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科学技術振興機構報 第1217号

平成28年9月30日

東京都千代田区四番町5番地3
科学技術振興機構(JST)

出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)における
五稜化薬株式会社への出資決定について

JST(理事長 濵口 道成)は、出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)において、五稜化薬株式会社(本社:北海道札幌市、代表取締役 丸山 健一、以下「五稜化薬」という)からの第三者割当増資注1)の引き受けを実施致しました。

五稜化薬は、研究用機能性蛍光プローブ注2)の製造・販売、受託合成および機能性蛍光プローブを用いたがんの外科手術向けナビゲーションドラッグの開発を行うベンチャー企業で、平成16年度の戦略的創造研究推進事業・ さきがけ(以下「さきがけ」という)(研究領域「構造機能と計測分析」、研究総括:寺部 茂(当時 兵庫大学 教授))における「細胞生命現象解明に向けた高次光機能性分子の精密設計」(代表者:浦野 泰照(当時 東京大学 助手))、平成21年度の戦略的創造研究推進事業・研究加速強化システム(以下「研究加速強化システム」という)における「光機能性プローブによる in vivo 微小がん検出プロジェクト」(研究代表者:浦野 泰照(当時 東京大学 教授)などによる研究開発成果の実用化を主たる事業としています。

生細胞応答をリアルタイムに観察することができる蛍光プローブは、生命現象の解明のために欠かすことのできない可視化技術ですが、今まで意図的に設計することが困難でした。五稜化薬は、さきがけで開発された精密設計技術を基に、さまざまな用途の蛍光プローブを200製品以上も開発・販売しています。さらに、研究加速強化システムで見出された機能性蛍光プローブを用い、数分でがん組織のみを選択的に光らせる技術を、がんの外科的手術の際に活用することで取り残しのリスクを低減するナビゲーションドラッグとして開発しており、今後のがん治療の発展に大きく貢献することが期待されます。

SUCCESSでは今後も、JSTの研究開発成果を実用化しようとするイノベーティブなベンチャー企業に対して、成長資金の供給や関係機関のネットワークを活用したサポートを提供することにより、実用化を通じた先端技術の社会への還元を進めていきます。

ホームページURL:https://www.jst.go.jp/entre/

平成26年4月より、JSTでは「出資型新事業創出支援プログラム」(略称:SUCCESS SUpport Program of apital ontribution to arly-tage CompanieS)を開始しました。本事業は、JSTの研究開発成果の実用化を目指すベンチャー企業に対しJSTが出資並びに人的および技術的援助を行うことでその創出および成長を促進し、当該ベンチャー企業が行う事業活動を通じてJSTの研究開発成果の実用化・社会還元を促進することを目的とした事業です。出資を通じてJSTがベンチャー企業の株主になることで、民間の資金を誘引する「呼び水効果」を狙っています。

<企業概要>

企業名五稜化薬株式会社
設立日平成22年7月16日
本社所在地北海道札幌市
代表取締役丸山 健一
事業内容機能性蛍光プローブの製造・販売、受託合成および機能性蛍光プローブ
を用いたがん外科手術向けナビゲーションドラッグの開発

<事業展開>

機能性蛍光プローブの設計技術を基に、分子生物学などの蛍光イメージング研究に資する研究試薬事業とがん組織のみを選択的に光らせ、がんの外科的手術の際に活用するナビゲーションドラッグ事業を並行して展開します。

研究試薬事業では、研究トレンドを把握しながら、ラインナップ拡充を図るとともに、海外展開の体制を充実し、さらなる事業拡大を図る予定であり、日本のみならず世界中で生命現象の解明に貢献することを目指します。

ナビゲーションドラッグ事業では、乳がんおよび食道がん用の臨床開発を進め、がん治療法の発展に貢献します。将来的には、乳がん、食道がんのみならず、多種多様ながんの手術時や、健康診断の際などに幅広く活用されるよう、がんの早期発見・早期治療、再発予防、術後の早期回復に資する製品の開発・製造に注力する方針です。


図 ヒト食道がん切除検体への適用例

ヒトから摘出した食道がん部分を含む組織片に、五稜化薬が開発中の製品を噴霧し、10分後にがん組織のみを選択的に光らせる事を確認したもの。

<用語解説>

注1) 第三者割当増資
特定の第三者に新株引受権(新株の割当を受ける権利)を与えて行う増資のこと。会社の資金調達の方法の1つで、会社の自己資本を充実させ、財務内容を強化することができる。
注2) 蛍光プローブ
観測対象分子と特異的に反応・結合し、蛍光を発したり、蛍光の色調が変化したりする機能性分子の総称。がん細胞のみを選択的に発光させたり、生体分子の状態や機能を生きている状態で可視化したりすることが可能となる。

<添付資料>

別紙:出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)の事業概要

<お問い合わせ先>

五稜化薬株式会社 東京支社
〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1 東京大学アントレプレナープラザ305
担当:江口
Tel:03-6240-0781
E-mail:

<SUCCESS事業に関すること>

科学技術振興機構 起業支援室
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-6380-9014 Fax:03-5214-0017
E-mail: