのオープンデータ化を促進し、政策科学の発展を促す。

  • 首都大学東京 人文社会学部
  • 首都大学東京 子ども ・若者貧困研究センター
  • 千葉大学 大学院社会科学研究院
  • 日本大学 文理学部
  • 東京医科歯科大学 医学科
  • 北海道大学 教育学部
病床の減床と都市空間の再編による健康イノベーション 伊藤 由希子
津田塾大学 総合政策学部 教授

日本は諸外国と比べて病床数が多い一方で、病床あたりの医師数が少なく、入院が長期化することが大きな課題となっている。特に、中規模都市では、人口・疾病の動態を踏まえた、病床機能のダウンサイジング・マネジメントが欠かせない。

しかしながら、制度的に病床の減床を誘導することについては、地域産業への影響や病院の経営環境の悪化に対する懸念など、地方自治体や地域の病院からの反発を伴うものである。

そこで、本プロジェクトでは、病床の減床こそが地方創生や病院の経営改善に必要な選択肢となるよう、方法論としての「減床政策モデル・ビジネスモデル」を提案する。さらに、地域の医療サービスに関する情報が、都市空間の再編と健康増進のマーケティングに役立てられるよう、関連する産業との情報共有を通じた「健康イノベーション」の事例を地方自治体と協力して展開する。

  • 津田塾大学 総合政策学部
  • 奈良県立医科大学 MBT研究所
  • 三重大学 医学系研究科
  • 山形大学 医学系研究科
  • 関東学院大学 経済学部
医学・医療のためのICTを用いたエビデンス創出コモンズの形成と政策への応用 加藤 和人
大阪大学 大学院医学系研究科 教授

医療・医学研究政策において、患者の視点を取り込んだ新しい政策形成手法の必要性が世界的に認識され始めている。しかしながら、わが国ではこれらの政策分野における患者参画は必ずしも十分とは言えない状況にある。

本プロジェクトでは、ICTを介し、患者・医学研究者・政策担当者などのステークホルダーが政策形成に有用な指摘や提案を継続的に議論・検討する場、すなわち「エビデンス創出コモンズ」を構築する。

そこで得られた課題や提案に対して、多様な視点から評価を行うことで、政策形成過程に反映される可能性が高められたエビデンスを創出すること、およびそのための効果的な手法を開発することを目指す。

これらの研究成果は、まず、難病・希少疾患の研究政策を提案するために開発した上で、他の疾患領域にも応用可能な手法の基盤となることを目指す。

  • 大阪大学 大学院医学系研究科
  • 大阪大学 大学院人間科学研究科
  • 広島大学 大学院医歯薬保健学研究科
  • 広島大学病院
家族を支援し少子化に対応する社会システム構築のための行動科学的根拠に基づく政策提言 黒田 公美
理化学研究所 脳神経科学研究センター 親和性社会行動研究チーム チームリーダー

日本では、これまでにさまざまな少子化対策が施策として試みられてきたにもかかわらず、少子化を抑止できていない。

その原因としては、政策形成プロセスにおいて子育てと子どもの発達に関する生物科学的知見が必ずしも十分に参照されておらず、実際の政策が行動科学的な根拠を欠いたまま実施されているという現状がある。また、少子化対策と労働・介護など家族に関係するさまざまな政策の間には「政策コンフリクト」が生じており、それが結果的に家族に過剰な負担をもたらしているという構図もある。

本プロジェクトでは、子育て困難事例の実態調査と、公私連携による各種子育て支援の試験的実装により、現代日本における子育て困難の要因と適切な支援の在り方を具体的に探究する。子育て・子どもの発達に関する行動神経科学的知見を総合することにより、根拠に基づいた政策としての子育て支援の在り方を提示するとともに、日本の家族にかかわる政策間コンフリクト解消を試みることで、最終的に産み育てやすく、子どもが健やかに育まれる社会の実現を目指す。

  • 理化学研究所 脳神経科学研究センター
  • PCIT—Japan
  • CARE—Japan
  • 大阪歯科大学 保健医療学部
  • 十文字学園女子大学 幼児教育学科
  • 中央大学 経済学部
  • 筑波大学 医学医療系
  • 東海大学 法学部
  • 東北大学 法学部

<プログラム総括総評>山縣 然太朗(山梨大学 大学院総合研究部 医学域社会医学講座 教授)

「科学技術イノベーション政策のための科学 研究開発プログラム」は、現代社会が直面するさまざまな問題を解決するべく、「客観的根拠(エビデンス)」に基づいて、より科学的に政策を策定するための体系的知見を創出することを目的としています。

本プログラムでは、「科学技術イノベーション政策における『政策のための科学』推進事業」(以下、SciREX事業)全体に共通する「重点課題」に基づき、政策形成の実践に将来的につながり得る、新たな発想に基づく指標や手法の開発に向けた研究開発を公募により推進しています。本年度の公募は、平成23年度にプログラムが開始して以降、通算して7回目の公募となりましたが、その間、政府レベルでも「証拠に基づく政策立案」(Evidence-based Policymaking、EBPM)に向けた取り組みが進められ始めるなど、「政策のための科学」に対する社会的な期待はますます大きくなりつつあります。

そうしたなか、本プログラムにおける本年度の公募では、SciREX事業が取り組む「重点課題」をさらに具体化する形で、(1)戦略的なダウンサイジングに向けた課題の抽出と対応策の提案、(2)研究開発と政策形成の架橋に関する研究、(3)政策形成に向けたオープンデータの利活用などに関する提案、(4)研究開発プログラムの設計における参加の在り方に関する提案、(5)科学技術イノベーション政策の社会的インパクト評価に関する提案、という5つのテーマを設定して提案を募りました。特に、本年度は、長期人口減少と高齢化という未曽有の社会的変化を捉え、今後顕在化することが予想される諸課題をどのようにして予想し、またそれらの課題をいかにして制御、調節していくのかという問題意識の下、新たなテーマとして社会の「戦略的なダウンサイジング」を追加した点に特徴があります。

募集の結果、大学を始めとする研究機関、国立研究開発法人、独立行政法人などから計41件の応募が寄せられ、書類選考(一次、二次)、面接選考を経て、最終的には4件の研究開発プロジェクトを採択しました。本年度は、昨年度に続き、重点課題に基づいた独自のテーマを設定したこともあり、現実の政策動向や研究動向を見据えながら、本プログラムが一貫して課題としている科学的な知見を実際の政策に結び付けるための方策を探求しようとする提案が多数見られました。なかでも、高齢化と少子化、人口減少という大きな社会的変化に対して、優れた発想と多彩なアプローチから既存の社会制度や組織の在り方を調節しようと試みる意欲的な提案が多く見られました。いずれも課題としての社会的重要性は高いものばかりでしたが、選考においては「科学技術イノベーション政策のための科学の深化」および「エビデンスに基づく政策形成プロセスの進化」を志向し、特に本プログラムの目的と合致するかについて重視しました。

このたび採択した4件は、対象とする政策の現状や課題に対する基本的なリサーチがなされていたほか、本プログラムではこれまでに見られなかった問題設定やアプローチを採っているもの、さらにこれまでの研究開発の実績をさらに具体的に展開させることで、実際の政策形成プロセスの改善に向けた具体的な構想が示された提案です。

本プログラムでは、引き続き、エビデンスに基づく政策形成に資する知見の創出に向けて、より効果的にプログラムを運営していけるようさまざまな工夫を凝らしてまいります。また、SciREX事業の各プログラムとも連携を図りながら、各プロジェクトによる研究開発との連携や交流を加速させるとともに、これまでに創出された、あるいは創出されつつある研究開発成果の社会的発信にも一層努めてまいりますので、引き続き皆様のご支援をよろしくお願い申し上げます。