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参考1

J−RAPID 東日本大震災関連の研究・調査事例

甚大な被害をもたらした災害の発生直後に行われた研究・調査で得られた貴重な教訓は、今後予想される東京・大阪などの大都市における大災害に対して、十分に生かすことが重要です。ここで紹介する谷口教授のJ−RAPIDでの成果は、一般社団法人 全国物流ネットワーク協会(宅配便や路線便事業者を会員とする業界団体)が救援物資配送のために開発した「物流Netシステム」に参考にされています。

災害時の物流の改善を目指して
—東日本大震災での経験知を将来の防災計画に活かす—

「東日本大震災におけるヒューマニタリアン・ロジスティクスに関する共同研究」
日本側研究代表者:谷口 栄一 教授(京都大学)
米国側研究代表者:ホセ・ホルゲン−ヴェラス 教授(レンスラー工科大学)
研究期間:平成23年6月〜平成24年3月
写真(3枚とも):救援物資輸送における県の配送拠点(岩手県)

谷口教授は、ITS(高度道路交通システム)を利用した配車・配送計画の最適化に関する研究や、都市再生に関する研究を行っています。

「ヒューマニタリアン・ロジスティクス」とは、災害時などに人々の困窮を緩和するために行う救援物資配送を含む一連の物の流れ・保管などの計画・管理活動を指します。「J−RAPID」では、日米共同で、ヒューマニタリアン・ロジスティクスについて、東日本大震災における実際のデータを収集するとともに救援物資配送に携わった官庁、民間物流事業者、荷主の方の意見をインタビューによって聴き取り、問題点や成功点を抽出し、その原因を分析し、今後起こりうる災害時の救援物資配送の改善を目指す研究を行いました。

阪神淡路大震災(1995年)・新潟県中越地震(2004年)の災害調査の経験がある日本側チームと、ハリケーンカトリーナ(2005年)・ハイチの震災(2010年)の調査経験のある米国側チームが、それぞれの経験に基づいて知見を共有し、特に外国と日本の比較という観点があったために、より深いインタビューの実施やデータ分析が可能になりました。

調査は、1)物流拠点の配置、2)トラックの運行や物資の調達、保管、仕分けのし方、また3)被災者のニーズの把握をどのように行ったか、4)コミュニケーションやロジスティックスのマネジメントにICT(情報通信技術)やITSをどのように活用したか、に着目して行われ、震災後緊急に調査を実施できたことでたくさんの新たな知見を得ることができました。

ヒューマニタリアン・ロジスティクスは、個別の国・地域の環境、文化、災害の大きさ、政府や地方自治体の体制などによって大きく異なってきます。谷口教授の研究は、JSTのCONCERT−Japan(日本と欧州諸国との間の科学技術協力関係を発展させることを目的としたプロジェクト)で、日本・ドイツ・ルーマニア・オーストラリア・イギリス共同研究「地震に対して強靭な社会を創るための道路ネットワーク」として継続されています。
ホームページ<http://www.jst.go.jp/pr/info/info960/index.html>