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科学技術振興機構報 第1269号

平成29年8月1日

東京都千代田区四番町5番地3
科学技術振興機構(JST)

人工知能がコンテンツのハッシュタグを考案
〜SNS上で人気度を向上させるタグ推薦技術を発明〜

ポイント

JST 戦略的創造研究推進事業において、東京大学 大学院情報理工学系研究科 電子情報学専攻の山崎 俊彦 准教授らは、人工知能(AI)を用い、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で投稿した画像や映像の人気度(閲覧数やいいね!の数)を向上させられるハッシュタグを推薦する技術を開発しました。

これまで、画像や動画に何が写っているかを判断し客観的に正しいタグ(例えば、「山」「湖」「森林」など)を推薦する技術は多数研究されてきました。人気度を向上させるタグ(例えば上記の例に対して「湖面映り込み」など)を推薦する技術は世界初の試みです。このタグ推薦システムは、(1)SNS上でそれぞれのハッシュタグが人気度に影響を与える強さを数値化し、(2)ユーザーが付与したハッシュタグを参考にしたうえで人気度を向上させるのに効果的なタグを任意の個数推薦する、というものです。

本研究グループは、約6万枚の画像を用いてシステムに学習させ、約2000枚の画像に対して実際にシステムが推薦したタグを追加してSNSに投稿したところ、10日後には人が付けたタグだけを用いた場合と比較して2倍程度の閲覧数を獲得できることを確認しました。推薦されるタグは元々、人が付与したタグを参考にするため、画像や映像の中身とマッチした正しいタグが推薦されることも約1500名の主観評価によって検証済みです。スコアの計算にかかる時間は通常のサーバーで数秒程度と短いため、毎日タグを推薦し直すことも可能です。

今後は、SNS上で商品やサービスなどを効果的にプロモーションするためのハッシュタグ推薦、ECサイトなどでのクリック率向上、オウンドメディアやニュース配信における印象的なヘッドライン作成支援などが考えられます。

本研究成果は、2017年8月19日から開催される「The 26th International Joint Conference on Artificial Intelligence(IJCAI)」にて発表されます。

本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。

戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)

研究領域 「イノベーション創発に資する人工知能基盤技術の創出と統合化」
(研究総括:栄藤 稔)

文部科学省の人工知能/ビッグデータ/IoT/サイバーセキュリティ統合プロジェクト(AIPプロジェクト)の一環として運営

研究課題 「未知事物検索・認識基盤によるメディア消費者の体験・行動センシング」
研究代表者 佐藤 真一(国立情報学研究所 教授)
研究期間 平成28年12月〜平成31年3月

<研究の背景と経緯>

近年、FlickrやInstagramなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)は私たちの生活に密着したメディアとなりました。ユーザーにとって自身の投稿するコンテンツの閲覧数、お気に入り数といった人気に関わる指標(以後、総称して「人気度」)は重要です。これは個人だけでなくSNSをマーケティングに用いている企業にとっても効果を測るための重要な指標となっています。しかし、コンテンツが氾濫する中、特定のコンテンツを意図して人気にするのは困難なことです。現在は専門家が経験と勘をもとに人気獲得のアドバイスを行うことが主流となっています。

<研究の内容>

多くのSNSでは、コンテンツの分類や検索をしやすくなるために、ユーザーが自由にタグを作成して付けることができます。山崎准教授らはそのタグに注目し、人気度への影響力が強く、かつ元々ついているタグと関連の深いタグを推薦することのできるFolkPopularityRankという新しい計算手法を開発しました。これは、画像や映像についているタグとその人気度を数学的なグラフ・行列として表現し、どのタグ同士が同時に用いられることが多いかを考慮しながら反復的に計算することで各タグの人気度への影響を数値化・ランキングできる手法です(図1)。

従来用いられている情報推薦の仕組みとして、例えばオンラインショッピングでよく用いられる協調フィルタリング(「この商品を買った人はこちらの商品も買っています」という推薦を行う技術)が広く知られています。協調フィルタリングを今回のタグ推薦に適用した場合、同時に用いられることの多いタグを推薦するのみで、人気度への影響は全く考慮できません。FolkPopularityRankはタグの人気度に対する影響度を計算し、タグの推薦を行えるという点で全く新しい手法であるといえます。

約6万枚の画像とそれに付与されたタグを用いて学習し、約2000枚の画像に対して実際にシステムが推薦したタグを追加してSNSに投稿する実験を行ったところ、10日後には人が付けたタグだけを用いた場合と比較して2倍程度の閲覧数を獲得できました(図2)。

推薦されるタグは元々人が付与したタグを参考にするため、画像や映像の中身とマッチした正しいタグが推薦されます。本システムで推薦した、総数25,000のタグについてクラウド上で約1500名による主観評価を行ったところ、人が付けた場合とほぼ同じ正しさであることが確認されました。従来からタグの推薦技術はあるものの、殆どが客観的なタグの内容の正しさを主眼においており、内容の正しさを持ちながらも「人気度」を向上させるために開発された技術は本研究が世界初です。

この手法を実際に用いた場合、例えばある特定のタグが人気度を向上させるのに有効であることが知れ渡ると、多くのコンテンツにそのタグが付与され、その結果そのタグの重要度が低下することが考えられます。しかし、本手法のスコア計算にかかる時間は通常のサーバーで数秒程度と短いため、いつでもその瞬間のタグの影響度を計算してタグを推薦することが可能です。

<今後の展開>

今後の展開としては、SNS上で商品やサービスなどをプロモーションする際のハッシュタグ推薦のほか、ECサイトなどでクリック率を向上させるためのタグや説明文作成支援、オウンドメディアやニュース配信などでクリックを誘発する印象的なヘッドライン作成支援などが考えられます。

<参考図>

図1 ハッシュタグのスコアを計算するグラフの概念図

人気度の高い画像、人気度への寄与度の大きいタグが大きく表示されている。人気度の高い画像に付与されたタグは重要とする一方、人気の低い画像にも付けられていたり他の多くのタグと一緒に付けられていたりすると重要度を下げるという計算を繰り返し行い、各タグの重要度を計算する。


図2

(上)もともとついているタグと各種推薦手法によって付けられたタグの例、(下)SNSに投稿してから10日間の平均閲覧数推移。人が付けたのは一番下の青色で、閲覧数は最も低い。一番上の赤い線のものが今回の提案手法で、最も大きな閲覧数を実現している(人が付けた場合の2倍程度)。

<論文タイトル>

FolkPopularityRank: Tag Recommendation for Enhancing Social Popularity using Text Tags in Content Sharing Services
(FolkPopularityRank: ソーシャル・ネットワーキング・サービスで人気度を向上させるタグ推薦)
doi: 10.24963/ijcai.2017/451

<お問い合わせ先>

<研究に関すること>

山崎 俊彦(ヤマサキ トシヒコ)
東京大学 大学院情報理工学系研究科 電子情報学専攻 准教授
〒113-8656 東京都文京区本郷7−3−1
Tel,Fax:03-5841-6698
E-mail:

<JST事業に関すること>

松尾 浩司(マツオ コウジ)
科学技術振興機構 戦略研究推進部
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-3512-3526 Fax:03-3222-2066
E-mail:

科学技術振興機構 広報課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
Tel:03-5214-8404 Fax:03-5214-8432
E-mail:

(英文)“AI Generates More “Attractive” Hash Tags —Tag Recommendation for Enhancing Social Popularity in Content Sharing Services—