資料4

選定した研究領域及び研究総括の評価

研究領域
   
1. 複雑系生命
2. 活性炭素クラスター
3. 潜在脳機能
4. 核内複合体
研究総括
   
1. 金子邦彦(東京大学大学院総合文化研究科教授)
2. 中村栄一(東京大学大学院理学系研究科教授/
 日本学術振興会学術システム研究センター主任研究員)
3. 下條信輔(カリフォルニア工科大学生物学部教授/
 NTTコミュニケーション科学基礎研究所リサーチプロフェッサ)
4. 加藤茂明(東京大学分子細胞生物学研究所教授)
評価結果
1. 研究領域「複雑系生命」は、揺らぎの多い素過程がたくさん絡み合って、部分と全体がダイナミックな相互作用をしつつ安定化している生命システムの普遍的性質を「複雑系ダイナミクス」および「構成的生物学」という立場のもと、大腸菌や人工細胞等を用いて定量的レベルで理解することを目指すとともに、生物の柔軟性を模したシステムの基盤技術創出の可能性を探るものである。
 本研究領域において、生命システムの柔軟性をもとにしたバイオデバイス・システムの基盤創成に貢献することが期待される。これにより本研究領域は戦略目標「非侵襲性医療システムの実現のためのナノバイオテクノロジーを活用した機能性材料・システムの創製」に資するものと期待される。
 金子邦彦氏は本研究領域の重要な基礎となるカオス・複雑系科学等の先導的な研究を行ってきており、研究総括として相応しいと認められる。
2. 研究領域「活性炭素クラスター」は、精密合成技術を用いて炭素クラスターに各種官能基を組み込むことで、炭素に内在する性質を十分に引き出し、高機能・高活性な「活性炭素クラスター」の創出を目指す。具体的には低次元集合体材料の合成、単分子デバイスの創成、またこれらの基盤技術として分子の構造と変化を原子レベルで観察する電子顕微鏡の開発などを行う。
 本研究領域において、ナノサイズ炭素クラスターを有機物質・無機物質等と結合し、さらにそれらの組織・構造の制御を行うことによって革新的な物性、機能を有する新物質創製が期待される。これにより本研究領域は戦略目標「環境負荷を最大限に低減する環境保全・エネルギー高度利用の実現のためのナノ材料・システムの創製」に資するものと期待される。
 中村栄一氏は本研究領域に関連するフラーレン誘導体の精密合成等の先導的な研究を行ってきており、研究総括として相応しいと認められる。
3. 研究領域「潜在脳機能」は、意識にのぼらない神経情報処理と脳の高次機能の関連を解明することが「感性」(意識と情動の機能)の理解につながるとともに潜在認知能力を引き出す鍵を与えるという視点のもと、脳の潜在的な認知機能と情報処理機能の計測法の開発を行い、「感性的判断」「意志決定」の神経機構のより深い理解を目指す。さらには、教育、医療、アートなどへの応用展開を図る。
 本研究領域において、認知科学の立場から、「意識」「情動」に関する問題を定量的に研究する基盤の創出が期待される。これにより本研究領域は戦略目標「教育における課題を踏まえた、人の生涯に亘る学習メカニズムの脳科学等による解明」に資するものと期待される。
 下條信輔氏は本研究領域に関連する認知・発達等の先導的な研究を行ってきており、研究総括として相応しいと認められる。
4. 研究領域「核内複合体」は、核内に存在する巨大タンパク複合体群が、選択的なDNAの構造調節や機能制御等の中心的な役割を演じているという認識のもと、各種細胞内シグナルに呼応する核内巨大複合体群の同定・性状の解析を行い、細胞核内での遺伝情報管理ネットワークの全貌解明を目指す。具体的には核内巨大複合体群の精製・同定、巨大複合体群とDNA結合性転写制御因子群との相互作用の解明、遺伝子欠損マウスを用いた核内巨大複合体の高次機能解明を行う。
 本研究領域は、SNPsに代表される個人遺伝情報の発現機構の解明への貢献が期待される。これにより本研究領域は戦略目標「個人の遺伝情報に基づく副作用のないテーラーメイド医療実現のためのゲノム情報活用基盤技術の確立」に資するものと期待される。
 加藤茂明氏は本研究領域に関連する転写調節の分子機構に関した先導的な研究を行ってきており、研究総括として相応しいと認められる。
評価者
  科学技術振興審議会 基礎研究部会
部会長竹内 伸
委員石井 紫郎、岩渕 雅樹、大泊 巌、小柳 義夫、郷 通子
榊 佳之、鈴木 紘一、東倉 洋一、中西 準子、吉村 進
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This page updated on September 30, 2004

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