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別紙1

戦略的国際共同研究プログラム(SICORP)
「日本-中国共同研究」平成29年度新規課題採択 一覧

課題名 日本側
研究代表者
所属機関・役職 共同研究課題概要
中国側
研究代表者
植物共生菌相互作用の包括的利用による二次代謝産物の網羅的解析 阿部 郁朗 東京大学 大学院薬学系研究科
教授

本研究では、通常の条件では培養が困難な薬用植物の内生微生物の単離・培養を行い、得られた有用微生物群の物質生産能力を安定化・効率化する方法を開発する。

具体的には、中国側は薬用植物内生微生物の単離および単離微生物からの低分子化合物の単離・構造決定を網羅的に行う。日本側は得られた難培養性微生物の培養、単離化合物の代謝経路の生合成的手法による解析とその利用を行う。得られた新規天然物ライブラリーから通常の培養条件では発現しない遺伝子発現促進化合物の取得などを目指す。得られた微生物・天然化合物は有力な医薬品シーズとなる可能性が期待される。

ガオ・ハオ 暨南大学 薬学院中薬・天然薬物化学研究所
教授
根圏微生物を活用したアブラナ科植物の効率的リン酸利用技術の開発 西條 雄介 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科
准教授

本研究は、植物の効率的リン酸利用技術の開発を目指す。菌根共生が起こらないアブラナ科植物のリン酸利用を促進する内生・根圏微生物群の同定とともに、有用微生物の植物成長促進メカニズムの解明を進める。

日本側は真菌に、中国側は細菌に着目し、メタゲノム解析と限界希釈法によってリン欠乏土壌で生息する植物根から有用菌を同定する。日中双方の研究代表者が持つ機能解析の技術を融合させることで、同定された有用菌の植物成長促進メカニズムの解明やその効果的な活用手法の確立を目指す。その結果、アブラナ科野菜のリン酸吸収を安定的に高める微生物資材並びにその応用技術の開発につながることが期待される。

ジャンミン・ズー 中国科学院 遺伝・発育生物学研究所
教授
窒素利用効率の向上と温室効果ガスNOの排出量低減を目指した1,9-デカンジオール等の土壌窒素代謝を制御するイネの根浸出物の放出制御を通じた水田土壌微生物叢の制御 藤原 徹 東京大学 大学院農学生命科学研究科
教授

本研究はイネの根から分泌される脱窒抑制物質1,9-デカンジオールを介した根圏土壌微生物叢におけるメカニズム解明を通じて、窒素肥料の効率的な利用技術の開発を目指す。

具体的には日本側はメタゲノミクス解析と遺伝子機能欠損実験を用いて1,9-デカンジオールの分泌の遺伝制御の解明および水田土壌の微生物叢解析により、脱窒抑制に必要な条件を明らかにする。中国側はイネの根から分泌される脱窒を制御する物質の新規同定と1,9-デカンジオールとの役割の違いを明らかにする。得られた知見を元に、水田農業における土壌中窒素の利用効率を高め、過剰窒素肥料の使用抑制の技術開発を目指す。将来的には、それを通じた資源やエネルギーの効率的利用に貢献することが期待される。

シ・ウェイミン 中国科学院 南京土壌研究所
教授

(平成29年10月13日現在)