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科学技術振興機構報 第1305号

平成30年2月23日

東京都千代田区四番町5番地3
科学技術振興機構(JST)

科学に基づく政策へ、情報発信開始

~あの日から7年。「想定外」を回避する復旧シミュレーション~

ポイント

JST(理事長 濵口 道成)社会技術研究開発センター(RISTEX)は、戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)「科学技術イノベーション政策のための科学 研究開発プログラム」において、成果を発信するウェブサイト「Policy Door~研究と政策と社会をつなぐメディア」を平成30年2月23日より開設します。

各プロジェクトでは、現実の政策形成に活用しうる新たな分析手法やモデル分析、データ体系化ツール、指標など、さまざまな形で成果が生まれています。これらの成果を、社会実装の担い手となる行政機関、企業、一般市民などのステークホルダーを含めた社会に対して発信していきます。

また、ウェブ上の情報発信とリアルな対話の場を連動させ、成果の活用を促進します。

科学の成果に意義や価値を見いだし、社会に実装するための「メディア」として、今後の活用が期待されます。

URL: https://www.jst.go.jp/ristex/stipolicy/policy-door/

ウェブサイト開設の第1弾として、災害復旧シミュレーションを取り上げます。「市民生活・社会活動の安全確保政策のためのレジリエンス分析」(研究代表者:古田 一雄 東京大学 大学院工学系研究科 レジリエンス工学研究センター 教授)プロジェクトの成果を紹介し、連動してセミナーを開催します。

<背景>

少子高齢化と人口減少が進む一方で、厳しい財政状況に直面している日本では、人口問題はもちろん、エネルギーと環境問題、災害や公衆衛生、さらに安全保障といった、複雑かつ多様な社会的課題が存在します。そうした課題の解決にあたっては、科学的知見と技術をこれまで以上に積極的に活用することが必要になっています。「政策のための科学」は、「経験と勘」に頼った政策形成ではなく、現状と課題を的確に把握・分析し、客観的根拠(エビデンス)に基づいた政策形成の実現を目指すものです。

RISTEX「科学技術イノベーション政策のための科学・研究開発プログラム」は、平成23年度に文部科学省「科学技術イノベーション政策における『政策のための科学』推進事業」(以下、「SciREX事業注1)」)の一環として開始されました。科学的方法と客観的根拠(エビデンス)に基づき、経済・社会・公共的価値を創造し、社会のシステムの変化を促す合理的な政策形成プロセスを構築するための研究開発に取り組んでいます。

<ウェブサイトの内容>

JSTは同プログラムにおいて、平成30年2月23日よりウェブサイト「Policy Door~研究と政策と社会をつなぐメディア」を公開します。

URL:https://www.jst.go.jp/ristex/stipolicy/policy-door/

「Policy Door」は、これまでに採択してきた研究開発プロジェクトの中から、優れた成果を挙げたプロジェクトを取り上げ、行政機関をはじめ社会のステークホルダーに向けて発信し、実際の政策形成につなげていくことを目指すものです。単に学術的な意義について紹介するのではなく、政策の現場や社会に暮らす一般の市民から見たときに、研究成果によってどのような社会的課題が解決されうるのか、という観点から編集しています。

ウェブサイトの開設にあたり、情報発信の第1弾として防災を取り上げます()。平成23年3月の東日本大震災から7年を迎えることを踏まえ、平成25年度から平成28年度にかけて研究開発を行ってきた「市民生活・社会活動の安全確保政策のためのレジリエンス分析」(研究代表者:古田 一雄 東京大学 大学院工学系研究科 レジリエンス工学研究センター 教授)の成果を紹介します。

本プロジェクトは、重要インフラの多くが複合的に関係し合っているという実態を踏まえ、東京23区を対象にその関係性をモデル化し、将来生じうる大規模災害の発生後の復旧過程を計算しました。インフラが復旧していく過程だけではなく、市民生活の機能がどのように回復していくかについてもシミュレートできるようになったことが大きな特徴となっています。

重要インフラ間の相互依存性の分析については、各インフラがどのような要素によって構成されているかに分解したうえで、各要素と他のインフラとの結び付きを考慮することで、各要素の欠損が他のインフラに与える影響を分析できるようにモデリングされています。また、総合的なレジリエンス度合いを直感的・視覚的に示すことにも取り組み、市民生活、産業、ライフラインの3つのカテゴリーについて、災害発生後の時系列的な変化がわかるように復旧過程をアニメーションで示しています。

本プロジェクトの成果により、都市機能の復旧と市民生活の回復を妨げる条件の特定や、迅速な復旧を促すための改善点の検討をするための基盤の提供が可能となりました。このシミュレーションを活用することにより、政府レベルでの基本計画立案はもちろん、各自治体における具体的な災害対策の検討などにも貢献できると期待されます。

<今後の展開>

本プログラムでは、研究開発プロジェクトの進捗や成果の創出に合わせて、今後もウェブサイトにおけるコンテンツの作成・編集・公開を進めることで、研究成果を政策形成に結びつけていくための活動を展開していきます。コンテンツの第2弾は、「感染症対策における数理モデルを活用した政策形成プロセスの実現」プロジェクト(平成26年10月~平成29年9月、研究代表者:西浦 博 北海道大学 教授)を取り上げる予定です。

JSTは文部科学省「SciREX事業」と緊密に連携し、ウェブサイトの企画と連動するセミナーやフォーラムの開催を計画しています。これにより、成果の社会実装を担う政策担当者や企業、市民が集う具体的なコミュニケーションの場を形成することを目指しています。

第1弾の公開に連動して、平成30年3月12日(月)にセミナーを開催します。古田プロジェクトの成果をもとに、あらためて日本のレジリエンスのあり方を考える場とするべく、幅広い参加を呼びかけています。

第23回 SciREXセミナー

いま、あらためて日本のレジリエンスを考える
~もう想定外とは言わせない~

日時 平成30年3月12日(月)18:30~20:00
(話題提供45分程度、その後ディスカッション)
会場 霞が関ナレッジスクエア エキスパート倶楽部(千代田区霞が関)
主催 政策研究大学院大学 科学技術イノベーション政策研究センター
趣旨 災害時の「想定外」を減らすには、複数の被害シナリオを想定したうえで、どのようなケースにも対応できるような社会の仕組みを構築しておくことが重要です。災害発生時の「想定外」をいかに最小化し、迅速な復旧を実現するかをテーマとして取り上げます。
JST RISTEXのプロジェクトでは、重要インフラ相互の複合的な関係性をモデル化したうえで、インフラと市民生活の復旧過程をシミュレートできるツールを開発しました。
本セミナーでは開発されたモデルとシミュレーションをもとに、今後生じうる大規模災害に備え、国や自治体が具体的にどのような事態を想定し具体的な備えをしていくことが必要なのか、行政やインフラ事業に携わる参加者を交えつつ、目指すべきレジリエントな社会の実現に向けてディスカッションします。
参加費 無料(事前登録制)

参加申し込み、問い合わせ:以下の開催案内をご確認下さい。

開催案内 http://scirex.grips.ac.jp/events/archive/180213_959.html

<参考図>

図 「Policy Door~研究と政策と社会をつなぐメディア

図 「Policy Door~研究と政策と社会をつなぐメディア」

ウェブサイト開設第1弾として、古田PJの研究開発成果を紹介。

<用語解説>

注1)SciREX(サイレックス)事業

「客観的根拠に基づく政策形成」の実現に向け、文部科学省が体制・基盤の整備、研究の推進、人材育成などを一体的に行う事業。平成23年度より実施されている。SciREXは、科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」推進事業(Science for RE-designing Science, Technology and Innovation Policy)の略称。

SciREXポータル<http://scirex.grips.ac.jp/

<お問い合わせ先>

<JST事業に関すること>

廣田 勝巳(ヒロタ カツミ)、黒河 昭雄(クロカワ アキオ)
科学技術振興機構 社会技術研究開発センター(RISTEX)企画運営室
〒102-0076 東京都千代田区四番町5番地3
Tel:03-5214-0132 Fax:03-5214-0140
E-mail:

<報道担当>

科学技術振興機構 広報課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
Tel:03-5214-8404 Fax:03-5214-8432
E-mail: