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別紙

知的財産特別貢献賞(第2回)受賞内容について

【受賞者】 細野 秀雄 東京工業大学
フロンティア研究機構 教授・同学元素戦略研究センター長
【受賞内容】 高精細ディスプレイに適した酸化物半導体

In−Ga−Zn−O(インジウム・ガリウム・亜鉛からなる酸化物)を用いた半導体薄膜トランジスタ(以下、IGZO−TFT)に関する技術は、1999年から細野教授がリーダーを務めた、JST 創造科学技術推進事業(ERATO)の「細野透明電子活性プロジェクト」から生まれた成果です。

液晶ディスプレイの駆動TFTに用いられる材料は従来アモルファスSi(シリコン)や多結晶Siが主流でしたが、ディスプレイの高精細化や低消費電力化、タッチパネルの高性能化を実現する新素材が求められていました。

In−Ga−Zn−O酸化物は1985年に君塚 昇 博士(当時 無機材質研究所)がホモロガス系酸化物として初めて合成に成功した物質ですが、細野教授は1995年に透明アモルファス酸化物半導体(TAOS)の設計指針を独自に提唱し、JSTのERATO、ERATO−SORSTのプロジェクトにおいてIn−Ga−Zn−Oを活性層に使った薄膜トランジスタ(TFT)を作製し、高い電子移動度、低いオフ・リーク電流特性という優れた特性を初めて明らかにしました。2003年に「Science」、2004年に「Nature」に相次いで発表した論文が契機となり、国内外の多くの企業がIn−Ga−Zn−Oに注目し、IGZO−TFTを用いた高解像度ディスプレイの実用化に向けて研究開発に着手し、現在既に数社で実用化されています。

IGZO−TFTは、高解像度・3次元・大画面のディスプレイのほか、スマートフォンやタブレット端末の新しいタイプの液晶として期待されているとともに、有機ELディスプレイへの適用も可能で、ディスプレイ分野の革新的技術として期待されています。

本技術に関する一連の発明は、JSTが保有する基本特許とともに東京工業大学や企業が保有する周辺特許などを含めた数十件の特許群から構成され、JSTが一括でライセンスを提供しています。

TFTにおける活性層が単結晶、多結晶、微結晶、アモルファスのいずれの薄膜においても特許化されており、この特許群には、ほかにも、In−Ga−Zn−O以外の材料系、デバイス構造、製造方法、応用素子、応用装置などの発明に関する特許も含まれています。

現在、国内外のディスプレイ企業およびターゲット材料企業にライセンスが行われており、なお複数企業とライセンス交渉中です。

このように細野教授の研究の成果は、ディスプレイ業界に一大センセーションを巻き起こしただけでなく、産業界への影響の大きさからも画期的な発明です。

(参考)知的財産特別貢献賞の受賞内容(第1回/平成23年9月)

受賞者 赤ア 勇 氏(名城大学 大学院理工学研究科 終身教授、名古屋大学 特別教授・名誉教授)
受賞内容 青色発光ダイオード(LED)および高性能青色レーザの開発