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別紙2

平成29年度 採択研究課題の概要

※研究課題の並びは、研究代表者名の五十音順です。また、研究課題名は採択時のものであり、相手国関係機関との実務協議などの結果、変わることがあります。

※各研究課題が最も貢献する「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」をアイコンで示しています。SATREPSでは、SDGsに積極的に対応して国際社会に貢献していきます。

環境・エネルギー分野 研究領域「地球規模の環境課題の解決に資する研究」

研究課題名 ベトナムにおける建設廃棄物の適正管理と建廃リサイクル資材を活用した環境浄化およびインフラ整備技術の開発 貢献する主なSDGs SDGs11 住み続けられるまちづくりを
研究代表者
(所属機関・役職)
川本 健
(埼玉大学 大学院 理工学研究科 教授)
研究期間 5年間
相手国ベトナム社会主義共和国 主要相手国
研究機関
ベトナム国立建設大学
研究課題の概要
本研究は、ベトナムにおける建設廃棄物のリサイクルを積極的に推進するために、建設廃棄物の各種取扱いガイドラインや建設廃棄物から製造されるリサイクル資材の品質基準を整備し、それらのリサイクル資材の技術開発を進めることを目的とする。さらに、建廃リサイクルを推進するための戦略的ビジネスモデルを提案し、現地での試験的事業によりその有効性および現地定着可能性を検証する。技術開発では、リサイクル資材を活用した水質浄化技術(油汚染水、重金属類汚染水)と保水性強化型の透水性路盤技術の開発を行い、野外実験でその有効性を検証する。本開発技術やビジネスモデルが実際の事業に適用されることを通じて、本活動がベトナム国家戦略の2025年数値目標である建廃リサイクル率60%達成に貢献することを目指す。
研究課題名 地域住民の在来知と生態学的手法の協働と共創による革新的な森林資源マネジメントの確立と実装 貢献する主なSDGs SDGs15 緑の豊かさも守ろう
研究代表者
(所属機関・役職)
安岡 宏和
(京都大学 アフリカ地域研究資料センター 准教授)
研究期間 5年間
相手国 カメルーン共和国 主要相手国
研究機関
国立農業開発研究所(IRAD)
研究課題の概要
本研究は、カメルーン東南部の熱帯雨林において、住民生活と両立する生物多様性保全および森林保全を推進するために、在来知と科学知を統合した森林資源マネジメントモデルの開発を目的とする。まず、カメラトラップによる動物生息密度の推定方法を確立し、森林資源に関する住民の在来知を統合することで、科学的根拠を持ち、かつ住民自身が運用できる野生動物のモニタリング方法を考案する。並行して、野生動物モニタリングに基づく狩猟管理と、住民の収入向上につながる森林資源の商品化を組み込んだ、森林資源マネジメントを提案し、その運用主体となる住民組織を育成する。こうして開発したマネジメントモデルをプロジェクト地域にて試験的に適用し、その検証をふまえて適用マニュアルを策定した後、カメルーンの森林保全政策へ反映させる。将来的には、コンゴ盆地における生物多様性保全の優先地区でのモデル拡大を目指す。

環境・エネルギー分野 研究領域「低炭素社会の実現に向けた高度エネルギーシステムに関する研究」

研究課題名 熱発光地熱探査法による地熱探査と地熱貯留層の統合評価システム 貢献する主なSDGs SDGs7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに
研究代表者
(所属機関・役職)
土屋 範芳
(東北大学 大学院 環境科学研究科 教授)
研究期間 5年間
相手国 エルサルバドル共和国 主要相手国
研究機関
エルサルバドル大学
研究課題の概要
本研究は、地熱資源の探査を支援する総合システムを提供することで、地熱エネルギーの開発を促進することを目的とする。地熱エネルギーは、安定的な再生可能エネルギーであるが、熱源探査にはリスクがともなう。本研究で開発を目指す熱発光地熱探査法は、広範囲にわたって微弱な地熱徴候を捉えることが可能な新しい地熱探査法である。この技術により、安価かつ短期間で地熱有望地域の絞り込みが可能となる。対象国でこの熱発光地熱探査を実施するとともに、既存探査データをGIS(地理情報システム)上に集積し、ビッグデータ解析技術を用いて、地熱貯留層の熱水流動評価シミュレーション技術との統合化を進める。また、新探査法を活用できる人材の養成をはかり、慨査から精査まで網羅する地熱探査技術体系を習得させる。これらの活動を通じて、地熱エネルギー開発を促進し、再生可能エネルギーによる途上国におけるエネルギーの自立化を目指す。
研究課題名 THAILAND 4.0を目指したCO排出削減と市民総幸福向上を同時実現するためのe-スマート交通統合戦略 貢献する主なSDGs SDGs11 住み続けられるまちづくりを
研究代表者
(所属機関・役職)
林 良嗣
(中部大学 総合工学研究所 教授)
研究期間 5年間
相手国 タイ王国 主要相手国
研究機関
タマサート大学
研究課題の概要
本研究は、温暖化ガス排出と大気汚染物質、経済機会損失、健康リスク増大の原因となっている途上国メガシティの交通渋滞を先進国の手法を超えて解決することを目的とする。バンコク全体を視野に入れつつスクンビット沿道をモデル地区に、デジタルアース上にビッグデータや3Dデータなどを統合・可視化することにより、ICTをフル活用したe-スマート交通統合戦略の実装を試みる。また、モノベースから価値ベースへの経済転換を目指すTHAILAND 4.0に呼応すべく、人々の価値観を反映したクオリティ・オブ・ライフ(QOL)を測り、QOLの対CO排出効率を表すファクター指標により交通システムを評価する方法を開発する。この手法は、近い将来、急速に高齢化するアジア・メガシティに向けて、SDGsが示す公平性・包摂性も評価できる手法を先進国にも先駆けて提供できる。本研究をタイと日本の若手研究者が共同実施することで、高齢化などの大きな社会変化に対応する人材育成にも貢献する。

生物資源分野 研究領域「生物資源の持続可能な生産・利用に資する研究」

研究課題名 チリにおける持続可能な養殖確立に向けた赤潮早期警戒のための産官学連携基盤の構築 貢献する主なSDGs SDGs14 海の豊かさを守ろう
研究代表者
(所属機関・役職)
丸山 史人 
(京都大学 大学院 医学研究科 准教授)
研究期間 5年間
相手国 チリ共和国 主要相手国
研究機関
ラフロンテラ大学
研究課題の概要
本研究は、チリ南部で養殖サケに大量のへい死を引き起こしている有害赤潮の発生メカニズムを、環境(気候、水質、水温等)と微生物学的観点の両面から解明することを目的とする。赤潮は、急激に高密度まで増殖した赤潮原因藻とそれらに随伴する細菌叢・ウイルスなどを含む包括的な微生物生態系(赤潮ホロビオーム)から成る。赤潮の発生・消滅過程には、赤潮原因藻と他の微生物の相互作用が重要とされる。時系列全ゲノム解析手法による赤潮原因藻・細菌類・ウイルスの検出・定量により、これまでの単独の生物種モニタリングでは見いだすことができなかった、生物間相互作用の包括的理解を目指す。そして、赤潮ホロビオームの理解に基づき、適切な環境評価法の確立と、産官学連携による養殖法・防除法を策定し、養殖産業の経営安定化を図る。
研究課題名 ミャンマーにおけるASEAN稲ゲノム育種ネットワーク 貢献する主なSDGs SDGs2 飢餓をゼロに
研究代表者
(所属機関・役職)
吉村 淳
(九州大学 大学院 農学研究院 教授)
研究期間 5年間
相手国 ミャンマー連邦共和国 主要相手国
研究機関
農業畜産灌漑省農業研究局
研究課題の概要
本研究は、ミャンマーの自然・社会経済環境に適したイネ育種システムの強化を図るため、高収量性、病虫害抵抗性、環境ストレス耐性、早生等の有用遺伝子を地域適応イネ品種に導入して有望系統を開発することを目的とする。具体的には、育種基盤構築のために、迅速戻し交配とマーカー選抜の確立、有用遺伝子の探索・同定・解析、ミャンマー遺伝資源の評価を行い、天水・低地水田や畑地に適した系統開発のために地域適応品種に有用遺伝子を導入する。その後、有望系統の評価をミャンマー各地の試験栽培で行うとともに、ASEANへの波及を目指す。

防災分野 研究領域「開発途上国のニーズを踏まえた防災に関する研究」

研究課題名 ワジ流域の持続可能な発展のための気候変動を考慮したフラッシュフラッド統合管理 貢献する主なSDGs SDGs13 気候変動に具体的な対策を
研究代表者
(所属機関・役職)
角 哲也
(京都大学 防災研究所 教授)
研究期間 5年間
相手国 エジプト・アラブ共和国 主要相手国
研究機関
水資源灌漑省水研究所(NWRC)
研究課題の概要
本研究は、近年、エジプトなどの乾燥・半乾燥地域のワジ(涸れ谷)流域において頻発するフラッシュフラッド(WFF)に対して、減災と水資源開発を複合目的とする統合的管理方策を提案することを目的とする。WFF対策では、ハード対策(洪水貯留施設など)とソフト対策(降雨-流出モデルに基づく予警報システム導入や土地利用計画など)を組み合わせた多面的アプローチが重要である。一方、洪水は地下水かん養によって新たな水資源開発を行う貴重な機会を生む。そこで本研究では、WFFを再現するための水文モデルを開発し、気候変動シナリオに基づく将来影響について検討する。次に、WFFの被害軽減と地下水かん養を図るための洪水貯留施設群を提案し、日本発の台形CSGダムの適用可能性も検討する。これらをベースに、ワジ流域に対するリスク評価手法を開発するとともに、中央・地方政府や地域コミュニティを包括したWFF統合管理モデルの実社会での適応を目指す。
研究課題名 タイ王国産業集積地のレジリエンス強化を目指したArea-BCM体制の構築 貢献する主なSDGs SDGs13 気候変動に具体的な対策を
研究代表者
(所属機関・役職)
渡辺 研司
(名古屋工業大学 大学院 工学研究科 教授)
研究期間 5年間
相手国 タイ王国 主要相手国
研究機関
チュラーロンコーン大学
研究課題の概要
本研究は、東南アジアの生産・物流拠点としてますます重要性が増す一方で、気候変動の激化による災害リスクの急増にさらされているタイ王国を対象とし、Area-BCM(地域型事業継続マネジメント)の枠組みを用いて、産業集積地の災害レジリエンスを向上させることを目的とする。具体的には、主要工業団地における利害関係者共通の情報共有と意思決定の仕組みを構築するために、①災害リスクのモニタリング・評価システム、②BIA(ビジネス・インパクト分析)に関わる分析手法の確立および情報共有のためのシステム、③Area-BCMの体制、の構築・運用を行う。また、これらの機能を統合したツール・キットを標準化することで相互運用性を確保、個別BCMの限界の補完、地域全体の災害レジリエンス強化を目指す。更にサプライチェーンで繋がるASEAN諸国等への展開により、災害リスクに備える広域な投資循環の形成も目指す。