JSTトッププレス一覧科学技術振興機構報 第1076号 > 別紙1
別紙1

戦略的創造研究推進事業 ACCEL
平成26年度新規課題 概要

【研究開発課題1】

課題名: 「PSD法によるフレキシブル窒化物半導体デバイスの開発」
研究代表者: 藤岡 洋(東京大学 教授)

CRESTでは、PSD注1)とよばれるスパッタ法を基礎とする独自の薄膜成長技術を開発し、高品質窒化物半導体(GaNなど13族元素と窒素の化合物)の低温形成を実現するとともに、この手法を用いて、従来技術では実現できなかった良好な結晶性を持つInGaN多層膜構造を形成し、赤、青、緑の三原色LEDの試作に成功しました。

ACCELではこれまでの成果をベースに、安価なスパッタ法で良質な薄膜の低温形成が可能という本技術の特徴を生かして、低コスト/フレキシブル基板上へ高品質GaN系結晶を実現し、GaN系LEDと駆動用トランジスターによるディスプレー動作実証を行い電子・光集積化デバイスを目指します。

注1) PSD(Pulsed Sputtering Deposition)
原料を間欠的に供給することによって、低温でも品質の高い結晶を得るスパッタリング成長法の一種。

<目指すビジョンの図>

図1

【研究開発課題2】

課題名: 「ダイヤモンド電極の物質科学と応用展開」
研究代表者: 栄長 泰明(慶應義塾大学 教授)

CRESTでは、レアメタルフリーの導電性ダイヤモンドを用いて、電気化学電極として基礎的な物性や機能を明らかにし、センサーだけでなく有機合成やCOを用いた有用物質の創製などさまざまな展開先への有用性を示してきました。

ACCELでは、ダイヤモンド電極の設計指針を確立するとともに、ダイヤモンド電極の性能を最大限生かしたアプリケーションの探索、市場・競合調査を早期より実施し、応用用途に対する有効性の実証ならびに最適なシステム構築の実現を目指します。

研究開発の推進にあたっては、ユーザーからのニーズを積極的に取り込み、ダイヤモンド電極がさまざまな応用展開に資する基盤技術として構築されることを目指します。

<目指すビジョンの図>

図2

【研究開発課題3】

課題名: 「超活性固定化触媒開発に立脚した基幹化学プロセスの徹底効率化」
研究代表者: 魚住 泰広(自然科学研究機構 分子科学研究所 教授)

CRESTなどでは、水/有機溶媒の両方になじむ両親媒性高分子に、配位子やPd(パラジウム)などの遷移金属を結合させ、水中で高い触媒機能を示す高活性固定化触媒を多数開発し、多様な有機分子変換工程を実現してきました。

ACCELでは、これら触媒が水中で高活性で反応するという特長を活用して、稀少貴金属触媒使用量をさらに削減したppm(100万分の1)〜ppb(10億分の1)レベルでの反応を実現する触媒としての研究を進め、固定化の利点(触媒分離・回収再利用が容易)を生かした高純度生成物供給と触媒循環を確立します。それにより、触媒ならびに触媒カートリッジの世界的市販を達成し、化学プロセス研究のパラダイムシフトを先導することを目指します。また、環境調和性、省資源性、元素戦略性に富む精密化学プロセス触媒の開拓を目指します。

<目指すビジョンの図>

図3

【研究開発課題4】

課題名: 「共生ネットワークの分子基盤とその応用展開」
研究代表者: 川口 正代司(自然科学研究機構 基礎生物学研究所 教授)

CRESTでは、菌根菌注1) や根粒菌形成に共通なシグナル伝達経路に関わる宿主因子を同定し、植物から菌根菌への共生シグナルがストリゴラクトン注2)であることを解明するなど、菌根共生系および根粒共生系を支える分子基盤の知見を得ました。

ACCELでは、CRESTにより創出された知見とフィールドにおける栽培試験を融和することにより、菌根菌のゲノムを解読し絶対共生の分子基盤を解明するとともに、全国各地のフィールドにおいて菌根菌接種試験を行い、リン肥料注3)節減の効果を評価します。それに基づき、菌根菌利用診断技術を開発することで、世界的な課題となっているリン肥料節減のために最適な菌根菌利用技術の開発を目指します。

注1)菌根菌
植物の根に共生する菌類。植物から光合成産物(糖分など)を得る一方で、土壌中へ伸長した菌糸により養分(リン酸など)や水分を吸収し、それらを植物へ供給する。さらに病害抵抗性を高めるなどの働きをする。植物と共生することなしには、生育できない絶対共生菌である。
注2)ストリゴラクトン
植物の成長を制御する化学物質(植物ホルモン)の一種で、栄養に応答して植物の枝分かれを調節するとともに、植物の根から分泌されて、菌根菌など他の生物とのコミュニケーションにおいても重要な役割を担う。
注3)リン肥料
リン資源は有限であり、世界的にその有効利用が求められている。日本はその100%を国外に依存しており、そのほとんどがリン肥料として農業分野で使用されている。そのため、リン肥料節減が重要な課題となっている。

<目指すビジョンの図>

図4

【研究開発課題5】

課題名: 「触原色に立脚した身体性メディア技術の基盤構築と応用展開」
研究代表者: 舘 ワ(慶應義塾大学 特別招聘教授)

CRESTでは、触原色原理注1)に基づく触覚伝送手法を開発し、触覚と3D映像が融合した3次元視触覚情報提示装置注2)や触感を伝えるテレイグジスタンス注3)ロボットなどの実証システムを通じて、その有用性を示し触感伝送の基盤技術を構築しました。

ACCELでは、触原色原理に基づき小型・一体型の触覚伝送モジュールを開発し産業界や一般のユーザーに広く提供することで、触覚を持つ身体的経験の記録、伝送、再生に基づく製品やサービスの早期創出を推進します。放送分野やエンターテインメント分野での実用化を志向した「身体性メディアプラットフォーム」、およびロボットを用いた遠隔就労という新しい産業の可能性を示す「身体性テレイグジスタンスプラットフォーム」の2つの実証システムを構築し、社会的・経済的インパクトを与えるイノベーションの実現を目指します。

注1)触原色原理
人の触知覚メカニズムに基づき、触覚を視覚の3原色と同様に、圧力・振動・温度など複数の感覚要素の統合として捉えることで、触覚の計測・伝送・提示を可能とする技術。
注2)3次元視触覚情報提示装置
手で直接触れ、操り、触感を感じることができるような3D映像を空中に提示し、バーチャルな世界を現実世界と同様に「見たものを見たままにさわれる」ようにする技術。
注3)テレイグジスタンス
人の分身となるロボットを遠隔地に配置し人の身体運動をロボットに同期すると同時に、分身ロボットが得た視覚・聴覚・触覚を人に伝えることで、まるで人自身がロボットと一体となり遠隔地に訪れたかのような体験を提供する技術。

<目指すビジョンの図>

図5