(資料5)

戦略目標


■ 戦略目標:教育における課題を踏まえた、人の生涯に亘る学習メカニズムの脳科学等による解明
  (平成15年度設定)
1.名称
教育における課題を踏まえた、人の生涯に亘る学習メカニズムの脳科学等による解明

2.具体的な達成目標
 教育における課題に対して、脳科学をはじめ関係する諸科学による貢献を目指すという観点からの対話・交流を進めつつ、以下の項目の中で特に社会的要請の強いものを対象に研究を実施する。
 なお、ここで言う「教育」とは、人の胎児期を含む生涯を通じた教育、即ち、乳幼児教育、小・中・高等学校教育、高等教育、高齢者教育、また、職業人を対象とした新たなスキル習得等のための能力開発や再教育、さらにはリハビリテーション、語学教育、芸術教育、体育等を包含した広義の概念として取り扱うものである。

胎児期・乳児期・幼児期における脳機能発達の解明。特に環境が及ぼす影響、シナプス過剰形成と刈り込み、可塑性と臨界期・感受期、機能統合、言語発達、髄鞘化と機能発達の関係等の解明
児童期・青年期における、教育・学習の方法、記憶や注意のメカニズム、学習の意欲や動機付け、創造性等に関する脳機能、共感性、学習・行動の障害と脳機能の発達の関係等の解明
成人期における、能力開発・再教育の方法と脳機能との発達の関係の解明、及びストレスが脳機能に与える影響の解明
高齢期における、健やかな脳機能の保持及び損傷を受けた脳機能の回復メカニズムの解明
上記のための研究・計測方法論の開発

 なお、将来的には、これらの研究の成果を踏まえた脳機能と学習メカニズムの関係に関する知見の蓄積により、育児や学習指導に関する重要な考え方を確立するとともに、教育における課題を踏まえつつ、成果を育児や教育の現場をはじめとする様々な場に提供することを目指す。

3.目標設定の背景及び社会経済上の要請
 ITをはじめとする科学技術の加速度的な発達による生活様式の変化やコンピュータ上でのバーチャル体験の普及、少子高齢化や食生活の変化等、現代社会における生活環境や社会環境は大きく変容してきている。このような環境の急激な変化を踏まえ、社会経済の発展基盤である人の知性と感性が健やかに育まれ、人が本来有する能力と個性が適切に発揮できるように、新たな視点からの研究が必要である。

 また、これまでは、例えば言語獲得の臨界期・感受期に関連した教育・学習の時期に関する課題や、学習・行動障害のような教育の現場において生じている問題に対して、児童心理学や教育心理学の知見及び教育現場において蓄積された知見を活かすことによる取組みがなされてきた。一方で脳科学からの知見の蓄積が進んできていることから、その蓄積に基づいて、教育関係者が長い経験によって得た暗黙知を顕在知とすることにより、育児や学習指導に関する重要な考え方が得られると強く期待されている。

 このように新たな知識が急速に蓄積されつつある脳に関する研究を、認知科学、心理学、社会学、医学及び教育に関する研究と架橋・融合し、従来の脳科学や教育学とも異なる新分野の研究として実施することにより、将来に向けて、教育の改善に繋がる可能性が考えられている。

4.目標設定の科学的裏付け
 脳の発生初期の神経細胞分化や回路形成メカニズムに関する研究は、分子生物学的手法が非常に有効なこともあり、我が国でもこの領域の研究は著しく進展し、既に多くの知見が得られている。また、近年、人を対象とした脳機能の非侵襲計測が可能となり、分子生物学、医学、行動学、心理学、工学等を基盤とした脳に関する研究の進展と相まって、脳科学は飛躍的な発展を遂げており、教育学、社会学、医学、言語学等の広範な分野に亘る研究を架橋・融合した研究を進めることが可能な環境が整備されつつある。

 また、OECD(経済協力開発機構)のCERI(教育研究革新センター)においても、1999年より「学習科学と脳研究(Learning sciences and brain research)」に関するプロジェクトを開始しており、2002年4月から着手した第II期プロジェクトでは、幅広い分野の専門家により、no1脳の発達と生涯に亘る学習(日本による調整)、no2脳の発達と算術能力(英国による調整)、no3脳の発達と読み書き能力(米国による調整)に関する研究ネットワークが構築されている。

5.重点研究期間
 平成15年度から平成17年度までに研究体制を順次整備しつつ、1研究課題につき概ね5年の研究を実施する。(なお、優れた研究成果を挙げている研究課題については、厳正な評価を実施した上で、研究期間の延長を可能とする。)

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This page updated on September 21, 2004

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