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資料1

研究総括および研究領域

1.研究総括

dr.kawahara

川原 圭博 (カワハラ ヨシヒロ) 38歳
(東京大学 大学院情報理工学系研究科 准教授)

<略歴>

平成12年 東京大学 工学部電子情報工学科 卒業
平成14年 東京大学 大学院工学系研究科 修士課程修了
平成17年 東京大学 大学院情報理工学系研究科 博士課程修了、博士(情報理工学)
平成17年 東京大学 大学院情報理工学系研究科 助手(のちに助教)
平成22年 東京大学 大学院情報理工学系研究科 講師
平成25年 東京大学 大学院情報理工学系研究科 准教授(現職)

この間

平成16年〜平成17年 日本学術振興会 21世紀COEプログラム 特別研究員
平成23年〜平成24年 ジョージア工科大学 Visiting Scholar(JSPS 特別研究員)兼任
平成24年 マサチューセッツ工科大学 メディアラボ Visiting Assistant Professor 兼任
平成26年〜現在 科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 さきがけ研究者
「オーダーメイド型センサネットの低コスト開発を促進する基盤技術の創成」

<受賞>

平成22年 電子情報通信学会 学術奨励賞
平成25年 ACM Ubicomp 2013, Best paper award
平成26年 JAFOE Best presentation award
平成26年 ACM Ubicomp 2014, Best paper nominee award

2.研究領域名

万有情報網

3.戦略目標

分野を超えたビッグデータ利活用により新たな知識や洞察を得るための革新的な情報技術及びそれらを支える数理的手法の創出・高度化・体系化

研究領域「万有情報網」の概要

各種デバイスの小型化と低価格化、無線通信技術の発達、さらには計算機速度の向上やデータ解析技術の進展により、近年爆発的に増加しているビッグデータを解析し、社会に新たな付加価値を提供することへのニーズが高まっています。しかし、こうしたビッグデータを取得するためのセンサーネットワークや、モノのインターネット(IoT)の基盤技術には、コスト面・運用面での問題や、IoT機器への効果的な給電方法の確立など、いまだに多くの課題が存在します。

本研究領域では、今後1兆個のセンサーが普及するとされている世の中で、センサーネットワークやIoT機器がより自律的で能動的な人工物として作用し、自然物と共生して新しい価値を生むための万有情報網の構築を目指します。これには高度な情報網の構築に加えて、情報取得装置の材料や運用に必要なエネルギーを含めた全体的な物質網の設計が重要になります。

具体的には、物理的素材の特性とデジタル技術をかけ合わせ、薄い、柔らかい、形状や色が変化するなどの特徴を持つセンサーやロボット、ウェアラブル機器などのスマートなIoT機器を、3Dプリンターなどを用いて低コストで迅速に作ることを可能とするためのファブリケーション技術の研究開発を行います。また、現在自律性に欠けるIoT機器のサステイナブルな動作の実現のために、エネルギーハーベスティング(環境発電)や無線給電を開発し、エネルギーの循環を考慮した真の自律システムアーキテクチャの確立を目指します。さらに、これらの技術を通して物質系におけるモノとモノ、あるいはモノと人との新たなインタラクションに関する研究を推進します。

本研究により、これまで情報取得が難しかった万物の情報取得を容易にし、屋内外の環境モニタリングやウェアラブルモニタリングシステム、インタラクティブなディスプレイ、探査を行う多数の小型ロボットが協調して自律的に動作するシステムの開発ツールなど、私たちの生活を豊かにし、新たな産業を生み出す基盤の創成が期待されます。

1.研究総括

dr.nomura

野村 暢彦 (ノムラ ノブヒコ) 49歳
(筑波大学 生命環境系 教授)

<略歴>

昭和63年広島大学 工学部第三類 卒業
平成 2年広島大学 大学院工学研究科 修士課程修了
平成 7年広島大学 大学院工学研究科 博士課程修了、博士(工学)
平成 8年筑波大学 環境科学研究科 準研究員
平成 9年筑波大学 応用生物化学系 助手
平成11年筑波大学 応用生物化学系 講師
平成16年筑波大学 生命環境系 准教授
平成25年筑波大学 生命環境系 教授(現職)

<受賞>

平成16年日本微生物生態学会論文賞
平成17年日本生物工学会斎藤賞(奨励賞)
平成23年日本微生物生態学会論文賞

2.研究領域名

集団微生物制御

3.戦略目標

生体制御の機能解明に資する統合1細胞解析基盤技術の創出

研究領域「集団微生物制御」の概要

近年、多様な微生物が集団を形成し、相互作用を及ぼすことで、集団としてのさまざまな機能を発揮することが明らかになりつつあります。このような微生物の集団は、水処理における活性汚泥、バイオレメディエーション(生物を利用した環境浄化)や腸内細菌群など環境中のさまざまな場面で私たちの生活と密接に関与しており、持続可能な社会を実現するために、革新的な集団微生物の制御技術の創出が期待されています。

本研究領域では、多様な微生物の集団における1細胞の振る舞いや微生物間相互作用の解明に取り組みます。また、微生物の集団とその周りの環境や他の生物との相互作用にも焦点を当てることで、微生物が集団を形成することでどのように環境に適応するかを明らかにし、未解明な点が多い微生物の集団の全貌解明を目指します。

具体的には、1細胞分析技術やイメージング技術の開発により、微生物集団とその内部の微生物1細胞の動態や代謝を非破壊で時間的・空間的に解析し、かつ生化学的に分析することで、集団内部での相互作用や不均一性のメカニズムを明らかにします。また、細胞から放たれる細胞外因子である細胞外粒子(Membrane Vesicles)を介した相互作用に関しても研究を展開し、糸状菌、細菌などの多様な微生物が織り成す生態の理解に挑みます。さらに情報科学の技術を導入して、集団の環境適応過程や変異体の出現パターンの予測を目的としたシミュレーション構築も図り、集団微生物を制御するための基盤技術の確立を目指します。

本研究領域により、微生物が集団を形成して多細胞生物のように振る舞うことでさまざまな機能を創発することが示されるなど、多様な環境下の集団微生物に対する先駆的な知見がもたらされます。また、集団微生物の理解や新たな解析手法の開発が進めば、これまでにない微生物制御技術が創出され、例えば多様な微生物集団内の特定の機能を持つ集団のみを制御することが可能となり、環境分野や食品分野などの産業にも革新的なインパクトを与えることが期待されます。