JSTトッププレス一覧 > 科学技術振興機構報 第1302号
科学技術振興機構報 第1302号

平成30年1月30日

東京都千代田区四番町5番地3
科学技術振興機構(JST)

出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)における
株式会社KORTUCへの出資決定について

JST(理事長 濵口 道成)は、出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)において、株式会社KORTUC(本社:東京都千代田区、代表取締役 松田 和之、以下「KORTUC社」という)からの第三者割当増資注1)の引き受けを実施しました。

KORTUC社は、JSTの「シーズ発掘試験注2)平成18年度「局所進行癌の新しい過酸化水素増感放射線治療における剤形・投与法の確立」および平成19年度「ペルオキシダーゼ標的・増感放射線療法KORTUCの開発とその適応疾患の拡大」(小川 恭弘 高知大学 医学部 名誉教授)における研究開発成果を基に、平成27年8月に設立されたベンチャー企業で、がんの放射線治療効果を高める放射線増感剤KORTUC注3)の医薬品販売を目指しています。

がんは、その腫瘍の直径が大きくなるにつれてリニアック注4)による放射線治療の効果が低下することが知られていましたが、放射線増感剤KORTUCを腫瘍に注入したうえで放射線治療を行うことにより腫瘍が縮小され、がんの放射線治療効果が高まることが期待されます。

当初は高知大学にて主に乳がん患者へ放射線増感剤KORTUCを投与したうえで放射線治療を行い腫瘍の縮小効果の増大を確認し、その後、高知大学に続き、国内の他の病院などで、放射線増感剤KORTUCを併用した放射線治療が開始され、すでに700例以上の治療実績があり、高い有効性が示されております。

今回の増資により、KORTUC社では、放射線増感剤KORTUCの国内外での医薬品承認に向けて、英国ですでに開始している臨床試験をさらに推進するとともに日本国内での臨床試験を開始する計画です。

SUCCESSでは今後も、JSTの研究開発成果を実用化しようとするイノベーティブなベンチャー企業に対して、成長資金の供給や関係機関のネットワークを活用したサポートを提供することにより、実用化を通じた先端技術の社会への還元を進めていきます。(ホームページURL:https://www.jst.go.jp/entre/

平成26年4月より、JSTでは「出資型新事業創出支援プログラム」(略称:SUCCESS SUpport Program of apital ontribution to arly-tage Companie)を開始しました。本事業は、JSTの研究開発成果の実用化を目指すベンチャー企業に対しJSTが出資並びに人的および技術的援助を行うことでその創出および成長を促進し、当該ベンチャー企業が行う事業活動を通じてJSTの研究開発成果の実用化・社会還元を促進することを目的とした事業です。出資を通じてJSTがベンチャー企業の株主になることで、民間の資金を誘引する「呼び水効果」を狙っています。

<企業概要>

企業名株式会社KORTUC
設立日 平成27年8月28日
本社所在地東京都千代田区
代表取締役松田 和之
事業内容医薬品開発、放射線増感剤KORTUCの開発および販売

<事業展開>

進行した腫瘍の大きいがんの放射線治療の効果を高める放射線増感剤KORTUCの特徴を活かし、切除せずに治療したいという患者ニーズの高い乳がん治療への適応を皮切りに、他がん種にも適応を広げグローバルに市場規模の拡大を目指す。

図

<用語解説>

注1)第三者割当増資
特定の第三者に新株引受権(新株の割当を受ける権利)を与えて行う増資のこと。会社の資金調達の方法の1つで、会社の自己資本を充実させ、財務内容を強化することができます。
注2)シーズ発掘試験
大学・公的研究機関などの研究成果を発掘し、研究シーズや企業ニーズの探索やマッチング、研究シーズの育成、研究成果の各種制度や企業への橋渡しを専らの業務とするコーディネータなどが発掘した、知的財産権の取得が期待される、もしくは、知的財産権をすでに取得し、実用化に向けて発展が期待される研究シーズの実用化を促し、コーディネータなどの活動を支援することを目的として実施していた事業です。
注3)KORTUC

Kochi Oxydol Radiation Therapy for Unresectable Carcinomas の略。

高知大学 医学部 小川名誉教授の研究成果に基づいて開発された放射線増感剤。がんの放射線治療の効果の低下が低酸素状態だけでなく、腫瘍に豊富に存在する抗酸化酵素の存在にも原因があると注目し、さらに過酸化水素が放射線治療の重大な障害である抗酸化酵素ペルオキシダーゼを不活性化すると同時に分解されて酸素が発生することを発見しました。過酸化水素の保持に有効な基剤としてのヒアルロン酸を混合することで、過酸化水素の効果を腫瘍内で長時間持続させます。

注4)リニアック
荷電粒子を一直線上で加速させて発生した放射線を当てることで、がんなどの治療をする直線加速器です。

<お問い合わせ先>

<株式会社KORTUCに関すること>

株式会社KORTUC
〒305-0047 東京都千代田区大手町1-6-1大手町ビル1階SPACES内
担当:松田 和之
E-mail:
ホームページURL:https://kortuc.com/

<SUCCESS事業に関すること>

科学技術振興機構 起業支援室
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-6380-9014 Fax:03-5214-0017
E-mail: