平成18年度研究領域評価結果について > 参考 戦略目標及び研究領域

戦略目標及び研究領域

1.戦略目標:「大きな可能性を秘めた未知領域への挑戦」(平成7年度設定)

 我が国が、長引く景気の停滞や国内産業の空洞化を克服し、活力ある社会を維持・発展させていくためには、既存の概念にとらわれず、新たな分野・領域を開拓し、独創的・革新的な技術の創生を通じて、新技術・新産業を創出していかなければならない。また、我が国の国際的立場に鑑みれば、それ自身が価値を有するものとしての、人類の新しい知的資産の拡大にも積極的に貢献していく必要がある。
 このような観点から、多くの新たな知見の獲得が期待されてはいるが、未だ知られていないことが多い領域、例えば、複雑で多様な生命現象の解明、分子・原子単位の極微細な領域の解明及び超高圧・超高真空等の極限的な状態における現象の解明、新たな情報技術の探索を通じて、革新的な技術の確立を目指す研究を進めることが不可欠である。
 したがって、戦略目標を、以上のような多くの未知を抱えた領域の現象の解明等により知的資産を拡大するとともに、新技術・新産業の創出を目指す「大きな可能性を秘めた未知領域への挑戦」とする。

1−1.研究領域:「高度メディア社会の生活情報技術」

 日常生活に深く関連する様々な情報技術を、「あらゆる人々が自由に使いこなせる」という観点からとらえて研究するとともに、社会科学的な側面からの研究についても対象とし、質が高く安心できる暮らし、活力ある社会の構築をめざします。
 具体的には、バリアフリー情報システム技術、人間重視ヒューマンインターフェイス技術、調和のとれた社会の構築のための情報システム技術などの研究を行います。また、これらを支えるソフトウェアの開発研究、情報コンテンツ構築とその構築技術の研究、教育情報コンテンツ構築とその活用システムの研究、煩雑化する情報社会の有るべき姿の多角的な探索および次世代情報社会へ向けた基盤技術などの研究を行います。

2.戦略目標:「がんやウィルス感染症に対して有効な革新的医薬品開発の実現のための糖鎖機能の解明と利用技術の確立」(平成14年度設定)

 2010年までに、免疫反応、がん転移などに関与する「糖鎖」及び糖鎖関連生体情報分子の探索及びその機能解析による情報伝達のメカニズムを解明し、副作用のないがん治療薬(がん細胞だけを特異的に攻撃する治療等)、各種ウイルス・バクテリア感染症の治療・予防薬(ウイルス・バクテリアの標的となる糖鎖を改変するなどによって感染を防止)、糖鎖の制御による遺伝子治療、免疫機能調整等の効率化などを実現することを目指して、以下を達成目標とする。
・細胞内及び細胞間ネットワークの情報伝達系可視化、超微量解析技術の開発
・機能分子及び情報伝達分子の特定と機能修飾の解析
・生体膜構造と情報伝達の関連解析
・脳神経等における機能分子、形態形成・分化関連分子の機能修飾及び輸送・動態の解析

2−1.研究領域:「糖鎖の生物機能の解明と利用技術」

 本研究領域は、糖タンパク質、糖脂質、プロテオグリカンといった生体分子群の有する糖鎖の新たな生物機能を解明し、その利用技術を探索するための研究を対象とするものです。
 具体的には、脳神経機能、形態形成、分化における糖鎖の役割と制御のメカニズム等の新しい機能の解明や応用の可能性を開拓する研究、糖鎖の改変によるガンの浸潤転移の制御や感染防止、免疫機能制御の手法探索等の診断、治療、予防への応用を指向する研究、あるいは、糖鎖研究に広く用いられることが期待される糖鎖の超微量解析技術、情報伝達のダイナミックな状況を可視化する技術の実現を目指す研究等が含まれます。

3.戦略目標:「個人の遺伝情報に基づく副作用のないテーラーメイド医療実現のためのゲノム情報活用基盤技術の確立」(平成14年度設定)

 2010年代において、ゲノム情報を活用した合理的な手法による創薬や、そうした手法により開発された薬剤をより効果的に人に適用するため、個人の遺伝情報に基づく、副作用のない効果的な個人に合った医療(テーラーメイド医療)の実現等を目指し、そのために必要となる基盤技術を開発することとし、以下を達成目標とする。
・高速かつ安価に個人のゲノム情報(SNPs)を解析することが出来るシステムの実用化のための基盤技術の開発
例えば、現在100%外国技術を使用しているSNPsの解析技術(現在は、インベーダー法(米国TWT社)、TaqMan法(ABI社)、MALDI-TOF法(米国数社)が使用されている)について、100%の解析精度を実現し、かつ解析速度を現在よりも1桁(現在、1億タイピング/年)上げ、コストを2桁(現在1SNPあたり、100−200円程度)程度下げるための我が国独自のSNPs解析技術の開発及びその高度化
・日本人固有の疾患遺伝子型の特定と創薬のための技術開発
例えば、日本人のゲノム配列と外国人のゲノム配列のわずかな差の比較による、薬剤感受性、感染症への抵抗性、生活習慣病の環境要因、がん・アルツハイマー病等に関する日本人固有の疾患遺伝子型の解明に決定的な情報の迅速な取得、及び同情報を活用した効果的かつ効率的な創薬のための技術開発

3−1.研究領域:「テーラーメイド医療を目指したゲノム情報活用基盤技術」

 本研究領域は、ゲノム情報を活用した創薬、個々人の体質に合った疾病の予防と治療−テーラーメイド医療−の実現に向けて、新たなゲノム情報解析システムの創製を目指した研究や多因子疾患の解明と創薬をはじめとした革新的な治療・予防法の基盤となる技術等を対象とします。
 具体的には、遺伝力の強い疾病や感染症に対する感受性や抵抗性のゲノム情報からの解明と創薬、我が国に特徴的な生活習慣病の遺伝・環境要因の探索とゲノム情報に基づいた予防法の開発、さらにゲノム情報に基づく薬剤感受性(有効性と副作用)の個人差を迅速かつ確実に解明することを目指す技術に関する研究、およびそれらの基盤となる新たな高効率ゲノム情報(SNPs)解析技術の実現を目指した研究等が含まれます。

4.戦略目標:「医療・情報産業における原子・分子レベルの現象に基づく精密製品設計・高度治療実現のための次世代統合シミュレーション技術の確立」(平成14年度設定)

 計算機内で微視的(ミクロ)現象から巨視的(マクロ)現象までを統合的に解析することで、2010年頃を目処に、物質材料・デバイス等の原子・分子レベルの現象に基づく精密製品設計開発や、細胞内タンパク質の挙動解析、生体機能シミュレーションによる高度治療等を可能とする、統合解析シミュレーション技術の実用化を目指し、以下を達成目標とする。
・マルチスケール・シミュレーション技術の確立
原子・分子のミクロスケール、無数の原子・分子を扱うマクロスケール、その間のメゾスケールの現象全体を統合して解析するマルチスケール・シミュレーション技術の確立。
・マルチフィジックス・シミュレーション技術の確立
熱、構造、流体、化学反応、電磁気的現象等の連成現象(マルチフィジックス現象)を統合解析できるマルチフィジックス・シミュレーション技術の確立。
・ネットワーク上に分散した多数のソフトウェア・データベース等を有機的に統合し、複雑問題を解析するシステム構築手法(データベースシステム技術等)の確立
―ネットワーク上に分散した大規模データに自由にアクセスし、データを収集・分析可能とするデータベースシステム技術の確立。
―複雑現象が連成して同時並行的に生じる事象の並列シミュレーション技術(タスク並列技術、収束化技術 等)の確立 等。
・革新的アルゴリズムの開発
逆問題解析、高速最適化計算手法(収束化技術等)の確立 等。

4−1.研究領域:「シミュレーション技術の革新と実用化基盤の構築」

 この研究領域は、計算機科学と計算科学が連携することにより、シミュレーション技術を革新し、信頼性や使い易さも視野に入れて、実用化の基盤を築く研究を対象とするものです。
 具体的には、物質、材料、生体などのミクロからマクロに至るさまざまな現象をシームレスに扱える新たなシミュレーション技術、分散したデータベースやソフトウェアをシステム化する技術、また、計算手法の飛躍的な発展の源となる革新的なアルゴリズムの研究や、基本ソフト、情報資源を取り扱いやすくするためのプラットフォームあるいは分野を越えて共通に利用できる標準パッケージの開発などが含まれます。

【補足】個人型研究(さきがけ)各領域の概要

1.研究領域:「情報と細胞機能」

 この研究領域は、細胞がプログラム化された遺伝子情報(内的情報)を持っていることや、環境等に由来する多くのシグナル(外的情報)の作用で様々な影響を受けていること観点から、これらの情報と細胞機能との関わりを独創的で斬新な手法、アプローチで明らかにすることにより、生命システムの謎に挑む研究を対象とするものである。
 具体的には、これら情報と細胞との相互作用の結果として発症するがん、痴呆など高齢者の疾患、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患など様々な疾患の病因解明ならびにその克服のための方法の探索に関する研究等が含まれます。

2.研究領域:「生体分子の形と機能」

 この研究領域は、遺伝情報が機能として発現するのを支えている物理的実体としての生体分子(タンパク質)に焦点をあて、物理学、化学等の物質科学の原理に基づき、その立体構造形成の仕組みや立体構造に基づく機能発現の仕組みを研究するとともに、今急速に蓄積が進んでいるゲノム情報等を対象としたバイオインフォマティクス的手法を用いた研究も対象とするものです。
 具体的には,タンパク質等の立体構造の実験的決定・理論的予測、物性研究、相互作用や複数の分子からなる超分子構造体の解析に関する新しい研究方法の開発等の基礎的研究と共に、合理的薬物設計、生物的機能の工学的利用を目指した応用研究等が含まれます。

3.研究領域:「生体と制御」

 この研究領域は、感染症、アレルギー、免疫疾患等の発症のメカニズムを生体機能や病原微生物との関わりに着目して、分子レベル、細胞レベルあるいは個体レベルで解析することにより、これらの疾患の新しい予防法、治療法の基盤を築く研究を対象とするものです。
 具体的には、病原微生物のゲノム解析によって明らかになった情報や、ヒトゲノム計画の進展によって得られたゲノム情報を利用したワクチンの開発や遺伝性疾患の解析、あるいは生体防御反応・免疫応答に関わる分子の生体レベルでの解析による免疫系疾患の病因解明、およびそれらに対する新しい治療方法の探索を目指す研究等が含まれます。

4.研究領域:「光と制御」

 この研究領域は、受光と発光、光の伝達制御、スイッチング等に用いられる光デバイス等の実現に向けて、光と物質の相互作用や光機能性材料創製に関する研究を対象とするものです。
 具体的には、非線形光学材料、発光および光記録材料を始めとした光機能性材料実現のため、半導体、酸化物結晶、分子複合体を用い、薄膜、超微粒子とナノクラスター、フォトニクス結晶、それらのハイブリッド化と微細加工など、さまざまな形態制御を受けた新規物質創製に関する研究等が含まれます。

5.研究領域:「ナノと物性」

 この研究領域は、原子・分子レベルで制御された物質、それらの集合体、異種材料の複合、さらに組成や構造をナノメーターレベルで制御・加工した材料、すなわち「ナノ材料」に関する研究を対象とするものです。
 具体的には、機能材として従来のバルク材にない特異な能力を発揮することが期待される究極の人工物質であるナノ材料が、今後情報、医療、エネルギー等、あらゆる産業分野を支える技術となる状況を踏まえ、新規ないし高度な機能発現を目指した材料設計、合成・形成の方法、またナノ物性評価やデバイス試作に関する研究等が含まれます。

6.研究領域:「合成と制御」

 この研究領域は、材料化学などの領域における有用な物性と機能を持った新物質創製に対する要請に応え、新現象・新反応・新概念に基づく新しい化学の展開、さらには新合成手法と新機能物質の創製に関する研究を対象とするものです。
 具体的には、有機合成の革新的手法・革新的なシステム、高分子の革新的合成法、などに加え、有機系・有機無機複合系物質、分子エレクトロニクス材料など優れた機能を持つ新物質・新材料へのアプローチが含まれます。

7.研究領域:「情報基盤と利用環境」

 この研究領域は、10億個のトランジスタがチップ上に集積できる時代およびインターネットでコンピュータ利用環境が激変する時代における、新しいコンピュータシステムの基盤技術と利用技術に関連した研究を対象とするものです。
 具体的には、超高機能化、超高性能化、超省電力化、モバイル化、情報家電化などを視野に入れたコンピュータシステム(アーキテクチャ、ネットワーキング、言語・コンパイラ、OS)、超大規模集積システム設計技術(DA/CAD)、およびインターネット・マルチメディアを中心とした新しい利用に関する基礎研究が含まれます。また、ハードウェアシステムとの関連性を保ちながら行う研究に加えて、全く新しい原理に基づいたコンピュータや新しい知的なコンピュータ応用研究等が含まれます。
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This page updated on July 25, 2007
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