本新技術の背景、内容、効果は次の通りです。

(背景) 高機能の光学素子をプラスチック射出成形により低コストで量産することが望まれていました。

 光技術の進歩によって、大容量の高速通信、データ記録が可能になりました。2013年には光通信網も完成の予定であります。本格的な普及には、端末系に最適の光学部品の開発と実用化が急務であります。市場では、高生産性で低コスト品、光集積回路、コンパクト化、省電力の部品が要求されています。本開発の高品質のプラスチック光学部品の実現によって、この市場の要請に応えることができます。
 本新技術では、波長と同程度の3次元的な微細パターンを表面に施して、屈折率、光学異方性、光分波等の機能を発揮させるプラスチック製の光学素子を製造します。従来の光学素子では、ガラス系、結晶系や薄膜その組合せで光学機能を持たせていましたが、生産性が低く、今後の光通信の市場の要求に応えられません。プラスチックの射出成形の採用により、生産性を大幅に向上でき、大量、安価に供給が可能となりました。

(内容) 材料とビーム制御の最適化により形状歪みの生じない金型を実現。

 本新技術では、まず基材に光学素子の機能に応じて矩形、円錐形等が特定のピッチで配置されたパターンを電子ビーム加工により描画します。その後、エッチング処理を行い、金型を形成します。この金型を用いて、射出成形によりパターンを転写してプラスチック素子製品を得ます。本開発では、形状歪み発生のない金型材の選択や電子ビーム銃の劣化対策等により高い加工精度を達成しました。量産時に加工精度を長期間にわたり安定に維持する技術を確立することができました。
 また、加工精度の製品性能への影響を算出する光学シミュレーション技術を確立し、これによる品質管理技術を確立しました。これらハードとソフトの技術の確立により高品質素子の生産の見通しを得ることができました。

(効果) オプトエレクトロニクス用部品の分野で、高機能光学素子を大量安価に安定供給することができます。今後は集積回路への利用も期待されます。

 本新技術の確立により、高機能な光学素子が大量安価に安定供給できる様になります。具体的には、光多重通信における波長分離フィルター、DVD/CD等の光学系に用いられる多層コートを用いたフィルターに変わる偏光分離素子、またモバイル機器の液晶に使用する反射防止機能板等の機能性光学素子として、本新技術が適用されます。
 今後の高速通信や大容量メディア、モバイル化の普及の中で、本新技術を光集積回路に適用して、機能を複合化あるいは組立無しの光学回路部品とすることにより、ハードの一層のコンパクト化、省電力化の実現に貢献できると考えられます。

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This page updated on November 11, 2004

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