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科学技術振興機構報 第1227号

平成28年11月30日

東京都千代田区四番町5番地3
科学技術振興機構(JST)

出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)における
Karydo TherapeutiX株式会社への出資決定について

JST(理事長 濵口 道成)は、出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)において、Karydo TherapeutiX株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役 佐藤 匠徳、以下「Karydo」という)からの第三者割当増資注1)の引き受けを実施致しました。

Karydoは、既存のアプローチでは見いだすことのできない、医薬品などの新たな薬効や副作用の検出、疾病の超早期発見・治療・予防に取り組むベンチャー企業です。同社代表である佐藤 匠徳 氏(株式会社国際電気通信基礎技術研究所 佐藤匠徳特別研究所 所長)が総括を務める、戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATO)「佐藤ライブ予測制御プロジェクト」(平成25年度~)の研究開発成果の実用化を事業としています。

現在の医薬品・保健機能食品開発では、個々の器官単独の状態に注目し作用させるアプローチが主流です。しかし心腎連関注2)や糖尿病の合併症に見られるように、体内のすべての器官は互いに影響を与えあっています。これは多器官連関ネットワークと呼ばれる概念で、近年の基礎医学の分野でも認知されています。

医薬品などの開発においても、本来は個々の器官だけでなく体全体への影響を考える必要がありますが、多器官連関ネットワーク全体を定量的に測る方法が今までありませんでした。ERATO 佐藤ライブ予測制御プロジェクトでは、ある時点での、全器官の遺伝子・タンパク質発現、代謝動態パターン情報を網羅的に捉える技術を確立し、これをiOrgansテクノロジーと名付けました。Karydoはこれを基盤技術として、医薬品・保健機能食品の従来見いだせなかった薬効や副作用のあぶり出し、病気の予兆を超早期に見いだす生体マーカーの開発、さらに創薬ターゲット分子の探索などに取り組んでいます。

同社技術は、製薬企業に新たなドラッグリポジショニング注3)の方法論を提供するものです。また、健康な状態に戻れる段階で疾病の予兆を見いだしコントロールすることができれば、健康寿命の延長への寄与も期待されます。

SUCCESSでは今後も、JSTの研究開発成果を実用化しようとするイノベーティブなベンチャー企業に対して、成長資金の供給や関係機関のネットワークを活用したサポートを提供することにより、実用化を通じた先端技術の社会への還元を進めていきます。

ホームページURL:https://www.jst.go.jp/entre/

平成26年4月より、JSTでは「出資型新事業創出支援プログラム」(略称:SUCCESS SUpport Program of apital ontribution to arly-tage CompanieS)を開始しました。本事業は、JSTの研究開発成果の実用化を目指すベンチャー企業に対しJSTが出資並びに人的および技術的援助を行うことでその創出および成長を促進し、当該ベンチャー企業が行う事業活動を通じてJSTの研究開発成果の実用化・社会還元を促進することを目的とした事業です。出資を通じてJSTがベンチャー企業の株主になることで、民間の資金を誘引する「呼び水効果」を狙っています。

<企業概要>

企業名Karydo TherapeutiX株式会社
設立日平成27年10月15日
本社所在地東京都千代田区
代表取締役佐藤 匠徳
事業内容 医薬品などの解析評価、生体マーカー・創薬ターゲットの開発

<事業展開>

ある時点での、全器官の遺伝子・タンパク質発現、代謝動態パターン情報を網羅的に捉えることができるiOrgansテクノロジーを基盤技術として、解析評価事業(医薬品や保健機能食品の、従来見いだせなかった薬効や副作用のあぶり出し)、生体マーカー事業(病気の予兆を超早期に見いだす生体マーカーの探索と開発)、創薬事業(ターゲット分子の探索など)に取り組んでいきます。

解析評価事業では、すでに食品系メーカーと共同研究契約を締結し、新商品の候補物質について薬効や副作用の評価を実施しています。

また生体マーカー事業では、大手化学メーカーと連携し、大規模な実証試験を見据えたフィージビリティスタディー注4)を本年度から実施しています。

<用語解説>

注1) 第三者割当増資
特定の第三者に新株引受権(新株の割当を受ける権利)を与えて行う増資のこと。会社の資金調達の方法の1つで、会社の自己資本を充実させ、財務内容を強化することができる。
注2) 心腎連関
心臓の病気と腎臓の病気がお互いに影響しあって進行すること。たとえば、慢性腎臓病を患うと心血管症(心筋梗塞など)になりやすく、逆に心血管症を患うと慢性腎臓病になりやすい。
注3) ドラッグリポジショニング
すでに上市された医薬品や、開発中止になった医薬品候補物質について、新たな対象疾患での適用を取得しようとすること。
注4) フィージビリティスタディー
大規模な実証試験の実現可能性を事前に検討するために行う小規模な実証試験のこと。

<添付資料>

別紙:出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)の事業概要

<お問い合わせ先>

<Karydo TherapeutiX株式会社に関すること>

Karydo TherapeutiX株式会社
担当:杉坂
〒102-0082 東京都千代田区一番町6 相模屋本社ビル7階
Tel:03-6671-9094
E-mail:

<SUCCESS事業に関すること>

科学技術振興機構 起業支援室
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-6380-9014 Fax:03-5214-0017
E-mail: