(資料5)

戦略目標


■ 戦略目標:メディア芸術の創造の高度化を支える先進的科学技術の創出
  (平成16年度設定)
1.名称
メディア芸術の創造の高度化を支える先進的科学技術の創出

2.具体的な達成目標
 独創的なメディア芸術を創造するためにメディア芸術制作者に先進的な表現手法等を提供するとともに広く国民全般が自己実現に生かすために容易にメディア芸術を制作し楽しむことを可能とするための先進的科学技術を創出する。

3.目標設定の背景及び社会経済上の要請
 心豊かな社会の実現のためには、経済のみならず文化芸術の振興が重要な課題であり、その創造を推進するための科学技術を推進していく必要がある。中でも、映画、アニメーション、CGアート※1、ゲームソフトなどコンピュータ等の電子機器等を駆使したメディア芸術は、芸術と科学技術研究との融合領域であり、メディア芸術作品の質を高めるためには、芸術的な感性と共に作品の創造に必要とされる科学技術の研究開発が必要である。これらのメディア芸術の創造を支援するためには、映像技術、画像処理技術、人工現実感技術、感性工学技術などの先進科学技術個別の研究開発だけではなく、総合的に研究開発する必要がある。また、国民全般がメディア芸術制作に親しむためには、容易に使いこなすことを可能とする技術に仕上げる必要がある。
 メディア芸術については、文化芸術としての重要性はもとより産業的にも重要となっており、現在、産業規模として11兆円、雇用創出は137万人であり、さらに6.5%と高い成長率が予測されている。また、広く我が国の魅力を伝え国としての文化的価値を高める観点からもその重要性が注目されている。
 平成13年末に公布された文化芸術振興基本法において、メディア芸術などの文化芸術活動を科学技術の活用も含めて、国を挙げて振興するための基本的な方向が示されている。本年2月科学技術・学術審議会資源調査分科会報告(「文化資源の保存、活用及び創造を支える科学技術の振興」)がまとめられ、メディア芸術創造のための新しい科学技術の研究開発を推進していくことが提言されている。
 また、メディア芸術を中心とするコンテンツ(情報内容)の知的財産としての価値及び日本文化の発信手段としての価値が着目され、首相直轄の知的財産戦略本部コンテンツビジネス専門調査会において、先端科学技術研究開発を含め、その総合的な推進のための方策に向けて審議が進められるとともに、産業界においても昨年11月日本経済団体連合会から「エンターテインメント・コンテンツ産業の振興に向けて」とする意見書が出され、その重要性が訴えられている。さらに、これらを背景に、今次国会において「コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律(仮称)」を制定すべく議員立法の準備が進められているが、同法案における基本的施策の大きな柱として、先端的な技術に関する研究開発の推進が掲げられようとしており、今後、国としての戦略的な対応が必要とされている。

4.目標設定の科学的裏付け
映像作成のための画像処理技術に関しては、モーションキャプチャー※2を活用した即時映像合成などの制作の効率化に資するための研究や3次元デジタイザー(入力装置)データ分析に基づく「本物らしさ」の研究、3次元グラフィクス(映像・画像)で必要とされる高品質グラフィクス演算装置のためのアーキテクチャ(構成方式)、設計環境の研究が進みつつある。また、効率的にストレスなく高品質グラフィクス演算装置を利用するための研究も進みつつある。
新しい感覚表現技術に関しては、人工現実感研究が進んでいる。視覚や聴覚以外の感覚(触覚、力覚、味覚等)も表現することを可能とする研究や、現実空間と人工空間を重畳させる複合現実感の研究、特定の場所において特定の情報を提示する領域展示研究などが進展しつつある。
デジタル入力、編集、出力技術に関しては、3次元映像の撮影、編集のための研究や超高画質デジタル映像のための研究が進展しつつある。
人間の感性に関する研究に関しては、生理学、脳科学などの基盤をもとに感性を科学的に解明し、快適性に関する知的基盤を構築するための研究基盤が整いつつあり、また、安全性の観点から新しい表現手法の人体に対する影響についての研究も進展しつつある。
一方、これら各分野における研究開発は理工学系、医薬学系を中心に個別に進められてはいるが、それらの知見・技術を、文化系・芸術系研究者や制作者と協働してメディア芸術を支える基盤的技術として結実させ、文化的な価値を創造・普及する方向で研究開発を進めている事例は稀少である。そのため、既成の組織や従来の専門分野を越えて活躍する若手人材等の育成を図ることは重要である。
このような現状に鑑みれば、各分野に芽生えつつある新技術の芽を総合的な研究開発事業としてメディア芸術創造の基盤技術として育成していくことは、実現可能であるとともに、その意義は大きいと考えられる。

5.重点研究期間
 平成16年度から平成18年度までの3年間にわたり、新規研究課題の募集を実施する。研究期間は1研究課題につき概ね5年の研究を実施する。(なお、優れた研究成果を挙げている研究課題については、厳正な評価を実施した上で、研究期間の延長を可能とする。)

 ※1 CGアート:コンピュータを利用し制作した映像芸術作品
 ※2 モーションキャプチャ:動作をデジタルデータに変換し、コンピュータに取り込むこと

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This page updated on September 21, 2004

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