別紙2

「老年病に関するDNA多型データベース」事後評価結果


1. 課題名
老年病に関するDNA多型データベース
(公開名:老年病SNPデータベース)
(URL http://www.tmgh.metro.tokyo.jp/jg-snp/japanese/top.html
2. 開発・運用責任者
東京都老人医療センター
 開発責任者 折茂  肇(元院長)
 運用責任者 沢辺 元司(剖検病理科 医長)
3. 課題概要
 老年病における候補遺伝子の遺伝子多型(特にSNPと略称される一塩基多型)の役割に関する研究の推進のためにデータベースを開発した。個人情報保護の観点からデータ蓄積のための内部用と公開用の2つのデータベースから構成されている。内部用老年病SNPデータベース(GEAD)は多数の高齢者病理解剖に由来し、26老年病臨床診断、喫煙歴、飲酒歴、臨床的痴呆指数、720病理学的所見、粥状硬化度などの臨床病理データと遺伝子多型データが匿名化個人情報とともに含まれている。一方、インターネット公開老年病SNPデータベース(JG-SNP)には個人情報が全く含まれておらず、26老年病臨床診断、12病理所見、SNPを検索キーとし、症例分布を年齢階級・性別に検索・ダウンロード可能である。

<データ項目とデータ量>
症例数(剖検数) 1,375例(平均年齢80歳;6遺伝子11SNPを公開)
(データ件数は平成16年4月現在)

<開発期間> 平成12年4月~平成15年3月
4. アクセス状況
 公開時(平成15年4月)~平成16年3月 : 10,185件
5. 外部発表
*開発中
年 度 件 数 備 考
平成13年度 2件 国際老年学会他
平成14年度 1件 千葉大学国際シンポジウム
*開発終了後
年 度 件 数 備 考
平成15年度 5件 日本老年医学会他
6. 事後評価結果
6-1 当初計画の達成度
 平成15年4月にヒトゲノムの完全解読宣言があり、ポストゲノムの研究分野として臨床分野への遺伝子情報の活用が着目されている。本データベースはヒトゲノムの解読完了前に着手された、臨床・病理診断と遺伝子多型の関連を提示する前駆的データベースである。そのため遺伝子多型は老年病関連の主要なものに限られ、また収録データの公開も遅れている。当初計画は「老年病における候補遺伝子の遺伝子多型の役割に関する研究の推進のためのデータベースの開発」であり、前駆的データベースの構築としてはほぼ達成された。
6-2 データベースの評価
 高齢者1,375名の老年病関連の疾患と遺伝子多型との関係を統計的に提示できるこれまでにないデータベースである。高齢者に多い病態は相互に大変深く関連しており、それらを総合的にかつ分析的に解析することが病因の解明につながると考えられる。このデータベースはそのような利用により医療の発展に寄与できるものとしての期待が大きい。検索結果としては統計分布データの提示に留まり、データの活用は利用者がダウンロードして加工することに任せているが、疾患と遺伝子多型の関連性を分かり易く表現する方法の検討が望まれる。
 搭載した老年病関連の臨床診断は骨粗鬆症等26種、解剖結果の病理診断は動脈硬化症等12種であり、日本老年医学会が「高齢者に頻度が高い疾患」として挙げた疾患に準拠している。また、病理データの疫学的解析を進め、当データベースの強みである病理診断に基づく疾病の公開を広げる計画があり、今後が期待される。なお、病理所見の詳細データについては非公開だが、貴重なデータであり、医学関連研究者には参照できる機会が提供されている。一方、搭載された老年病関連の候補遺伝子は6遺伝子11多型(SNP)でありまだ少ない。平成16年度には13遺伝子31多型までの追加が計画されており、また平成17年度以降の追加も計画されているので、計画実現へ向け努力して欲しい。論文発表が未完で該当データの公開が遅れているとのことであり、論文発表を早急に行い公開データの拡充を図られたい。
6-3 データベース化終了後の公開運用体制及び運用状況
 公開データベースの日常管理は医療センターのホームページと一括して外注されており、特に問題はない。
 公開後は搭載する剖検数及び遺伝子数の追加と研究者向けに画面デザインの改修が行われており、運用責任者を中心とする現在の運用体制で今後のデータ追加等の運用に対応できると見込まれる。
6-4 運用の今後の展開
 計画されている病理解剖例の追加(平成17年度には合計1,900例になる)や公開病理データの拡大(平成17年度)を計画的に実施することにより、着実に内容の充実を図ることが必要である。また、論文発表、病理データ解析等を速やかに実施し、非公開部分の情報の公開を推進し、より有用なデータベース化を図ることにも留意する必要がある。共同研究により得られる遺伝子データの搭載も予定されており、データベースの拡充を図られたい。
7. 総合評価
 インターネットに公開されているSNPデータベースはいくつかあるが、病理解剖例に基づき表現型(疾病など)を同時に公開していることが本データベースの特長である。平均年齢80歳の約1,400件の高齢者病理解剖例に対し、病理データが網羅的に収集されており、これらは貴重なデータと言える。収録SNP数の増加を図ることにより、医薬開発における利用も含め、今後の医療への寄与につながる有用なデータベースとなることが期待される。老年病を中心とした疾患と多型を関連づけた研究の端緒を開くデータベースが構築されたと評価できる。ただし、現状では基盤構築の段階に留まっており、収録SNP数の今後の更なる拡充は不可欠である。また、論文発表を早急に行い、データの公開を早められたい。
 センターのみならず社会における財産として、本データベースへの期待を十分に認識し、研究推進に使えるデータベースとするための内容の充実と普及にさらなる積極的な対応と努力が望まれる。

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This page updated on August 27, 2004

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