JST(理事長 濵口 道成)は、国際科学技術共同研究推進事業(戦略的国際共同研究プログラム:SICORP)注1)「日本-フランス共同研究」において、 フランス国立研究機構(ANR)注2)と共同で「分子技術」分野に関する共同研究課題の募集および審査を行い、平成28年度新規課題として以下の4件を決定しました(別紙1)。
(1)「配位高分子結晶の分子配列を利用した相転移メモリ素子の開発」
日:堀毛 悟史 助教(京都大学 大学院工学研究科)仏:オード・デメッセンス 研究員(リヨン環境・触媒研究所 持続性化学材料グループ)
本研究は、分子を配位高分子と呼ばれる結晶中に集積・配列させ、その構造の相転移機構を利用した新しいメモリ素子の開発を目指す。
(2)「発蛍光プローブのデザイン・合成による蛋白質機能の細胞内局在履歴の「記憶型」イメージング」
日:菊地 和也 教授(大阪大学 大学院工学研究科)仏:イェンス・ハセロッド 教授(リヨン高等研究院 化学科)
本研究は、細胞内蛋白質活性を追跡できる分子プローブを合成することで、蛋白質局在の履歴をイメージングで可視化することを目指す。
(3)「光機能性を有する共有結合性2次元超分子ネットワークの表面合成」
日:金 有洙 主任研究員(理化学研究所 Kim表面界面科学研究室)仏:シルバン・クレア フランス国立科学研究センター(CNRS) 主任研究員(IM2NP)
本研究は光機能を持つ共有結合性2次元分子ネットワークを表面合成する普遍的な手法を開発し、発光・光電変換・分子光メモリ・スマートメンブレンなどのデバイス機能の創成につながる新しい物質開発システムの構築を目指す。
(4)「トランジスタ型超高感度イオンセンサーの開発とセシウムイオン検出への応用」
日:若山 裕 グループリーダー(物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点)仏:アン・シャリエール フランス国立科学研究センター(CNRS) 研究員(マルセイユナノサイエンス研究センター)
本研究は、放射性セシウムイオンを始めとしたさまざまなイオン種を検出するイオンセンサーについて、イオン認識部・絶縁性脂質分子膜・有機半導体薄膜などの重要な構成要素の分子構造を適宜設計し、これらをトランジスタ構造に組み立てることで、超高感度・高選択性のイオン検出の実現を目指す。
今回の共同研究課題の募集には17件の応募があり、これら応募課題について日本およびフランスの専門家が評価を行いました(別紙2)。その結果をもとにJSTとANRが慎重に審査・協議を行い、研究アプローチや独創性、チームの相乗効果や研究成果が与える影響などさまざまな観点から、両国がともに支援すべきと合意した4件を支援課題として決定しました。
研究期間は支援開始から3年間を予定しています。