科学技術振興機構報 第108号
平成16年9月6日
東京都千代田区四番町5−3
独立行政法人科学技術振興機構
電話(03)5214-8404(総務部広報室)
URL http://www.jst.go.jp

病原体成分認識によるインターフェロンα生合成誘導の
仕組みを解明

 独立行政法人 科学技術振興機構(理事長:沖村憲樹)の研究チームは、抗ウイルス活性を持つタンパク質インターフェロンαについて、その産生が誘導されるシグナル伝達経路を解明した。本研究成果は、ウイルス感染症の予防・治療技術の開発に大きく貢献するものと期待される。
 自然免疫系で、生体が細菌やウイルスなどの病原体の構成成分を特異的に認識する細胞膜受容体としてToll様受容体(TLR)ファミリーが知られているが、今回、TLR7, TLR8, TLR9を介してインターフェロンαの産生を誘導する新たなシグナル伝達経路を明らかにした。
 本研究成果は、戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATOタイプ)「審良(あきら)自然免疫プロジェクト」(研究総括:審良静男)が、大阪大学微生物病研究所等の協力で得たもので、9月8日付けの米国科学雑誌「ネイチャー・イムノロジー」オンライン版で発表される。
大阪大学微生物病研究所教授
 自然免疫系は、生体が細菌やウイルスといった病原体の侵入を感知し排除するシステムである。自然免疫系が活性化されると炎症性サイトカイン(注1)、T細胞活性化が誘導され、最終的に病原体に対する感染防御システムが成立する。この病原体認識に直接的な役割を果たしている細胞膜受容体としてToll様受容体(TLR)ファミリー(注2)が知られている。現在、10種を超えるTLRが同定されており、それぞれが認識する病原体の構成成分(注3)が明らかにされつつある。

 一方、各TLRは共通の免疫応答とともに、それぞれ異なった応答を誘導することも知られている。例えば一部のTLRは抗ウイルス活性をもつサイトカインであるI型インターフェロン(注4)の産生を誘導する。これまでに、TLR3,4,7,8,9を介してI型インターフェロンが誘導されることが明らかにされている。中でも、形質細胞様樹状細胞(注5)はインターフェロンα(T型インターフェロン)の産生能が非常に強いことが知られている。この細胞にはTLR7,8,9が存在しており、これらの受容体に結合する成分による刺激によりインターフェロンα産生が誘導される。一方、TLRファミリーはTIRドメイン(領域)を有するアダプター分子群(MyD88, TRIF, TIRAP, TRAM)(注6)と細胞内で特異的に結合し、下流へとシグナルを伝達する。TLR7,8,9を介したインターフェロンα産生にはMyD88依存的経路が必須であることがこれまで示されていたが、下流のシグナル伝達経路は不明であった。

 今回、MyD88依存的経路をさらに詳しく解析したところ、MyD88と特異的に結合する分子としてIRF7が得られた。IRF7はIRFファミリー(注7)に属する転写因子でありI型インターフェロン遺伝子発現誘導に関与することが示唆されている。IRF7をMyD88と共に細胞内に発現させるとIRF7のリン酸化が誘導されるとともに、核内のインターフェロンα遺伝子の相乗的な活性化が認められた。さらに、TLR9への刺激によりIRF7の核内移行が誘導されるが、MyD88欠損マウス由来の細胞ではIRF7の核内移行が認められなかった。
 また、IRF7はMyD88だけでなく、TRAF6(注8)とも結合することも明らかとなった。TRAF6はTRAFファミリーに属するアダプター分子でありMyD88の下流に位置すると考えられている。TRAF6をIRF7と共に発現させると、IRF7のリン酸化とともに核内のインターフェロンα遺伝子転写の活性化が認められた。また、TRAF6はユビキチンリガーゼ活性(注9)を持つことが示されているが、IRF7の活性化にはTRAF6のユビキチンリガーゼ活性が必要であることも明らかとなった。
 これらのことからTLR7,8,9を介するインターフェロンαの誘導にはMyD88-TRAF6-IRF7複合体形成が必須であることが示された。インターフェロンαは抗ウイルス活性をもつサイトカインであることから、本研究成果はウイルス感染症の予防・治療技術の開発に大きく貢献することが期待される。

【論文タイトル】
Interferon-α induction through Toll-like receptors involves a direct interaction of IRF7 with MyD88 and TRAF6
(Toll様受容体を介したインターフェロンα産生はIRF7とMyD88, TRAF6の直接的な結合により誘導される)
doi :10.1038/ni1118

図 自然免疫系でインターフェロンα産生を誘導するシグナル伝達経路
【語句説明】

【本件問い合わせ先】
審良 静男(あきら しずお)
 独立行政法人 科学技術振興機構
 審良自然免疫プロジェクト 研究総括
 大阪大学微生物病研究所教授
 〒565-0871 大阪府吹田市山田丘3-1
 Tel: 06-6879-8303 Fax: 06-6879-8305
古賀 明嗣(こが あきつぐ)
 独立行政法人科学技術振興機構
 戦略的創造事業本部 特別プロジェクト推進室
 〒332-0012 埼玉県川口市本町4-1-8
 Tel:048-226-5623 Fax:048-226-5703

■ 戻る ■


This page updated on November 6, 2015

Copyright©2004 Japan Science and Technology Agency.