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別紙1

平成29年度 新規研究代表者および研究開発課題の概要および総評

研究代表者
(所属機関・役職)
研究開発課題 対象とする主なデータベース 概要
沖 真弥
(九州大学 大学院医学研究院 助教)
エピゲノミクス統合データベースの開発と機能拡充 ChIP−Atlas
(http://chip-atlas.org/)

本研究開発課題では、ChIP−seqデータの統合解析データベース(ChIP−Atlas)のデータ追加と機能拡充を目指す。特に、Bisulfite−seqデータの追加、収集対象生物の拡充、サンプルメタデータに対するキュレーション業務の効率化や規格化、積極的な広報活動とニーズの吸収を積極的に推し進める。

本研究開発を通じ、ChIP−Atlasを国際的に中核的なエピゲノミクス統合データベースとなし、知識発見や予測のために幅広い生命科学系分野で使われることを目指す。

金久 實
(京都大学 化学研究所 特任教授)
ゲノム・疾患・医薬品のネットワークデータベース KEGG MEDICUS
http://www.kegg.jp/kegg/medicus/

ゲノムの情報から疾患や医薬品に関する知見を得るための新しいデータベースとして、ヒトゲノムのバリエーション(多様性)を、生体システムを構成するネットワーク要素のバリエーションとして蓄積したKEGG NETWORKを開発する。KEGG MEDICUSには疾患情報、医薬品情報、ネットワーク情報が統合され、クリニカルシーケンスデータの解釈など、ゲノム情報有効利用のための新たなレファレンスリソースとして提供する。

木下 聖子
(創価大学 理工学部 教授)
糖鎖科学ポータルの構築 GlyCosmos Portal(URL未定)

本研究開発課題では、システム糖鎖生物学の基盤となるGlyCosmos Portalを構築する。本ポータルには糖鎖構造リポジトリGlyTouCanと、新規開発の複合糖質リポジトリGlyCombを設置する。また、2つの統合データ(糖鎖の分子構造および糖鎖遺伝子に関するパスウェイ情報)を格納するGlyCosmos Databaseを構築するとともに、ゲノム、プロテオーム、メタボロームなどのデータベースと連携する。

糖鎖を含むかたちで情報伝達経路や代謝経路を閲覧・解析できるようにすることで幅広い生命科学分野における糖鎖情報の活用を目指す。

栗栖 源嗣
(大阪大学 蛋白質研究所 教授)
蛋白質構造データバンクのデータ検証高度化と統合化 Protein Data Bank(PDBj)
http://pdbj.org/

本研究開発課題では、PDB(蛋白質立体構造データバンク)とBMRB(NMR実験情報データバンク)を、日米欧の国際協力によりハイブリッド法など新たな手法に拡張し、国際組織であるwwPDBの枠組みの下で構築・公開する。その際、特にデータ品質管理のための検証レポートの拡充とセマンティック化を図る。また、生体高分子と複合体を形成している低分子化合物に対して化学分野のデータベースであるCSD(ケンブリッジ結晶構造データベース)との統合化も図る。また、たんぱく質の種々の機能情報が利用できるようにツールを高度化するとともに、データベースの利用を促進するための講習会などの活動を幅広く行う。

黒川 顕
(国立遺伝学研究所 生命情報研究センター 教授)
データサイエンスを加速させる微生物統合データベースの高度実用化開発 MicrobeDB.jp
http://microbedb.jp/

本研究開発課題では、フルRDFによる微生物統合データベースMicrobeDB.jpの徹底的なデータ統合および高度化をさらに推進するとともに、「統合化されたデータをどのように渡り歩き、どのような新規知見を得るか」というデータサイエンスを加速させる統合DBの利活用方法の開発に重点を置き、MicrobeDB.jpの実用化を目指す。

菅野 純夫
(東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授)
疾患ヒトゲノム変異の生物学的機能注釈を目指した多階層オーミクスデータの統合 DBKERO
http://kero.hgc.jp/

本研究開発課題では、ヒトゲノム多型・変異に生物学的機能注釈を与えるべく、変異近傍の多層オーミクスデータの統合を目指す。データ統合はがんを対象としたものを中心に、最終的に疾患の枠を超えた統合を目指す。特に、培養細胞やマウスなどの動物モデル系から得られたデータに特色を求める。また、IHEC(国際エピゲノムコンソシアム)データの本邦での受け皿となる。

本研究開発を通じ、臨床検体で乏しいエピゲノム情報を充実、同時に生物学的機能解析の場としてのモデル系のオーミクス情報の整備を行う。独自性の高い疾患多層オーミクス情報の統合データベースの構築を目指す。

田畑 哲之
(かずさDNA研究所 所長)
個体ゲノム時代に向けた植物ゲノム情報解析基盤の構築 Plant Genome DataBase Japan (PGDBj)
http://pgdbj.jp/

本研究開発課題では、PGDBjにおいて種、属、科などの階層間のゲノム関連情報を容易に比較できる仕組みを整備し、特定の種で得られている知見を他の種で参照できる基盤を構築する。現PGDBjの諸機能を基軸に、新たな配列データを柔軟に取り入れ、ユーザが必要とする情報を抽出できるデータベースの開発を目指す。さらに個体ゲノムの時代が植物にも到来することを見据え、ユーザ自身が分析したNGSデータを投入できる多型・ハプロタイプ検出システムを開発・実装する。

<総評> 研究総括:長洲 毅志(元エーザイ株式会社 プロダクトクリエーション本部 ポートフォリオ戦略・推進部 顧問)

ライフサイエンスの研究は、データサイエンス化の様相を呈しております。本プログラムを通じたデータベースの整備、統合化の取り組みは、ライフサイエンスそのものにとって不可欠と言っても過言ではありません。今回の研究開発公募に当たっては、そうした認識のもと、公募開始以前からさまざまな議論を深めてまいりました。本プログラムにおいてどのようなデータを集めるべきか、どのようなデータベースを維持すべきか。国際的に有用なデータベース、日本の強みを生かす分野、新たな融合研究分野、産業化にとって重要なデータベース、基盤として重要な分野などいろいろな切り口がありどれも疎かにはできません。今回、各研究開発提案には、研究開発対象とするデータベースが国際的な役割を担う重要なデータベースか、日本の強みである独自なデータベースかのどちらであるかを示して頂きました。また、実施する研究開発について、データベースのデータ提供者、データ利用者(学協会をはじめとした研究者コミュニティ、食品業界、製薬業界などの産業コミュニティなどを含む)との緊密な連携・協業を必須とし、具体的な取り組みを立案頂きました。特にこれらの観点を深く問いながら、研究アドバイザーとの熱心な討議を踏まえて選考いたしました。

選考の中でも特に難しかったのは、これまで継続的に運用されてきたデータベースを発展・拡張しようとする提案とこれから新たにデータベースを構築しようとする提案との比較です。前者の提案の多くは、データベースの国際認知度があり、開発・運用体制が整っており、これまでに多くの研究者から参照されているなど優れた実績を有しています。一方で新規の後者はすべてがこれからであって、申請者自身の将来ビジョンが非常に重要となります。

本プログラムで対象とするデータベースについての要求条件が高いものであったためか、新規提案は多くはありませんでした。しかし、ライフサイエンス分野の研究では明らかに超多量のデータを生み出す方向であることは間違いないので、その新しいデータを拾い上げなくてはいけません。一方で発展・拡張を目指す提案についても長期的な展望での安定稼働に加え、新しい研究動向や技術への対応(例えば、ゲノム情報を利用した育種法への対応や構造生命科学におけるクライオ電子顕微鏡法への対応など)を的確に行う計画が立案されているかなど注意深く判断する必要がありました。判断に当たっては研究アドバイザーからの非常に多岐にわたる意見を聞き、議論を尽くしたことを申し添えます。

今後は、公募要項に記載の通り、計画の策定や実施結果の報告などの際の各研究開発課題との密接な意見交換を通じた適切な研究開発マネジメントによって、最適な成果を得られるように最善を尽くしてまいります。実施に当たっては、各研究開発課題におけるデータベースのデータ提供者、データ利用者含め、多方面の関係者の協力をお願いいたします。

残念ながら不採択とした研究開発提案についても実際に非常に重要なデータベースを対象としたものが多く、最後まで議論の俎上に上がっていましたが、具体的にどのようなデータを搭載しあるいは機能を実装しようとしているのか、また多くの研究者に対してどのような価値をもたらすのかなどについて描き切れていないなどの理由により採択に至りませんでした。今回採択とならなかった提案については、不採択理由を踏まえてさらに磨き上げ、是非とも次の機会に応募頂きたいと思います。また、今回応募されなかったデータベースにつきましても、食糧、環境、エネルギー問題、健康、医療などにどのようなソリューションを提供しうるのかについて深くご検討頂き、応募頂ければと思います。

以上