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別紙

A-STEP「ステージⅢ(NexTEP-Bタイプ)」
平成27年度第1回募集新規課題 一覧

課題名 新技術の
代表研究者
開発実施企業 新技術の内容
耐熱合金性能向上のための熱処理技術 物質・材料研究機構
特命研究員
原田 広史
株式会社
キグチテクニクス
本新技術は、耐熱合金部品を1300℃以上の高温から急冷することが可能な、真空熱処理炉の開発に関するものである。 高温での溶体化熱処理後の冷却速度が従来の2倍程度に向上すると、高温クリープ破断寿命は3倍程度となるなど合金性能が飛躍的に向上することが、小型炉の試験片レベルで明らかになっていた。しかし、従来の製造用熱処理炉は、1300℃以上の熱処理では炉の劣化が著しく、また冷却速度にも限界があった。 本新技術は、1300℃以上の熱処理が容易で、かつ冷却速度の大幅な向上が可能な製造用真空熱処理炉を開発し、ガスタービン翼などの耐熱合金部品のクリープ強度や熱疲労強度などの材料特性を改善させる。それにより、火力発電用ガスタービンや航空機用ジェットエンジンなどの効率向上に繋がり、日本のエネルギー産業、航空機産業のさらなる活性化に寄与することを目指す。
無廃水常温乾式除染土磁力選別システム 県立広島大学
大学院 総合学術研究科
准教授
三苫 好治
三和テッキ株式会社 本新技術は、放射性物質に汚染された土壌を分級する選別システムに関するものである。 現在、福島県内各地には放射性物質の除染土壌や汚染廃棄物が多量に仮置きされているため、中間貯蔵施設に移動して安全に集中・保管することが急務となっている。平成27年より施設へのパイロット輸送が開始されており、今後の本格搬入に向けて、保管される汚染土壌などを放射性物質濃度で分級、減容化することが必要となる。現在、重金属処理技術を転用した湿式土壌分級法や熱分離法などが検討されているが、廃水の処理や過剰なエネルギー負荷など解決しなければならない課題が多い。 本新技術は、放射性物質に汚染された土壌に機能性磁性鉄粉を添加して土壌表層に分散・吸着させ、土壌粒子質量、磁力、含有磁性物量などのバランスにより磁性選別するものである。常温常圧下で全く廃水を出さずに選別、高濃度汚染土の減容化が可能となり、中間貯蔵施設での分級工法を早期に確立し、除染作業を促進、関連地域の復興に大きく寄与することが期待される。
レーザーちらつき解消モジュール 東北大学
大学院工学研究科
教授
田中 秀治
リコー
インダストリアル
ソリューションズ
株式会社
本新技術は、レーザーディスプレイにおいて光の干渉によりちらつきが発生する問題を防ぐ、レーザーちらつき解消モジュールに関するものである。 レーザー光源は、省エネルギー・環境性能に対応した、LEDの次に来る光源として注目されている。しかし、光のちらつきが目を疲れさせるため、普及の課題になっている。本新技術では、光学的位相差を工夫した光学素子とMEMSによる振動モジュールを組み合わせて、光の干渉を起こりにくくしてちらつきを解消する。 本新技術のモジュールにより、低消費電力で鮮やかな色表現が可能なレーザー光源プロジェクターの普及が進み、LED光源の代替や、高輝度ランプを使うサイネージ・シネマなどの映像機器への展開が期待される。
中赤外波長Erファイバーレーザー 大阪大学
レーザーエネルギー学研究センター
講師
時田 茂樹
三星ダイヤモンド
工業株式会社
本新技術は、波長2.8µmの中赤外領域で、平均出力30Wのファイバーレーザーとそれを用いた加工装置を開発するものである。 これまで中赤外レーザーとしてEr:YAGレーザーが歯科分野で利用されているが、パルス発振でかつビーム品質が低いので、加工用途が限定されている。 Er添加ZBLAN(ZrF4/BaF2/LaF3/AlF3/NaF)ファイバーレーザーは、高いビーム品質を有し連続発振が可能である。しかし、現状では機械的強度、耐候性、出力に難があった。本開発では、発振器の長期安定性を確保しつつ出力を向上させることにより実用化を図るものである。 本新技術により、ガラスや樹脂の分断、溶融面取り、融着、封止が可能となる。従来のガラスの切削研磨で生じていた端面のクラックは発生しないため、加工したガラスの強度の維持が可能となる。モバイルディスプレイ用ガラスの高強度化や、樹脂溶着などの新規加工分野の開拓が期待される。