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別紙4

平成27年度 採択研究課題の概要

※研究課題の並びは、研究代表者名の五十音順です。また、研究課題名は採択時のものであり、相手国関係機関との実務協議などの結果、変わることがあります。

<環境・エネルギー分野>

研究領域「地球規模の環境課題の解決に資する研究」

研究課題名 ザンビアにおける鉛汚染のメカニズムの解明と健康・経済リスク評価手法および予防・修復技術の開発 研究期間 5年間
研究代表者
(所属機関・役職)
石塚 真由美
(北海道大学 大学院獣医学研究科 教授)
相手国ザンビア共和国 主要相手国
研究機関
ザンビア大学
研究課題の概要
本研究では、ザンビア共和国におけるカブウェの鉛亜鉛鉱床をモデル地域として、土壌や植物相の調査、家畜など動物の汚染調査や人における健康被害の調査・子供における疫学調査を行い、土壌から動植物・人への鉛の移行経路を明らかにし、鉛汚染被害発生のメカニズムを解明する。メカニズムの解明を通じ、鉛による健康や環境の被害に起因した経済的損失がどのような規模で起こっているのかを明らかにする。また、低所得地域でも実施可能なファイトリメディエーション(植物を用いた土壌の浄化法)などによる環境修復方法を開発し、その適応可能性を経済的観点から評価する。汚染調査やリスクアセスメント、オンデマンドの環境修復技術の確立の試行評価と同時に、恒常的な汚染モニタリングシステムの構築と、環境モニタリングや疫学調査、鉱山学、毒性学の各専門家の持続的育成を行うことで、今後の鉛汚染に直面する途上国における環境改善と健康保全に貢献する。
研究課題名 タイ国における統合的な気候変動適応戦略の共創推進に関する研究 研究期間 5年間
研究代表者
(所属機関・役職)
沖 大幹
(東京大学 生産技術研究所 教授)
相手国タイ王国 主要相手国
研究機関
カセサート大学
研究課題の概要
本研究は、気候変動に対する統合的な適応策に資する技術開発および適応戦略の手法開発を目的とする。水関連の主要分野(土砂災害、沿岸、淡水資源、農業農村など)での適応策に必要となる気候情報を特定し、人間活動の影響も考慮可能な全球気候モデルによる気象水文基盤情報に基づいた手法を提供する。また、気候変動への適応策のさまざまな選択肢について、タイ国における費用と便益を算定し、創出された各分野向けの気候情報を活用して適応策の実現可能性とその効果を評価する。これを踏まえ、政府、地方自治体、水事業体、水受益者、住民などの利害関係者間で適応策のあり方を検討し決定する「適応戦略の共創手法」を地域別、分野別に開発する。開発された手法のタイ国政府による利活用、気候変動に対する強靭かつ持続可能な解決策の特定、優良事例の実現、人材育成などを通じたタイ国における気候変動適応策の効果的な実施への貢献を目指す。
研究課題名 トンレサップ湖における環境保全基盤の構築 研究期間 5年間
研究代表者
(所属機関・役職)
吉村 千洋
(東京工業大学 大学院理工学研究科 准教授)
相手国カンボジア王国 主要相手国
研究機関
カンボジア工科大学
研究課題の概要
本研究は、環境悪化の著しいトンレサップ湖およびその周辺流域を対象として、水環境解析ツールを開発し、この地域の環境行政に貢献することを目的とする。研究の前半では、対象域における水文・水理、土砂・基礎水質、化学物質、病原微生物に関して調査を行い、収集される水環境情報に基づきそれぞれの動態を解明し、各水質項目のモデル化を進める。後半では、健康・生態リスク評価モデルを開発し、これら各項目のモデルを統合することで水環境解析ツールを構築する。これにより、水環境解析ツールを用いて各リスクを定量的に評価するとともに、環境保全に関するシナリオ解析を行うことで対象域における効果的な環境保全策を示す。また、トンレサップ環境センターの設立を関連行政機関と連携して行い、本解析ツールを搭載した機材により研究者や行政官を対象とした研修を行う。さらに、研修参加者が協働して対象水環境を長期的に保全する枠組みを構築できるよう支援することで、研究成果の社会実装を目指す。

研究領域「低炭素社会の実現に向けた高度エネルギーシステムに関する研究」

研究課題名 熱帯荒廃草原の植生回復によるバイオマスエネルギー生産と環境回復 研究期間 5年間
研究代表者
(所属機関・役職)
梅澤 俊明
(京都大学 生存圏研究所 教授)
相手国インドネシア共和国 主要相手国
研究機関
インドネシア科学院
研究課題の概要
本研究は、インドネシアを含む東南アジア諸国に広く存在する荒廃草原であるアランアラン草原の環境回復とバイオマス生産農地への転換、および得られたバイオマスをエネルギーおよび新規材料として利用するための基盤技術開発をインドネシアと共同で進めることを目的とする。具体的には、遺伝子解析に基づく土壌肥料学技術を用い、アランアラン草原における植物相の回復を図る。また、代謝工学技術を駆使し、アランアラン草原に移植することを目的としたバイオマス生産に適する高発熱型イネ科バイオマス植物を開発するとともに、環境調和型接着技術を駆使し、同植物を活用した新規木質材料を開発する。本研究成果に基づき、民間企業との連携による木質ペレット燃料生産および環境配慮型内装用木質ボード生産の社会実装に向けた展開を目指す。
研究課題名 水処理システムと湿式抽出法による藻類の高効率燃料化の融合と実用化 研究期間 5年間
研究代表者
(所属機関・役職)
神田 英輝
(名古屋大学 大学院工学研究科 助教)
相手国南アフリカ共和国 主要相手国
研究機関
ダーバン工科大学
研究課題の概要
本研究では、地球温暖化の原因である大気中の二酸化炭素を固定化するために、下水で微細藻を培養してバイオ燃料を生産する。藻類は一般に他の植物に比べて、単位面積あたりの二酸化炭素の固定速度が100 倍以上であり、培養の際には水中の窒素やリンを吸収する。これまで南アフリカ政府は、下水から微細藻を生育する技術開発を積極的に行ってきたが、現状の技術ではエネルギー収支がマイナスになることが原因で、バイオ燃料のコストが高くなることから、日本が開発した水処理技術と湿式バイオ燃料抽出技術を組み合わせ、微細藻からのバイオ燃料の高効率生産に挑戦する。また、この地球温暖化対策としての微細藻からのバイオ燃料生産は、アフリカなどにおける新たなビジネスモデルの可能性も有しており、本プロジェクトを通じた人材育成も積極的に行っていく。

<生物資源分野>

研究領域「生物資源の持続可能な生産・利用に資する研究」

研究課題名 エビデンスに基づく乾燥地生物資源シーズ開発による新産業育成研究 研究期間 5年間
研究代表者
(所属機関・役職)
礒田 博子
(筑波大学 北アフリカ研究センター長/生命環境系 教授)
相手国チュニジア共和国/ モロッコ王国 主要相手国
研究機関
チュニス国立農業研究所(チュニジア共和国)/ ハッサンII世農獣医大学(モロッコ王国)
研究課題の概要
本研究は、乾燥地環境に適応したユニークな生物資源の宝庫であるチュニジアとモロッコにおいて、オリーブ、塩生植物、アロマ薬用植物、アルガン、サボテンなどを対象に、健康機能成分の解析と食経験に基づく疫学、予防医学的研究を行う。また、民間企業の参画も得て、健康機能を持つ高付加価値食品や薬用化粧品素材の開発を進める。さらに、オリーブ産地・品種判別技術の開発、機能性成分の乳化・カプセル化による製品化技術研究、生態学的解析による最適栽培環境の特定、生産・消費分析による安定的生産基盤の構築を展開することにより、科学的根拠に基づく高付加価値食薬シーズ創出を統合的に実施する。これら一連の研究を通じ、多様な高付加価値食品や薬用化粧品素材開発を担う人材を育成し、将来的な両国での新産業育成と国際的輸出拠点形成の土台の形成に貢献する。
研究課題名 東アフリカの生物遺伝資源と分子遺伝学を利用した持続可能な蚕糸業の革新 研究期間 5年間
研究代表者
(所属機関・役職)
亀田 恒徳
(農業生物資源研究所 新機能素材研究開発ユニット ユニット長)
相手国ケニア共和国 主要相手国
研究機関
ケニア農業・畜産研究機構
研究課題の概要
本研究は、自然環境と農業生産条件に適合したクワの品種選抜とアフリカ在来カイコと日本の実用交雑種の交配から強健性と高品質繭生産性を備えたカイコの品種育成を行い、ケニアの養蚕業の復興を目指す。また、在来野蚕(絹糸昆虫)を探索し、新シルク素材としての利用を視野に、その遺伝資源評価を行う。具体的には、クワの保存系統と在来種を収集し特性評価して実用品種を選抜し、併せて栽培技術も確立する。また、これまで進めてきた全ゲノム解析や機能遺伝子情報などの研究成果をもとに、次世代シーケンサーなどの最新技術を利用した分子遺伝学的手法を用いる効率的な育種技術を駆使して、交配したカイコから優良品種を選抜する。これによってカイコの品種育成にかかる時間の迅速化が図られる。クワ優良品種と育成されたカイコを使ってケニアの養蚕業を復活させ、5年後には農家レベルでの生産性の向上を図る。同時に野蚕も含めたジーンバンクシステムの構築も行う。
研究課題名 大メコン圏における戦略作物、キャッサバの侵入病害虫対策に基づく持続的生産システムの開発と普及 研究期間 5年間
研究代表者
(所属機関・役職)
高須 啓志
(九州大学 大学院農学研究院 教授)
相手国ベトナム社会主義共和国/タイ王国/カンボジア王国 主要相手国
研究機関
農業遺伝学研究所(ベトナム)/ラヨーン畑作物研究センター(タイ)/農林水産省 農業総局(カンボジア)
研究課題の概要
本研究では、ベトナム、タイ、カンボジアにおいてキャッサバ病害虫管理技術の開発と普及による持続的キャッサバ生産を目指す。具体的には、まず、先端分子生物学的技術により侵入重要病害てんぐ巣病の病原体と未解明の媒介虫の特定および主要病害の検出・診断法の開発を行う。また、大メコン圏で蔓延中の吸汁性侵入害虫キャッサバコナカイガラムシの生物的防除を効率的に実施する。次に、各国において組織培養技術と病害虫管理技術を活用した病害虫フリー苗生産のための種苗管理体制を構築する。さらに、ベトナムとカンボジアでは、現地の篤農家やキャッサバ加工工場を通して、一般農家への病害虫フリー苗の販売、病害虫管理技術や既存の栽培技術の指導と普及を効率的に行う。この官−農家−民間連携により、官による苗生産の原資の確保、農家の生産性の向上、加工工場の安定的原材料の確保を図り、持続的Triple−win型の連携関係を構築する。
研究課題名 熱帯水産資源の持続可能な循環管理型生産システムの研究開発 研究期間 5年間
研究代表者
(所属機関・役職)
戸田 龍樹
(創価大学 理工学部 共生創造理工学科 教授)
相手国マレーシア 主要相手国
研究機関
マレーシア・プトラ大学 バイオサイエンス研究所
研究課題の概要
本研究は、生物多様性の高い熱帯地域に位置するマレーシアにおいて、高付加価値物質を生産可能な微細藻類の屋外大量培養技術の確立を目指し、現地で探索した有用藻類と成長促進作用を持つ天然物質を利用した新たな培養技術を研究開発する。具体的には、日本側/相手国研究機関によって共同開発された超低エネルギーで運用が可能な藻類リアクターをスケールアップし、開発された新規培養技術を組込むことにより、高温、強光環境の熱帯地域に適した、高付加価値藻類の低コスト屋外大量培養技術を開発する。また、水域環境汚染の原因となっている、水産養殖産業の養殖池汚泥を藻類の栄養塩源として利用することで、水域環境汚染が大幅に軽減される循環型生産システムを構築する。本研究によって、環境負荷の軽減と藻類生産による収益が同時に達成可能なシステムが構築され、熱帯域の途上国で急成長する水産養殖産業に広く利用されることにより、地域社会の貧困と環境問題の低減に貢献する。

<防災分野>

研究領域「開発途上国のニーズを踏まえた防災に関する研究」

研究課題名 メキシコ沿岸部の巨大地震・津波災害の軽減に向けた総合的研究 研究期間 5年間
研究代表者
(所属機関・役職)
伊藤 喜宏
(京都大学 防災研究所 准教授)
相手国メキシコ合衆国 主要相手国
研究機関
メキシコ国立自治大学
研究課題の概要
本研究は、沈み込み帯で生じる巨大地震・津波による災害リスクが世界で最も高い地域の1つであるメキシコの太平洋沿岸部にて、海底地震・地殻変動観測および海底の津波堆積物調査を実施し、海底下のプレート境界で発生する巨大地震と、境界がゆっくりとずれ動く「ゆっくり」地震の発生メカニズムの解明を行うものである。また、地震発生のポテンシャルを正確に評価し、同地域における確度の高い地震・津波シナリオの作成を行う。さらに得られたシナリオに基づき、地震・津波ハザードマップや津波避難誘導のための電子標識を新たに作成し、住民が安全かつ確実に津波から避難できるシステムの整備を行う。また、心理学および教育学的な視点から減災に向けた教育プログラムを現地の慣習などを調査・分析した上で新たに開発し、メキシコおよび周辺地域全体の地震・津波防災意識の向上と定着を目指す。
研究課題名 ネパールヒマラヤ巨大地震とその災害軽減の総合研究 研究期間 5年間
研究代表者
(所属機関・役職)
纐纈 一起
(東京大学 地震研究所 教授)
相手国ネパール連邦民主共和国 主要相手国
研究機関
産業省 鉱山地質局
研究課題の概要
本研究は、プレート衝突帯に位置することにより巨大地震の発生と山岳地形の形成という危険にさらされているネパールにて、ヒマラヤ前面における地震発生シナリオの作成、カトマンズ盆地の地下構造モデル構築や表層地質の影響評価などを行い、その巨大地震によるカトマンズ盆地のハザードを総合的に研究する。その研究成果を、JICA開発計画調査型技術協力「カトマンズ盆地における地震災害リスクアセスメントプロジェクト」による成果と連携することにより、ハイリスクエリアの危険度を可視化して、防災計画策定などの具体的対策に貢献する。地震早期警報システムや、地震学の高等教育、地震ハザードの初等中等教育を検討し、それらを通した研究成果の社会実装も行う。なお、2015年4月25日の大地震は、ヒマラヤ前面において発生したものではないものの、対象とする地域における被災の現実的な具体例であり、この震災からの復旧・復興に貢献するため、余震に対する早期警報システムの検討や、 地下構造モデル・表層地質情報の提供なども含めて研究を行う。
研究課題名 都市の急激な高密度化に伴う災害脆弱性を克服する技術開発と都市政策への戦略的展開プロジェクト 研究期間 5年間
研究代表者
(所属機関・役職)
中埜 良昭
(東京大学 生産技術研究所 教授)
相手国バングラデシュ人民共和国 主要相手国
研究機関
アジア太平洋大学
研究課題の概要
本研究は、バングラデシュ国首都ダッカの災害脆弱性を克服するための技術を開発し、その効率的な普及を通じてより安全な都市を築くための戦略を提案するものである。同国では地震などの外力が作用せずとも重力により崩壊するほど脆弱な建物もあり、大地震時には甚大な人的および物的被害が生じるばかりでなく、縫製品輸出など産業分野で日本とも関係が深く、日本の産業にも大打撃を与える。同国の建物の脆弱性は、その低い材料強度や変形能力などに起因しており、日本の耐震補強技術の適用ではその性能改善は困難である。本研究では、地震や重力などの自然外力に対する建物の強靭化のために同国の材料特性や施工技術を踏まえて新たな建物補強技術を開発するとともに、これを実装する建物の崩壊危険度診断の結果や地域の社会経済的特性の分析を踏まえて強靭な建物の計画的な配置を提言することにより、同国ダッカの災害レジリエンス向上を実現しようとするものである。