平成23年度戦略的創造研究推進事業(CREST)における
新規発足研究領域の選定及び研究総括の指定について(生命動態)


 戦略目標が文部科学省によって通知されると、研究主監会議の審議を経て研究領域を選定するとともに、研究総括を指定します。
 標記の件については、研究主監会議において、基礎研究に係る課題評価の方法等に関する達に基づいて審議され、下記のとおり平成23年10月5日に承認されました。これを受け、下記の研究領域を選定するとともに、研究総括を指定しました。

研究領域、研究総括及び戦略目標 一覧

研究領域 研究総括 戦略目標
CREST
生命動態の理解と制御のための基盤技術の創出
山本 雅(やまもと ただし)
(東京大学 医科学研究所 教授)
生命現象の統合的理解や安全で有効性の高い治療の実現等に向けたin silico/in vitroでの細胞動態の再現化による細胞と細胞集団を自在に操る技術体系の創出

研究領域 「生命動態の理解と制御のための基盤技術の創出」(CREST)

 本戦略目標においては、実験的アプローチ、数理計算的アプローチ、構成生物的アプローチの3つのアプローチを融合させた新しい研究の進め方により生命科学研究の新しい潮流を生み出し、細胞と細胞集団を制御する技術に繋げていくことを目指すことが謳われている。
 この戦略目標を達成するためには、二つの方策:①「3つのアプローチを構成する研究者の連携を保ちつつも、個人研究者の独創的な発想により細胞動態を理解し制御を目指す先鋭的かつ挑戦的な研究を推進すること」、②「異なるアプローチを融合した構成論的な研究を推進すること」により、動的で複雑な生命現象をシステムとして捉え理解し、さらには細胞と細胞集団を制御する技術に繋げていくことを目指すことが考えられる。
 方策①については、個人研究であるため、さきがけ「細胞機能の構成的な理解と制御」研究領域(研究総括:上田泰己 理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター プロジェクトリーダー)を先行して設定し、既に研究提案募集を行っている。一方、方策②については、チーム型研究であるCRESTが適しているが、綿密な研究領域のフレームの検討や研究者コミュニティへの周知などの工夫が必要であり、準備期間を経て領域を設定することが妥当であると考え、今回のCREST研究領域の設定に至った。
 本CREST研究領域においては、生命現象を時空間の視点で統合的に理解する研究を対象としている。将来的には生命現象を自在に操る技術を創出することを視野に入れ、従来の分子生物学のアプローチでは踏み込めなかった動的かつ複雑な生命現象の作動原理を解明する研究を幅広く推進する。そのためには、生命科学と、近年急速に発展した高速・高分解能の計測・分析技術や数学、物理学、工学、情報・計算科学などを含む先端科学を融合して研究を行う必要があり、特に数理科学に基づくモデリングやシミュレーションを活用することが求められる。これには、異分野の多様な研究グループがチームを構成して研究を推進することが有効と考えられ、CRESTで実施することが適切である。
 上記の通り、本研究領域は、広く統合的に生命現象を理解し、将来的な技術シーズ創出に資するように考慮されており、目指す戦略目標の達成に向けて適切に設定されている。また、様々なアプローチ、分野からの革新的提案が期待できるべく考慮されており、幅広い分野から多様で優れた研究提案が多数見込まれる。

研究総括 山本 雅

 山本 雅氏は、癌と細胞内シグナル伝達の研究者として広く知られており、分子生物学的研究に幅広い知見と経験、実績を有している。同氏は、ヒトErbB2 遺伝子を同定し、癌におけるErbB2 の遺伝子増幅や機能、およびErbB2 シグナル伝達系の解析についての研究を進めてきている。さらに、近年Src ファミリーチロシンキナーゼシグナルが免疫機能や神経機能制御に関わることを見い出し、癌のみならず神経等まで幅広い対象で細胞シグナリング研究を行っている。このことから、異なる分野に対する取り組みについて視野の広い研究者であると考えられる。また、文部科学省革新的細胞解析研究プログラム(セルイノベーション)のプログラムオフィサー(PO)を務めており、その中でシーケンス拠点およびデータ解析拠点担当のPOとして、高度な次世代シーケンス技術を提供するシーケンス拠点、およびシーケンス拠点から産出される膨大なデータから意味のある情報を抽出する技術の革新を担うデータ解析拠点が、生命科学の先導研究とリンクする成果をあげるべく貢献している。以上のことを鑑みると、生命現象を様々なアプローチを融合して統合的に理解することを目的とする本研究領域を運営するのに必要な知見・先見性・洞察力を十分に有していると見られる。
 また、東京大学医科学研究所所長の経験があり、適切なマネジメントを行う経験・能力を有していると思われる。
 研究コミュニティにおける活動としては、現在、日本学術会議会員であり、癌学会や分子生物学会にて評議員等を務めていたことから、関連分野の研究者からの信頼も厚く、公平な評価を行いうると見られる。また、日本学術振興会科学研究費専門委員会委員を経験し、特別推進研究をはじめとした大型研究等の選考経験も豊富である。
 加えて、近年、NIH Fogarty Scholarを受賞し、3年間NIHにおいても研究を行うなど国際的にも評価されており、優れた国際感覚を有していると考えられる。
 以上を総合すると、山本 雅氏は本研究領域について先見性および洞察力を有すると同時に、適切なマネジメントを行う経験、能力を有し、あわせて関連分野の研究者から信頼され、公平な評価を行いうる人物と見られる。また、本研究領域のように研究チームで研究を推進するCRESTの総括として適任と考えられる。



This page updated on October 28, 2011
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