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別紙1

平成26年度 新規プロジェクトの概要一覧

「持続可能な多世代共創社会のデザイン」研究開発領域 ≪平成26年度発足≫

実施期間:原則3年、研究開発費:数百万円〜3,000万円未満/年

題名 研究代表者名
所属・役職
概要 研究開発に協力する関与者
多世代参加型ストックマネジメント手法の普及を通じた地方自治体での持続可能性の確保
倉阪 秀史
千葉大学
大学院人文社会科学研究科
教授
人口減少・超高齢化社会において社会を持続可能とするには、社会を支える資本ストック(人的資本、人工資本、自然資本、社会関係資本)の健全な維持と、世代間継承が必要である。そのためには、資本ストックの将来推移を予測して、それらの適切な維持・管理・活用(ストックマネジメント)について検討し、包括的に地域をデザインすることが求められる。資本ストックは地域によって異なるため、各地方自治体がストックマネジメントを行わなければならないが、その経験が蓄積されていない。 本プロジェクトでは、自治体職員向けに、資本ストックの現況の自治体間比較データベースや将来予測ソフトウェアを開発する。また、将来予測に基づいた対応シナリオの作成や多世代参加型の合意形成など、ストックマネジメントの方法論をマニュアル化し、これを普及させることにより地域レベルでの持続可能性の確保を目指す。
  • 芝浦工業大学 工学部
  • 独立行政法人 国立環境研究所
  • 八千代市 総務企画部 総合企画課
  • 市原市 企画部 企画調整課
  • 館山市 市長公室 企画課
  • 千葉県庁 総合企画部 政策企画課
多世代共創による視覚障害者移動支援システムの開発
関 喜一
独立行政法人 産業技術総合研究所
ヒューマンライフテクノロジー研究部門
主任研究員
少子高齢化によって障害者の支援者も高齢化する。そのような未来においても支援を持続可能とし、障害者の社会参加が促進され、多世代・多様な人々が活躍できる社会をデザインすることが求められている。 本プロジェクトでは、多世代の視覚障害者が協働で相互に移動支援を行う新しいタイプの移動支援社会システムの実現を目指す。具体的には、視覚障害者が携帯する汎用携帯型端末が、歩行時における移動アクセシビリティ情報を自動で収集し、クラウドを介して情報共有できるナビゲーション・システムを開発する。これにより、従来は地域のボランティアによって収集されていたバリアフリー情報がビッグデータとして構築され、リアルタイムで配信されるようになる。また、地域での実証を通じて、多世代の視覚障害者の移動支援を核とした地域コミュニティ・デザイン手法を確立し、法制化・標準化などの社会制度化に取り組む。
  • 独立行政法人 産業技術総合研究所
    サービス工学研究センター
  • 静岡県立大学 国際関係学部
  • 神戸大学 大学院人文学研究科
  • 新潟大学 工学部
  • 筑波大学 システム情報系
  • 特定非営利活動法人 神戸アイライト協会
  • 株式会社エムティーアイ 新技術開発室
未病に取り組む多世代共創コミュニティの形成と有効性検証
渡辺 賢治
慶應義塾大学
環境情報学部
教授
少子高齢化に伴う医療費・介護費の増加が、人口減少社会において、若者や次世代の負担を増大させている。そのため、若年者から高齢者まで、心身の健康保持・増進に取り組むことが求められている。 本プロジェクトでは、漢方の「未病」(健康と病気の間で連続的に変化するもの)に着目し、個人だけでなく、多世代共創により地域コミュニティで健康増進や病気・要介護度の悪化予防に取り組むモデルを開発する。具体的には、個人が自ら健康状態を把握して日々の生活で未病対策ができるツールを開発するとともに、個人への適切な介入プログラムの構築も可能となるような評価の仕組みを開発する。さらに、運動量を増やすための歩きたくなるまちづくりや、地域コーディネーターが世代をつないでいきがいづくりを支援する仕組みを開発し、地域が自立して未病対策が行えるような多世代共創コミュニティをデザイン・実践する。
  • 慶應義塾大学 総合政策学部
  • 浜松医科大学 医学部
  • 株式会社アセンダント
  • 神奈川県 政策局
  • 神奈川県 保健福祉局
  • 神奈川県 県西地域県政総合センター
  • 神奈川県 小田原保健福祉事務所
  • 県西地域活性化推進協議会
  • 湯河原町
  • 湯河原町商工会
  • 特定非営利活動法人 サクセスフルエイジング研究会
  • 漢方デスク株式会社

○プロジェクト企画調査※2

題 名研究代表者名
所属・役職
共想法による多世代交流支援方法の検討
大武 美保子
千葉大学 大学院工学研究科
准教授
多世代循環型相互扶助システムの開発に向けた検討
藤原 佳典
地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター
東京都 健康長寿医療センター研究所
研究部長
地域の幸福とその社会文化的基盤の構成要素の検討
吉川 左紀子
京都大学 こころの未来研究センター
教授・センター長

※2 プロジェクト企画調査:
構想は優れているものの研究開発プロジェクトとして実施するためにはさらなる具体化が必要と判断されたものについて、年度内で企画を具体化するための調査を行うこととしたもの。

<総評>領域総括 植田 和弘(京都大学 大学院経済学研究科 教授)

平成26年度に開始された「持続可能な多世代共創社会のデザイン」研究開発領域では、人口減少、少子高齢化、財政縮小、そして地球規模の気候変動など、成熟社会が抱える重層的な問題を見据え、多世代・多様な人々の共創と科学的根拠に基づき、環境、社会、経済などの多面的側面から持続可能な都市・地域をデザインすることを目指しています。

第1回目の募集となる今年度は、これらの目的や問題意識を提示するとともに、領域目標である(1)地域資源と技術を活用して多世代・多様な人々が活躍できる持続可能な都市・地域のデザイン提示、(2)科学的根拠に基づいた多面的な価値創出のための仕組みづくり、(3)研究開発成果の社会実装・展開に向けた成果の一般化・体系化およびネットワークの構築、という観点を強調して提案を募るとともに、幅広い提案者層に呼びかけることを目的に、東京と京都で募集説明会を開催しました。

この結果、103件の応募がありました。募集締め切り後、領域アドバイザーの協力を得て、書類選考と面接選考(事前評価)を実施し、最終的に3件を研究開発プロジェクトとして、3件を企画調査として採択しました。

対象とする問題ないし分野は、医療、福祉、農業、エネルギー、気候変動、安全、インフラなど多岐にわたりましたが、量的には医療、福祉系の提案が多くありました。また、研究開発内容も、社会をデザインするツールや指標開発から、地域のビジョン形成、まちづくり、人材育成まで、幅広い提案がなされました。

都市・地域での実践的な研究開発を求めましたが、領域が中心的な対象として設定した大都市郊外や地方中小都市、被災地が必ずしも多いわけではなく、農村や中山間地、離島などについては都市との連携が意識されていないものもありました。

被災地については、多世代共創の視点が明確でないものや、さまざまな復興支援プロジェクトとの違いが明瞭でなく、採択に至りませんでしたが、領域が対象とする問題が顕著に現れる地域であり、次年度の提案に期待したいところです。

具体的な社会問題の解決を目指す研究開発においては、最終的に目指す社会のビジョンが明確であるとともに、その実現に向けて都市・地域がどのように変容していくのか、その移行プロセス(社会実装の道筋)をバックキャスティングで考えることと、その中で3年間のプロジェクトがどのような位置づけにあるのかがロジカルに説明されることが肝要でしたが、難しくもあったようです。

本研究開発領域は、多世代共創、持続可能性、都市・地域デザインという3つの要素を統合し、社会実装を目指して研究開発を行うものです。しかし、3つの要素を有機的に統合した提案は少なく、領域が求めるプロジェクトとするには、採択後も領域全体との相互交流を図り、プロジェクトの目標設定や進め方を磨いていく必要性を感じました。

特に、本研究開発領域が独自に設定した「多世代共創」という要素については、多世代による“co−creation”というその本来の趣旨が十分に理解されていない提案が少なくありませんでした。対象とする問題や成果の受け手が多世代であればよいとするものや、単に多世代が交流するだけのものも散見されました。ただ、「多世代共創」の視点や重要性を改めて認識いただいたとの印象を強く受け、領域を新たに設定したことの意義は大きいと感じました。

今後は採択した課題が「持続可能な多世代共創社会のデザイン」のモデルケースとなるように、研究開発実施者と領域マネジメントチームのメンバーが一体となってプロジェクトの推進に取り組んで行く所存です。