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総評
先端計測技術評価委員長 小林 俊一
 我が国の科学技術が先端的であるという現実の一方で、それを支えるべき計測機器では海外依存が著しいという認識が顕在化しています。このままでは科学技術立国のインフラに脆弱の懸念があると常々思っていました。しかしよく考えてみると我が国の計測技術が劣っているのでは決してない、ただそれをバックアップするシステムが充分には整備されていなかったことが主な原因ではないでしょうか。
 今年度から国が始めることになったこの事業が、最先端の研究ニーズに応えるべく、将来の創造的・独創的な研究開発のための先端計測分析技術・機器と、その周辺システムの開発を推進することを目的としていることはとても有意義であり歓迎すべきでしょう。こう考えた上で非力をも顧みず評価委員長を引き受けました。
 この事業は独立行政法人科学技術振興機構(JST)が実施機関として運営しています。具体的には次に述べる2つのプログラムにより事業を推進しています。「先端計測分析機器開発事業(機器開発プログラム)」では、「生体内・細胞内の生体高分子の高分解能動態解析(原子・分子レベル、局所・3次元解析)」、「実験小動物の生体内の代謝の個体レベルでの無・低侵襲的解析、可視化」、「ナノレベルの物質構造3次元可視化」、「ナノレベルの物性・機能の複合計測」、「極微少量環境物質の直接・多元素・多成分同時計測」の5つの開発領域を設定し開発課題を公募しました。さらに、これらの開発領域に含まれない開発課題については「領域非特定型」として公募しました。また、「先端計測分析技術・手法開発事業(要素技術プログラム)」では、開発領域は設けず、新規性のある独創的な計測分析技術・手法に関する開発課題を広く公募しました。
 今回は募集初年度ではありながら、大学、独立行政法人、国公立試験研究機関、民間企業等から合計522件という予想を超える多数の応募がありました。このうち書類選考により特に優れていると判断された60件を面接選考対象とし、最終的に面接選考によって29件を採択しました。応募の大多数がきわめてすぐれた計画でしたが本事業の予算の制約から限られた件数しか採択できなかったことはとても残念です。採用に至らなかった提案の中にも、画期的、意欲的な開発構想が数多く見受けられました。
 採択課題の内訳は、構造分析関係が11件、質量分析関係が6件、光検出器関係が2件、生体計測分析関係が7件、環境微量物質分析関係が3件でした。いずれも高い実績をもったチームリーダーに率いられた極めてレベルの高い開発チームであることが特徴的でした。採用に至らなかった提案の中には基本原理の検証が済んでいないもの、最先端の機器開発を志向していないもの、開発計画に見合った開発期間・開発費が設定されていないもの、開発目標が明確でないものなど、本事業として推進するにふさわしくないと思われるものもいくつか含まれていたことは指摘しておくべきでしょう。

 採択になった計画が我が国の科学技術の礎として花開くことを、またそれが世界の科学技術の発展にも大いに貢献することを衷心より期待します。

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This page updated on August 31, 2004

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