JST(理事長 中村 道治)は、ドイツ研究振興協会(DFG)注1)およびドイツ連邦教育研究省(BMBF)注2)と共同で「計算論的神経科学」に関する4件の研究交流課題を支援することを決定しました。この支援は、戦略的国際科学技術協力推進事業注3)「日本-ドイツ研究交流」注4)の一環として行われるものです。
支援を決定した課題は次の通りです。
(1)「計算論的アプローチを用いた実学習、フィクティブ学習、および観察学習の神経機構の解明」
(研究代表者:関西医科大学 医学部 磯田 昌岐 准教授、オットー・フォン・ゲーリケ大学マクデブルク 自然科学部 マルクス・ウルスペルガー 教授)
本研究交流は、実学習、フィクティブ学習、および観察学習の神経機構を、行動実験、脳機能画像実験、電気生理実験、そして計算論の手法を統合的に用いて解明するものです。
(2)「マウス運動野in vivo 2光子イメージングデータのデコーディング」
(研究代表者:株式会社国際電気通信基礎技術研究所 脳情報通信総合研究所 神谷 之康 研究室長、テュービンゲン大学 総合神経科学センター タカシ・サトウ ジュニアグループリーダー)
本研究交流は、2光子カルシウムイメージングデータを機械学習モデルで解析することにより、運動を準備・生成する神経回路の計算原理の解明を目指すものです。
(3)「視覚野の機能構築の発達」
(研究代表者:九州大学 医学研究院 大木 研一 教授、ゲーテ大学 計算機科学・数学部 マティアス・カスシューベ 教授)
本研究交流は、神経細胞の2光子カルシウムイメージングを行い、正常な発達時に機能構築がどのように変化するかを研究し、計算論的な神経回路モデルを構築し、神経回路再構成のメカニズムの解明を目指すものです。
(4)「効率的感覚表現を促進する能動的奥行知覚の自律学習:神経モデルからヒューマノイドロボットまで」
(研究代表者:北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 チョン・ソンムン 助教、高等研究フランクフルト研究所 神経科学部 ジョーン・トリッシュ 教授)
本研究交流は、効率的な符号化理論に基づいて、眼球・頭部・全身運動を利用する幼児の両眼奥行知覚発達の神経モデルを開発することを目指すものです。
今回の研究交流課題の募集では17件の応募があり、これらの応募課題を日本側およびドイツ側の外部専門家により評価しました。その結果をもとにJST、DFGおよびBMBFが協議を行い、研究内容の優位性や交流計画の有効性などの観点から、日本とドイツがともに支援すべきとして合意した4件を支援課題として決定しました。研究期間は支援開始から3年間を予定しています。