JST(理事長 中村 道治)は、ネパール政府機関注1)と協力して、平成27年4月25日にネパールで発生したマグニチュード7.8の大地震(以下「ネパール地震」という)に関連した緊急を要する研究・調査を支援する「国際緊急共同研究・調査支援プログラム(J-RAPID)」として、5件の研究・調査課題を決定しました(別紙)。今後さらに5件程度を採択する予定であり、引き続き応募課題の審査を行っています。
JSTはネパール地震発生直後からJ-RAPIDの発動を検討し、ネパール政府機関と調整を行い、平成27年6月5日に正式に課題の募集を開始しました。6月18日の締め切りまでに32件の応募がありました。いち早く支援を開始するため、受理した応募課題は締め切りを待たずに順次選考を行ってきました。支援期間は半年~1年で、1課題あたり300~500万円程度を支援します。
J-RAPIDは世界的に稀有な災害で、社会的・経済的影響が大きく、緊急の取り組みが必要とJSTが判断した場合に適用し、迅速に初動的な研究・調査を支援することにより、本格研究・調査への橋渡しとしての役割を担うものです。海外の研究資金配分機関や研究機関と共同し、日本側と相手国側の研究者による国際共同研究・調査を支援するプログラムであり、主として以下のいずれかの緊急性がある研究・調査を支援対象とします。
- 時間の経過とともに消失する恐れがあり、将来取得することが難しくなるなど、データ取得に関する緊急性(例えば、津波被害の痕跡調査、汚染発生直後の初期分布の計測)
- 問題解決の緊急性(例えば、地震による被災構造物の脆弱性評価、緊急補強法の検討のように対策に緊急を要する場合)
J-RAPIDではこれまで、平成23年に発生した東日本大震災、タイ大洪水、平成25年に発生したフィリピン台風30号(Yolanda)に対して支援を実施し、それぞれ、33件、2件、11件の研究調査を支援しました。平成27年4月に支援を終了したフィリピン台風30号関連J-RAPIDでは、最終報告会をマニラで開催し、フィリピンの政府関連機関、研究機関、報道機関などに研究・調査結果を発表し、減災やリスク管理に資する知見や情報の交換の促進を図りました注2)。このように実施されたJ-RAPID課題はそれぞれ、観測データの提供や災害復旧対策の提言、研究ネットワークの形成など、本格研究・調査への橋渡し、災害復興、防災対策に貢献しています。
JSTは今後も必要に応じ迅速にJ-RAPIDを発動し、科学技術的に貴重な情報の確保、災害からの速やかな復旧、将来の防災力の向上などに資する研究・調査活動を支援します。