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資料1

研究総括および研究領域

<研究総括> dr.momose

百生 敦 (モモセ アツシ)

(東北大学 多元物質科学研究所 教授)

<研究領域>

研究領域名:量子ビーム位相イメージング

概要

安心・安全・健康への関心の高まりとともに、さまざまな物体をありのままの状態で検査できる非破壊検査技術やX線画像診断技術など、特に光学画像技術をベースとした「イメージング」は必要不可欠なものとなっています。また、新規の物質材料やデバイスの開発、あるいはそれらの機能理解を目指す基礎的学術分野においても、ナノ空間を三次元的に可視化するイメージングの重要性が高まっています。わが国の高度な「量子ビーム」の技術を活用すれば、これに応える革新的なイメージング技術を創出できます。

本研究領域では、従来の常識を超える新しいイメージング手法を開発するために、高エネルギー光子(X線)、中性子や電子などの量子ビームの波としての性質を利用して、量子ビームの物体を透過する際に生じる位相の変化(位相情報)を活用する、「位相イメージング」技術の飛躍的な展開を目指します。

具体的には、X線を用いた位相イメージングを中核に、透過格子などX線位相検出の鍵となる光学素子の研究開発を行うとともに、中性子線や電子線を用いた位相イメージングへの技術展開を図り、さまざまな量子ビームの位相情報を相補的に活用する高度なイメージングプラットフォームの構築を進めます。生体軟組織やソフトマターに有効なX線位相イメージングでは、動的手法および顕微手法へと展開します。また、中性子線を用いた位相イメージングによる磁性材料などの構造と磁気情報を撮影する方法などの探求や、強位相物体の電子線位相トモグラフィへの展開を図ります。さらに計算機・情報科学分野における最先端の画像解析技術なども導入し、位相イメージングの可能性を最大限に引き出すためのアプローチを追求します。

本研究領域により、量子ビームを使った各種位相イメージングを実現し、その相補的利活用を展開することで、先端素材や複合材料、デバイス、さらには実際に利用される製品に至るまでのマルチスケールで、これまで見えなかったものを可視化するイメージングプラットフォームが創出されます。多くの学術分野の発展に貢献するだけでなく、実用技術への橋渡しも視野に含め、社会に革新的なインパクトをもたらすことが期待されます。

量子ビーム位相イメージング研究の展開イメージ