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別紙

内閣府革新的研究開発推進プログラム(PM山川)、Healthcare Brainチャレンジ募集開始

〜Bitbrain構想の一環として、脳を健康にする自分にあった製品やサービスを広く発掘〜

内閣府ImPACT山川プログラム「脳情報の可視化と制御による活力溢れる生活の実現」では、脳情報を誰もが自由に安全に低コストで利活用できることを目指した『Bitbrain構想』を推進する活動として、Healthcare Brainチャレンジの募集を本日開始いたしました。
(公募サイト:https://impact.jst.go.jp/koubo/yamakawa/challenge2015

Healthcare Brainチャレンジは、非医療分野の製品やサービスの参加を幅広く募集し、脳の健康促進の観点から有望なアイデアについて、実際に脳情報の計測を行い、100人規模の解析結果を通じて、脳の健康に与える影響を科学的に評価いたします。これにより、脳の健康を促進するような新たな製品を発掘したり、自分の脳の健康状態にあったサービスを見つけ出したりする試みです。本チャレンジによって、例えば、ダイエット効果を目的とした運動が認知機能を向上させたり、睡眠環境に配慮した住宅リフォームが社会性を向上させたりする可能性が発見され、脳の健康という観点から製品やサービスの価値の再定義がなされると考えています。

今年度は、理化学研究所、京都大学、東京大学の協力を得て、MRIによる脳計測を通じて、脳の構造から萎縮度などを可視化するVBM(Voxel−based morphometry)、脳の神経線維の太さを定量化する拡散MRI、安静時の脳活動をパターン化する安静時機能的MRIといった脳情報の見える化を行い、それらによる多面的な評価を行います。これら最先端の研究現場で使われてきた手法をオープンに利用頂く初めての試みとなっております。すでに脳科学に取り組んでいる企業だけでなく、これから取り組もうとする企業や団体等のご応募をお待ちしております。8月末の募集締め切り後、有識者が審査し、入選提案をホームページにて公表します。入選提案の一部は、実証活動及び脳情報計測を経た上で、来年2月にはプログラムの公開シンポジウムにて結果をアワードという形で発表する予定です。

■ Bitbrain構想の全体概要

Bitbrain構想では、脳(Brain)の解剖学的な構造や活動パターンなどの生体情報をデジタル化(Bit化)することにより、現在の医療分野以外でも脳情報を誰もが自由に安全に低コストで活用できることを目指しております。この民生領域での取り組みを通じて、個人個人が心の豊かさを享受できる社会を実現します。これらは、欧米で進む医療・創薬分野の脳科学研究や外環境のスマート化を目標としたAIやIoTなどの先端研究開発とは異なり、日本独自の脳ドックサービスや日本が異業種で取り組んできた脳科学の民生応用を発展させることで実現できると考えております。実現に向けて、ロールモデルとなる脳情報活用のプロトタイプの公開、新たな価値を発見するチャレンジカップ及び世界展開のための脳情報の国際標準化を進めます。結果、脳情報のイノベーションエコシステムの構築を進め、心を豊かにする製品サービスを世界に発信する日本発の脳情報産業の創出を目標としています。

■ 背景

日本は、これまで製造業を中心としたイノベーションから世界の中でも比類ない豊かさを享受してきました。しかし、近年は人口減少による先行きの見えない経済状況への不安やいつ起こるとわからない未曾有の災害などにより、心の豊かさが得られない状況にあります。

日本の先駆的な企業は、既に心の豊かさを実現するための製品やサービスの研究開発に脳科学の活用を始めています。しかしながら、脳科学の活用には専門的な知識と莫大な研究費がかかることから、必ずしも十分な脳情報の利活用に至っていないのが現状です。一方、日本には、脳ドックと呼ばれる世界に類を見ない脳の検診サービスが存在しており、健康な方々の膨大な脳情報が扱われていますが、その情報は一度検診に使われるだけでそれ以降は有効利用されず、埋没された状態で偏在しています。これら日本の先進性とその中での課題を踏まえ、脳情報を誰もが自由・安全・低コストに多様な民生領域で活用できる『Bitbrain構想』を始動するに至りました。

■ Bitbrain構想で進める3つの取り組み

ImPACT山川プログラムでは、Bitbrain構想の実現に向けて、3つの取り組みを推進します。1つ目の取り組みは、ロールモデルとなる脳情報活用のプロトタイプの公開です。これにより、これまで脳科学を専門的に扱ってこなかった企業にとっても研究開発の新しい切り口が得られ、新製品や新サービスにつながると考えております。2つ目は、新たな価値を発見するチャレンジカップです。様々な製品やサービスを脳情報に基づいて再評価することで、これまで気が付かなかった価値を新たに発見し、共有します。3つ目は、脳情報活用の国際展開のための標準化です。活動の始めの段階から世界展開を見据えて、日本発の脳情報産業の創出を実現します。これらの取り組みを進めるにあたっては、日本脳ドック学会や応用脳科学コンソーシアムとの連携に加え、オープンな活動を実践していきます。

■ ロールモデルとなるプロトタイプの公開

近年、モノの豊かさをさらに追及したものとして、スマートフォンやスマートカー、スマートホーム、スマートシティと様々な取り組みがなされています。これらは世界的なトレンドであり、AIやIoTなど新しいコンセプトと合わせて急速な取り組みが進んでいます。しかし、脳科学の知見から、これら高度情報化(スマート化)の取り組みは、便利な環境を提供する反面、脳を使わなくなったり、脳への過度な負荷をもたらしたりする可能性が報告されつつあります。そこで、ImPACT山川プログラムでは、環境をスマートにするだけでなく、心の豊かさも加味した製品やサービス(通称、Smart Brain X)の商品化を目指しています。すでに指定研究機関が進める9グループと、新たに公募で加わった13グループの合計22のグループ、51の研究開発組織が研究開発を開始しており、本日、HP上(http://www.jst.go.jp/impact/program11.html)で、各グループの取り組み概要を発表いたしました。その中には、便利なだけでなく脳の健康を保つことを目指したSmart Brain Deviceのプロトタイプとなる注意力や記憶力を高める携帯型ニューロフィードバックや、使い勝手がよいだけでなく脳をより良くする事も可能となるSmart Brain Spaceのプロトタイプとなるおもてなしや共感性を高める環境デザインやロボティクス制御などがあります。今後、来年2月に予定しているシンポジウムにおいて、各グループからプロトタイプの発表を予定しております。

【3技術領域・3サービスにまたがる22グループの研究開発取り組み】

■ 新たな価値を発見するチャレンジカップ

一方で、多くの企業の製品やサービスの中には、脳情報を直接使っておらず、意識もしていないものの、心を豊かにする可能性を秘めた製品やサービスが既に多数存在していると考えています。そこでImPACT山川プログラムでは、様々な製品やサービスを、脳情報を用いた指標から科学的に再評価するxBrainチャレンジを企画いたしました。今年度は、前述の通り、脳の健康という視点からHealthcare Brainチャレンジを開催いたしますが、今後、教育やブレインマシンインターフェースなど新たなテーマでのxBrainチャレンジを開催していきます。これらの取り組みは、欧米での脳科学研究が医療や創薬分野を中心とした取り組みとは異なるアプローチであり、プロトタイプ開発と合わせて、多様な脳情報の民生応用の展開につながり、日本の世界的な競争優位をもたらすと考えております。

【脳情報に基づく製品・サービスの再評価をオープンに実施するxBrainチャレンジ】

■ 世界展開のための国際標準化

前述の2つの取り組みを基盤として、脳情報の自由で安全な流通を後押しし世界展開を可能とするため、インターネット商用化の黎明期に行われたW3C(World Wide Web Consortium)の取り組みを参考に、国際標準化活動を開始いたしました。すでに、脳科学研究と事業を橋渡しする産学連携の標準化コンソーシアムB3C(Brain Business Bridging Consortium)の準備研究会を設置し、第一回準備研究会には約30社の民間企業に参加していただきました。B3C準備研究会での議論を踏まえ、国際標準化団体ITUがWHOと進めるeHealthでの標準化を進めるために、本日、日本からITUへ標準化提案を進める一般社団法人情報通信技術委員会(TTC)での専門家会議にてキックオフをさせていただきました(http://www.ttc.or.jp/j/info/topics/e-health20150715/)。今後、10月に開催されるITUでの会議(開催地:スイス ジュネーブ)へ寄与文書の提出を目指し、オープンな議論を進める予定です。その後の取り組みとしては、xBrainチャレンジの世界展開や欧米の脳科学研究やAI、IoTなどの先端研究との国際連携も視野に入れています。B3Cは、プロトタイプ開発やxBrainチャレンジを支援するとともに、正式な活動団体として組織化していき、国内外の新たなメンバーの募集も実施していきます。

【標準化に向けてのImPACT山川プログラム主催の準備研究会にご参加いただいている企業様】