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科学技術振興機構報 第1234号

平成28年12月12日

東京都千代田区四番町5番地3
科学技術振興機構(JST)

出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)における
4Dセンサー株式会社への出資決定について

JST(理事長 濵口 道成)は、出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)において、4Dセンサー株式会社(本社:和歌山市、代表取締役 柾谷 明大、以下「4Dセンサー」という)からの第三者割当増資注1)の引き受けを実施致しました。

4Dセンサーは、JSTの独創的シーズ展開事業「独創モデル化」注2)平成18年度「基準面を用いた高精度形状計測装置の開発」、シーズ発掘試験注3)平成20年度「位相シフトデジタルホログラフィにおける三次元光波位相の超高精度検出法の開発」、研究成果最適展開事業(A-STEP)FSステージ(起業検証)注4)平成21年度「リアルタイム三次元形状・変形・ひずみ計測装置の開発」などに採択され、その研究開発成果を基に平成24年2月1日に設立された和歌山大学発のベンチャー企業です。

モアレトポグラフィー注5)は、1970年初頭にすでに観察技法として成立していますが、精度の良い位相解析方法がなく、精密測定には利用されませんでした。4Dセンサーでは、格子縞や光学系のひずみを処理するハードウエアやソフトウエアを、現代のデジタル信号処理技術を用いて最適化し、モアレトポグラフィーを精密測定技術に進化させました。同社のコア技術は、高速に位相を変えて撮影する技術や、撮影した複数の同一視野画像を元に、格子縞やモアレ縞注6)をデータ処理し、自動的に光学系の誤差を修正する技術で、対象物体の3次元形状を高精度かつ高速に得られるようにしたものです。加えて同社では、1枚の画像から位相を解析する方法を開発し、形状や変形を同様に測定できるようにしました。本新技術は、非接触型三次元測定技術と言われるもので、特に測定速度の向上と精度の高さが特徴です。

精密加工ラインの全数検査装置注7)や、インフラ施設の健全度や余寿命診断システム、振動分布測定システムなどに事業を展開していきます。

SUCCESSでは今後も、JSTの研究開発成果を実用化しようとするイノベーティブなベンチャー企業に対して、成長資金の供給や関係機関のネットワークを活用したサポートを提供することにより、実用化を通じた先端技術の社会への還元を進めていきます。

ホームページURL:https://www.jst.go.jp/entre/

平成26年4月より、JSTでは「出資型新事業創出支援プログラム」(略称:SUCCESS SUpport Program of apital ontribution to arly-tage Companie)を開始しました。本事業は、JSTの研究開発成果の実用化を目指すベンチャー企業に対しJSTが出資並びに人的および技術的援助を行うことでその創出および成長を促進し、当該ベンチャー企業が行う事業活動を通じてJSTの研究開発成果の実用化・社会還元を促進することを目的とした事業です。出資を通じてJSTがベンチャー企業の株主になることで、民間の資金を誘引する「呼び水効果」を狙っています。

<企業概要>

企業名4Dセンサー株式会社
設立日平成24年2月1日
本社所在地和歌山県和歌山市
代表取締役柾谷 明大
事業内容 計測システム販売事業:
モアレ縞解析による形状・変形・ひずみ計測法による計測機器販売。(インフラ計測、電子部品計測、振動計測、基板計測など)

<事業展開>

投影された縞模様を元に、モアレ画像を作成し、その格子やそれにより発生するモアレ縞の新しい解析技術を生かして高速の三次元計測システムを開発しました。従来より、この技術の実用化において問題とされていた、光学系のゆがみや基準縞模様の精度誤差を、新しい解析技術によって解決することで、高度な測定を可能としたものです。

モアレ縞を撮影した複数の画像を元に、縞模様の位相を連続的に計算することで、面上の任意の点において、その位置データを高精度かつ高速に得ることが可能になりました。このシステムは非接触で高精度の三次元形状データを高速に取得できる特徴があり、これを生かして橋梁、構造物などのインフラ点検、製造業でのインライン3次元検査、振動計測、基板計測など広い領域での事業化を計画しています。

立体形状に基準格子を斜め方向から照射すると、格子数は同じでも繰り返し周期が異なる縞模様として観察することが出来ます。基準縞模様と、それを投影した対象物の写真を重ね合わせることで、得られたモアレ縞は実際の等高ポイントをトレースする縞模様(等高線)になります。(図2

このようにして得られたモアレ縞によって対象の形状を測定する場合、格子縞を撮影した一枚の写真データから対象物の形状が得られるため、撮影フレーム毎の測定ができます。そのために従来の光切断によるスキャン法(全面を定期的に走査する測定方法)に比べて測定速度が向上します。(表1表2

モアレは、格子そのものの変形を定量的に捉えることもできるため、基準格子のゆがみを二次元で捉えることが可能になります。(図3

図1 基準格子と二つの格子の重ね合わせにより発生するモアレ縞

図2 モアレ縞から測定対象の形状測定

表1 モアレ縞による測定の利点

項目概要
データ測定空間内での(x,y,z)データ ✕ 時間軸(t)
測定速度計算速度とフレーム撮影速度に依存 実績1/2000秒毎
測定精度X,Y軸方向精度 撮影カメラ画素数による
Z軸方向精度 投影格子間隔の1/1000程度

表2 本新技術による三次元測定能力

図3 モアレ縞による変形量測定

<用語解説>

注1) 第三者割当増資
特定の第三者に新株引受権(新株の割当を受ける権利)を与えて行う増資のこと。会社の資金調達の方法の1つで、会社の自己資本を充実させ、財務内容を強化することができます。
注2) 独創的シーズ展開事業「独創モデル化」
研究開発型中堅・中小・ベンチャー企業の有する製品構想を、企業と大学・公的研究機関等が協力して、試作品として具体的な形とすることや実用化に向けて必要な実証試験等を実施していた事業です。
注3) シーズ発掘試験
大学・公的研究機関等の研究成果を発掘し、研究シーズや企業ニーズの探索やマッチング、研究シーズの育成、研究成果の各種制度や企業への橋渡しを専らの業務とするコーディネータ等が発掘した大学等の実用化が期待される研究テーマであって、知的財産権の取得が期待される、もしくは、知的財産権を既に取得し、実用化に向けて発展が期待される研究課題の実用化を即し、コーディネータ等の活動を支援することを目的として実施していた事業です。
注4) 研究成果最適展開事業(A-STEP)FSステージ(起業検証)
大学・公的研究機関等で生まれた国民経済上重要な科学技術に関する研究成果を基にした実用化を目指す研究開発フェーズを対象とした技術移転支援プログラムです。起業挑戦ステージでは、大学などのシーズに基づく、成長力あるベンチャー企業設立のための研究開発を支援していた事業です。
注5) モアレトポグラフィー
モアレ縞を利用して三次元形状を等高線画像として捉える技法。古くは人体の起伏を測定するためにも用いられていました。現在では母子保健法施行規則などで定められる「脊柱及び胸郭の疾病及び異常の有無」を測定する「脊柱検査」の手法としてモアレ式体型観察装置で利用されています。
注6) モアレ縞
規則正しい繰り返し模様を複数重ね合わせた時に、それらの周期のずれにより視覚的に発生する縞模様です。
注7) 全数検査(装置)
製造工程において対象製品のすべてを検査すること、およびその装置。
全数検査は、検査対象の全数について、1つ1つを検査するので、当該ロット製品の良品性を完全に保証できます。しかし、数の多い製品を全数検査するのは、不経済であり、現実的ではありません。このような場合に、抜取り検査を適用します。抜取り検査は、検査対象から試料を抜き取って調べ、その結果を検査対象の判定基準に照合し、測定対象ロット全体の合否を判定する検査です。抜取り検査は、全数検査よりも検査個数が少ないため、検査費用と時間が少なく経済的といえます。一方で検査に合格したロットの中に1つも不良品が入っていないとは断言はできません。そのため、出来うる範囲で全数検査を行い、基準外の製品を工程途中で検出する技術が求められています。

<お問い合わせ先>

<4Dセンサー株式会社に関すること>

4Dセンサー株式会社
担当:柾谷
〒640-8451 和歌山県和歌山市中649-3番地111号
Tel:073-454-1004 Fax:073-494-6004
E-mail:
URL:http://www.4d-sensor.com/

<SUCCESS事業に関すること>

科学技術振興機構 起業支援室
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-6380-9014 Fax:03-5214-0017
E-mail: