戦略的創造研究推進事業HOME評価CREST・さきがけの研究領域評価戦略的創造研究推進事業における平成21年度研究領域評価結果について > さきがけ研究領域「構造機能と計測分析」事後評価

さきがけ研究領域「構造機能と計測分析」
事後評価

1.総合所見

 本研究領域は、該当する戦略目標「新たな手法の開発等を通じた先端的な計測・分析機器の実現に向けた基盤技術の創出」に対し、比較的若い研究者による個人型研究(さきがけ)による研究領域として設定された。そのねらいとして、計測・分析の原理として未利用な現象、反応等を新たな手段として利用すること、既存の方法を新分野に対し適用することにより新現象の発見を導くこと、さらには従来の方法の性能を格段に増強すること、などにより新しい計測・分析法を開発することを目的としている。
 本研究領域の運営方針は概ね適切であり、アドバイザーの人選、課題の採択、課題採択後の研究領域の運営については、予算配分等を含め、研究総括を中心として極めて適切に行われている。また、研究の進展状況の把握と指導も、研究進捗報告書ならびに研究現場のサイトビジット等により適切に行われ掌握されている。研究成果の対外的な発信活動、特許の出願、関連研究者の情報交換等、研究支援活動においても、積極的な支援が行われており、特に若手研究者の育成の観点から高く評価できる。
 領域設定の際の研究のねらいと実際の研究成果および達成度については、研究総括が全採択課題の研究のねらいを分類整理した上で、それぞれの研究結果を多角的な視点から成果分析を行っている。これを参考にして総合的に判断すると、特に高く評価できる研究課題および研究者は、物理系18件中8件、化学・生物系(化学的側面and/or 生物的側面をもつ課題)は21件中4件であった。これは全体の31%に相当するが、このうち、物理系は44%、化学・生物系は19%であった。
 これらの結果から見ると、比較的多くの研究課題において、3年間という短期間に係らず、具体的なレベルで極めて高い水準の科学技術上の成果が挙げられたと評価できる。
 一方、社会・経済・文化的な価値創出への貢献という観点から見ると、本研究領域のように、広範な先端科学技術分野において根本的かつ普遍的な価値を有する基盤技術を確立するという、国家として戦略的・長期的に取り組む必要がある分野を取り上げ実施したことが特に新しく注目に値する。また、このような戦略的重要分野に於いて多くの研究課題が申請されると共に、多くの若手研究者が高いレベルの研究成果を挙げ、政府、独立行政法人、学会及び諸団体から顕彰され、より重要な競争的研究費を獲得する等、社会・経済・文化的に高く評価された。このような有為な人材を多数育成したことは、まさに、大きな社会的文化的な価値を創出したと言って過言でない。

2.研究課題の選考

 本研究領域のねらいとして、計測・分析の原理として未利用な現象・反応等を新たな手段として利用すること、既存の方法を新分野に対し適用することにより新現象の発見を導くこと、さらには従来の方法の性能を格段に増強すること、などにより新しい計測・分析法を開発することが挙げられている。このような目的設定は概ね適切であると考えられる。
ただし、当初掲げられていた試薬や前処理法等の研究開発に関しては、研究内容から関連する課題があるが、ソフトウェアの開発を目的とした課題の採択が見られなかったのは残念なことであった。
 領域アドバイザーとしては、物理系、化学系、生物系から14名の実績のある優れた研究者がバランスよく選ばれている。しかし、採択された課題は、物理系18件、化学・生物系21件と各分野には亘っているが、化学的側面に重点がある課題がやや少なかった点が課題として残されている。また、領域アドバイザーとして科学技術評論家などの視点も必要ではないか。

3.研究領域の運営

 研究領域の運営方針については概ね適切であり、研究総括を中心として、具体的な研究計画の立案および修正等実情に合わせて柔軟に実施している。また、予算配分についても、研究の進展に伴って必要に応じて研究総括が適宜判断している。
 研究の進展状況の把握と指導は最も重要なマネジメントであるが、半期ごとに行っている研究進捗報告書を通して、あるいは研究現場のサイトビジットにより適切に掌握している。その結果、装置開発等の場合にしばしば生じる研究予算の増額変更等に対し、適切な判断がなされているものと推察できる。
 研究成果の対外的な発信活動、特許の出願、関連研究者の情報交換等、研究支援活動においても、積極的な支援を行っており、若手研究者の育成の観点から高く評価できる。また、技術参事による指導助言により、特許の権利化を強力に進めた点は特筆に値する。
 以上のように研究領域の運営に関しては、高く評価できる点が多かったが、あえて付け加えるならば、若手中心の個人研究である「さきがけ」においては、独創性や先見性が高くチャレンジングな部分があるか否かを重点的に評価するなどの試みがあっても良かったのではないか。

4.研究成果

 領域設定の際の研究のねらいと実際の研究の成果および達成度は、プログラムの目的達成のための重要な管理要因である。
 本領域では、相当に高いハードルを越えて採択された全採択課題について、それぞれの研究の主なねらいを分類整理した上で、それぞれの成果の評価を行っている。
 研究成果の評価項目は、研究成果の学問的重要性、装置の開発、高分解能化・高機能化・迅速化・高感度化等基本性能の向上、複合化・小型化等の装置機能の向上、新たな情報、新たな応用、新しい計測理論に基づく新計測法の実現、大型研究資金の獲得、研究成果に対する顕彰、装置の市販等の多岐にのぼる。
 これらの項目による評価の結果、既存の装置の改良、機器・器具の複合化に類する研究が少なくなかったが、適用範囲や応用分野の拡大につながるという点で達成状況は相当程度に高いと言える。特に大型の競争的資金の獲得へ発展した例や多くの権威ある顕彰制度による賞の受賞等の例が相当な数にのぼり、顕著な成果を挙げたと言ってよい。
本研究領域における21年度までの終了課題は合計39課題であった。その中から、上記において述べた評価項目により、3分野で合計12課題を成果が具体的に見え始めた研究として選定特記している。その内訳は、物理系18件中8件、化学・生物系21件中4件であった。これは全体の31%に相当するが、物理系は44%、化学・生物系は19%であった。研究成果から判断すると、生物的側面に重点がある課題の進捗がかならずしも十分とは言えない。これらの評価は、前述した各種項目に対する評価を総合したものと考えられる。
 これらの結果から見ると、多くの研究課題について、3年間と言う短期間に係らず、学問的重要性、装置開発の実現、新たな情報獲得と応用への展開、研究成果に対する社会的評価などの観点から、極めて高い水準の科学技術上の成果を挙げたと評価できる。
 一方、社会・経済・文化的な価値創出への貢献と言う観点から見ると、本研究領域のように、広範な先端科学技術分野において根本的かつ普遍的な価値を有する基盤技術を確立するという、国家として戦略的・長期的に取り組む必要がある分野を取り上げ実施したことが特に新しく注目に値する。また、このような戦略的重要分野に於いて、多くの研究課題が申請されると共に、多くの若手研究者が高いレベルの研究成果を挙げ、政府、独立行政法人、学会及び諸団体から顕彰され、より重要な競争的研究費を獲得する等、社会・経済・文化的に高く評価された。このような有為な人材を多数育成したことは、まさに、大きな社会的文化的な価値を創出したと言って過言でない。


5.その他

 科学技術が進展する背景には、その進展を支える新規な計測・分析機器が必要であり、本研究領域の関係する戦略目標に対しては継続的な支援が必要である。したがって、今回の事業により、当該分野の研究が全て網羅され終了したように受け取られることがあってはならない。
 近年、大学においては准教授独立研究室の数が増加しつつあるが、「さきがけ」のように若手研究者が自らの自由意志で新たな課題にチャレンジできるような支援制度が必要である。これらにより次世代において世界に存在感を示しうる研究者が多数輩出し、我国の科学技術をさらに進化させるものと期待される。
 最後に、「さきがけ」においては、他の事業と異なり、特に重点を置くべき評価項目があってよいのではないかとの意見があり、以下に若干の具体例を紹介したい。
 申請者自身の独創性や先見性、チャレンジング性などを重視し、できれば個別評価項目に重みづけをして研究に方向性を与えることが望ましいのではないか。例えば、
研究課題に関し
(1) 独創性、独自性があるか
(2) 先見性、先進性があるか
(3) 科学の幅広い分野への波及効果は大きいか
(4) 産業技術発展への貢献が期待できるか
(5) 将来実用化に結び付く特許を出願あるいは取得しているか
研究者個人に関し
(1) チャレンジングな姿勢を持っているか
(2) アドバイザーによる指導やコメントへ適切に対応できているか
(3) 産官学を通じて幅広い連携が図れているか
(4) 国際的な展開が図れる積極性やコミュニケーション能力を示しているか
(5) 学会等からの受賞があるか


6.評価

(1) 研究領域としての研究マネジメントの状況
十分なマネジメントが行われた

(2) 研究領域としての戦略目標の達成に資する成果の状況

(2-1) 研究領域としてのねらいに対する成果の達成状況
特に優れた成果が得られた

(2-2) 科学技術の進歩に資する成果、社会・経済・文化的な価値創出への期待
特に優れた成果または萌芽が認められた

(2-3) 戦略目標の達成に資する成果の状況
十分な成果が得られた

■ 戻る ■