戦略的創造研究推進事業HOME評価戦略的創造研究推進事業における平成23年度研究領域評価結果について > CREST「次世代エレクトロニクスデバイスの創出に資する革新材料・プロセス研究」中間評価

CREST「次世代エレクトロニクスデバイスの創出に資する革新材料・プロセス研究」
研究領域中間評価報告書

1.総合所見

[研究領域全体としての成果及び当該分野の進展への寄与の見通し]
 半導体集積デバイスにおいて、ロードマップにしたがった微細化だけでは達成できない機能・性能を実現可能とするための材料、構造、プロセスの「開発」を行うことを目標とする本研究領域の成果が、狙い通りに実際に本分野の進展に寄与することに大いに期待したい。

[本研究領域の意義]
 本研究領域では、新デバイスの導入による超低消費電力化や高次の付加価値の付与など目標を高いところに置いているが、それだけに達成できればその意義は極めて大きい。

[今後の研究推進への提言]
 本研究領域ではすべての研究課題名に「開発」をつけているように、実用化の道筋をつけることを重視している。実用化に関してのベンチマークを明記して進めると共に、成果の出口イメージをはっきりもって研究推進して欲しい。
 近年、我が国のエレクトロニクス産業の国際的競争力が急速に失墜しつつある状況下において、本研究領域のもつ意義は極めて大きいと考えられる。本研究領域全体の成果を我が国の当該分野の復興・進展にいかに寄与できるようにするかについての提言ができればこの上ないが、少なくとも知的財産の確保には十分つとめてほしい。
 以上の視点の下で、本研究領域の成果をエグジットとして産業に繋げていくための産業界との意見交換の場を設定することも意味があるのではないかと考える。

2.研究領域のねらいと研究課題の選考

[研究領域のねらい]
 本研究領域では、半導体集積回路の微細化の限界が顕在化しつつある中で、これを解決するための次世代デバイス開発のイノベーションをはかることをねらいとしている。このねらいは、渡辺久恒研究総括のこれまでの職務上の永年の経験と深い洞察に基づいたものであり、極めて優れたものと評価できる。

[選考方針]
 ブレークスルーの可能性の重視、経済産業省のプロジェクトとの重複の排除、分野間のバランスの考慮など、妥当な選考方針が採られていると考えられる。

[領域アドバイザーの構成]
 領域アドバイザーは大学などの教育・研究機関から7名、民間企業から2名が選出されており、この分野で高い見識をもつ専門家で構成されている。しかし、本研究領域のねらいを考慮すると、文部科学省傘下のプロジェクトであるとしても、産業界からのメンバーがもう少し多くてもよかったのではないだろうか。

[採択課題の構成]
 原理5件、材料4件、プロセス3件、計測3件、シミュレーション3件と幅広く採択されバランスのよい採択課題の構成となっている。

3.研究領域のマネジメント

[研究領域運営の方針]
 研究代表者と総括によるいわゆる「プロジェクト・マネジメント」の周知徹底につとめるなど、よく運営されている。

[進捗状況の把握と評価]
 各研究課題についての半年後のサイトビジット、一年半後の報告会での進捗把握と評価が実施されていて、よいプロジェクト・マネジメントがなされている。

[課題間の連携の推進]
 研究の分野や姿勢の異なる研究者の交流による革新テーマの創出、ブレークスルー、研究者の覚醒(出口シナリオを語れる世界的基礎研究者の創出)等の点でやや不足しているのではないかとも感じられるが、今後の改善に期待したい。

[研究費の配分]
 課題採択時に研究費配分の考え方がはっきり示されていてよい。理論研究のテーマや減額するテーマについては期待する成果を絞った配分としているなど妥当な配分がなされている。

[その他]
 研究成果の社会還元については、研究期間中の企業参入の奨励等色々配慮されているようだが、知的財産権の積極的な確保と企業の参画などの今後の一層の推進に期待したい。

4.研究進捗状況

①研究領域のねらいに対する成果の達成状況
 実用化に重点をおいた本研究の狙いがどの程度達成できているかを現時点で評価することは容易でない。それを評価するためには、各テーマ毎に少なくとも実用化にいたる道筋の予測の提示が必要であると考えられる。
②科学技術の進歩に資する成果や社会的及び経済的な効果・効用に資する成果、及び今後の見通し
 原著論文497件、招待講演466件(内、国際会議が261件)、口頭発表903件、知財出願80件、さらには、若手研究者の受賞、表彰が21件等々、科学技術の進歩に資する成果はすでに十分得られているとみなすことができる。また、国内外の先進企業から連携のオファーがあるなど本研究領域の社会的・経済的可能性が示唆される。しかし、今後の実用化を通しての社会的および経済的な効果・効用に資するかどうかは現時点ではまだ顕在化しておらず、今後の進展に期待したい。
③懸案事項・問題点
 最終報告では、本研究開発の成果をいつどのように実用化に生かしていくかを客観的な立場でまとめておくことが重要となろう。

5.その他

 本研究領域は、CRESTの課題解決型基礎研究事業であると同時に実用化への橋渡しをする事業でもあるという二つの特徴を併せ持つ。今後、この二つの軸から見て世界的に優れた研究成果の創出が期待される。

6.評価

(1) 研究領域としての戦略目標の達成に向けた状況

(1-1) 研究領域のねらいに対する研究成果の達成状況
十分な成果が得られつつある。

(1-2) 科学技術の進歩に資する成果や、社会的及び経済的な効果・効用に資する研究成果、及び今後の見通し
十分な成果が得られつつある。

(2) 研究領域としての研究マネジメントの状況
特に優れたマネジメントが行われている。

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