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別紙1

平成29年度本格研究移行プロジェクトの概要

フューチャー・アース構想の推進事業「フューチャー・アース:課題解決に向けたトランスディシプリナリー研究」

実施期間:3年、研究費:3000万円以内/年
題名 研究代表者名
所属・役職
概要
貧困条件下の自然資源管理のための社会的弱者との協働によるトランスディシプリナリー研究
佐藤 哲
愛媛大学 社会共創学部
教授
アジア・アフリカおよび太平洋島嶼域の開発途上国や新興国における貧困と格差の解消は、喫緊の国際的課題であり、その解決のために、貧困層の福利の向上を自然資源の持続可能な利用を通じて実現する仕組みが必要とされている。 本研究は、東アフリカ・マラウィで構築してきた貧困層に属する社会的弱者をパートナーとするトランスディシプリナリー(TD)研究の理論と方法論を用いて、多様な条件と課題をもつアジア・アフリカなどの6か国8地域において、貧困層をパートナーとするTD研究によって、自然資源の持続可能な管理・活用を通じた貧困層の生活の質と福利の向上をめざす。貧困層の中のイノベーターに加え、レジデント型研究者・知識の双方向トランスレーターなどと協働したTD研究を行い、貧困層が直面する課題と、彼(女)らが生業を通じて実践している内発的イノベーション(ツール)を抽出して、個々の地域における貧困解消に役立つ知識・技術の協働生産と実装を推進する。 各地から収集されるツールを整理した「持続可能な開発のための国際ツールボックス」(装置)、および世界のツール開発・実践者、TD科学者などが参加してツールの共創と活用を行う「地域社会における内発的イノベーションのための世界フォーラム」(プラットフォーム)を協働設計し、多様な立場の人々との協働による貧困解消のための総合的TD研究を推進する。

<総評>フューチャー・アース委員会 委員長 安岡 善文(東京大学 名誉教授)

今回、平成27年度に「トランスディシプリナリー研究として推進すべき課題の可能性調査」(Phase1(研究課題の設計))に採択され、平成28年度に「課題解決のためのトランスディシプリナリー研究(試行)」(研究企画の試行)を実施したプロジェクトを対象として本格研究への移行審査を行い、1プロジェクトを選定しました。これで、平成28年度からすでに本格研究を開始しているプロジェクトと合わせて、本事業として2つの日本発のTD研究プロジェクトが走ることとなります。移行審査の対象となったプロジェクトでは、いずれもアジアやアフリカの多様な地域で意欲的な実践研究が行われていましたが、そこで上がった成果を水平展開する際に地域ごとのカスタマイズと、地球的な規模へのスケールアップやコモナイズをどう並行して実現するか、その方法論への洞察が審査の重要なポイントとなりました。

フューチャー・アース(以下、FEと略記)の核となる考え方が、学界内のみならず社会におけるステークホルダーと協働することにより、地球的な規模での課題の解決をめざすトランスディシプリナリー(以下、TDと略記)アプローチですが、そのFE研究をどう具体化するかは、FEに取り組む国々の共通の課題です。本プロジェクトがTD研究の方法論を適用しながら地球規模での共通課題の解決に取り組むことで、FEの先導的な研究になるとともに、世界中でその達成に向けてさまざまな取り組みがはじまっている「持続可能な開発目標(SDGs)」の実現にも貢献することが期待されます。