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科学技術振興機構報 第1272号

平成29年8月24日

東京都千代田区四番町5番地3
科学技術振興機構(JST)

SiCなどの難加工性基板の研磨性能を飛躍的に高めた研磨パッドを開発
(産学共同実用化開発事業(NexTEP)の成果)

ポイント

JST(理事長 濵口 道成)は、産学共同実用化開発事業(NexTEP)の開発課題「高生産性精密研磨パッド注1)の開発」の開発結果を成功と認定しました。

この開発課題は、立命館大学 理工学部 谷 泰弘 教授らの研究成果をもとに、平成25年10月から平成29年3月にかけて帝人株式会社(代表取締役社長執行役員 鈴木 純、東京本社住所 東京都千代田区霞が関三丁目2番1号、資本金 708億円)に委託して、同社 高機能繊維・複合材料事業グループ(会社吸収分割により現在は帝人フロンティア株式会社)にて企業化開発を進めていたものです。 SiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)などは、省エネルギーに資するパワー半導体注2)の材料として期待を集めていますが、例えばSiCの硬度はSi(ケイ素)の約4倍であるなど、化学的・熱的に安定であることから、基板として利用する際の仕上げ加工が極めて難しく(難加工性半導体材料)、加工プロセスの高速化、低コスト化が課題となっています。今回開発した研磨パッドは、高研磨レート注3)と低表面粗さ・平坦性注4)を両立することによりこの課題を解決、省エネルギーに資する高機能パワー半導体の普及に貢献することが期待されます。

<背景>

半導体・記録媒体産業を牽引してきた我が国の製造業において、製造コストのさらなる低減は欠かせません。 とりわけSiC、GaNなどは、省エネルギー化に効果を発揮するパワー半導体の材料として大いに期待されていますが、例えばSiCの硬度はSiの約4倍と硬く、またこれらの材料は化学的・熱的に安定であるため、基板として利用する際の仕上げ加工が極めて難しく(難加工性半導体材料)、加工プロセスの高速化、低コスト化が課題となっていました。

<開発内容>

以下の2つの技術を組み合わせることで、高研磨レートと表面粗さ・平坦性を高水準で両立する研磨パッドの開発を行いました。

<期待される効果>

本開発により、難加工材の研磨プロセスの高速化、低コスト化が見込まれます。難加工材半導体の生産性が向上することで、省エネルギー効果を有する高機能半導体の普及が加速することが期待されます。

<参考図>

図1 パッド断面(左)、ナノファイバー断面(右)の拡大写真

図1 パッド断面(左)、ナノファイバー断面(右)の拡大写真

※パッド断面(左)に見られる繊維状のものはナノファイバー(右)から構成され、その大きな表面積が高効率な研磨を実現します。

図2 SiC(Si面)研磨評価(実機評価)

図2 SiC(Si面)研磨評価(実機評価)

※既存樹脂(ウレタン)で従来品より早く同等の滑らかさを実現。

図3 SiC(Si面)研磨評価(ラボ機評価)

図3 SiC(Si面)研磨評価(ラボ機評価)

※次世代樹脂では、より早く滑らかに研磨が可能

図4 従来品と開発品により、ほぼ同じ条件でSiC基板を研磨した時の研磨前後の形状の比較

図4 従来品と開発品により、ほぼ同じ条件でSiC基板を研磨した時の研磨前後の形状の比較

開発品の方が、より滑らかになり、同時に平坦性が損なわれ難い(ロールオフが少ない)。

図5 耐久摩耗性評価

図5 耐久摩耗性評価

<用語解説>

注1) 研磨パッド
半導体デバイスなどの製造プロセスにおいて、超精密平面研磨に使用される数ミリ程度の厚みを有する特殊な布状もしくは板状研磨材料の総称。研磨機の定盤に粘着テープで固定し、研磨剤(スラリー)や薬液を流し掛けながら研磨する。シリコン単結晶ウェハ、化合物半導体ウェハ、ガラスディスク、液晶ディスプレーガラスなどの鏡面研磨、半導体デバイスの多層配線化を行うときの化学機械研磨などに使用される。
注2) パワー半導体
直流から交流への変換や周波数変数といった電力の制御や供給に用いられる半導体。現在はシリコン(Si)単結晶を用いたものが主流だが、炭化ケイ素(SiC)単結晶に置き換えると、より薄い厚さで高い耐電圧を得られるため、半導体電力制御装置の電力損失を1/3~1/5にできると考えられている。GaNやGaAs(ヒ化ガリウム)も同様に変換効率に優れたパワー半導体材料である。
注3) 研磨レート
研磨により除去される材料の重量または寸法をさし、単位時間あたりの厚みの減少で表されることが多い。研磨効率ともいう。
注4) 平坦性
ウェハ面が鏡面均一に加工されて、ロールオフ(ロールオフ=縁ダレ)やうねりなどの加工歪のない状態。面全体を干渉顕微鏡で測定する。厚みの差異が小さいことが望ましい。
注5) ナノファイバー
繊維直径が1μm以下の極細繊維の総称。繊維径が細いことにより、表面積や接触点数が増えることで、摩擦係数が高く、また滑り止め性能も高く、熱線(波長2μ)を反射による遮熱性の発現や、フィルター性能など、極細化により繊維と膜の中間的な機能を発現する材料として2000年ごろから研究・商品化が進んだ素材。
注6) 砥粒
精密研磨に用いられるコロイダルシリカ、微粒子アルミナ、酸化セリウム、ダイヤモンドなどの微粒子。それらを分散剤により水に均一分散させたものが研磨スラリーと呼ばれる。
注7) ゼータ電位
水分散系材料の表面電荷を表す。分散状態の維持には表面電荷反発を利用する。ゼータ電位が大きいことは、良好な分散状態を意味する。

<お問い合わせ先>

<開発内容に関すること>

帝人フロンティア株式会社 ノンウーブンソリューション部 機能不織布・製品課
〒530-8605 大阪府大阪市北区中之島三丁目2番4号
篠原 昌宏(シノハラ マサヒロ)
Tel:06-6233-3822
E-mail:

<報道担当>

帝人株式会社 コーポレートコミュニケーション部
〒100-8585 東京都千代田区霞が関3-2-1 霞が関コモンゲート西館30階
Tel:03-3506-4055 Fax:03-3506-4150

<JSTの事業に関すること>

科学技術振興機構 産学共同開発部
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
大竹 利也(オオタケ トシヤ)、関谷 亮英(セキヤ アキヒデ)
Tel:03-5214-8995 Fax:03-5214-0017
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