平成18年度研究領域評価結果について > 研究領域 「糖鎖の生物機能の解明と利用技術」 中間評価

研究領域 「糖鎖の生物機能の解明と利用技術」 中間評価

1.総合所見(研究領域全体としての成果、当該分野の進展への寄与、本研究領域の意義、等)

 現時点では平成14年度と15年度採択課題についての研究総括と領域アドバイザーによる中間評価の結果が示されているだけで全体としての評価はまだ少し先になると思われる。しかし、これまでの成果を見て、すでに論文数やシンポジウム開催など優れている面があり、当該分野は勿論のこと生命科学全体に対する本プロジェクトの貢献は大きい。今後は、研究課題間での協力関係をさらに深めることで本領域がより意義深いものになることを期待したい。
 各研究計画が達成されれば、学界(糖鎖関連の分野横断的融合研究の創出、糖鎖の新たな機能解明、糖鎖の疾患との関連など)や産業界(疾患の予防、診断、治療への応用など)への大きな影響・波及効果が期待される。
 諸外国も認めている様に、糖鎖研究は日本が世界をリードしている。本領域は、その優位性、先進性をより進めることを目指して運営されており、異分野や周辺領域を巻き込んだ高い学術性が期待される。後半の研究では当初の目的を再確認し世界に類例のない成果が得られるよう努力され、本領域がより発展し拡充すべき領域となることを願う。

2.研究課題の選考(選考方針、領域アドバイザーの構成、採択された課題の構成と適切さ、等)

 研究総括が立てた選考方針は、現在及び将来において重要な課題を広く視野に入れており、糖鎖の機能解明の推進と革新的な解析技術の開発を目指していて、優れたものである。また、このような方針に沿った形でアドバイザーも選ばれ、その構成も産学バランスが取れている。審査において利益相反の排除を明確に打ち出したことはCREST全体にも良い影響を及ぼし、高く評価できる。採択された課題も平成14年度〜16年度において、研究の全体方針に基づき、調和のとれた構成となっている。具体的には、合成化学、生化学、構造生物学、医学生理学などを基盤とし、がん、感染、免疫、脳神経と他領域との融合的な研究も取り上げている。必ずしもこれまでの実績にとらわれず新たな挑戦をする可能性がある課題を選考したことも評価に値する。

3.研究領域のマネジメント(研究領域運営の方針、研究進捗状況の把握と評価、研究費の配分、等)

 研究総括は、日本を代表する糖鎖研究者であり、その力量は国内外で関与した糖鎖科学研究の成果を見れば明白である。こうした豊富な経験と知識を生かし、研究総括はきちんとした方針を立てて、それに基づき、各チーム、さらにチームを構成する各グループに至るまで研究進捗状況を的確に捉えて、適宜助言し、site-visitingを実施するなどして全体を統括している。運営にはアドバイザーの意見を取り入れられているなどの配慮も見られている。具体的には、研究テーマが拡大しすぎたときの軌道修正、国際的に競合していたが残念ながら先行されてしまったテーマについてはテーマの方向転換や修正といった研究上の指導が行われている。また、研究推進状況を加味して研究費を配分していて、このマネージメントは高く評価できる。エスタブリッシュした研究者の研究指導はなかなか困難な事柄であるが、領域の成功のためには欠かすことができない。研究総括の引き続いた努力を期待する。なお、研究成果以外の点で、研究費配分にメリハリを付ける理由について、もう少し具体的根拠を明確にすべきという意見もあったことを付記する。独立前後の助教授層を中心に若手の研究者への援助を積極的に行ったことも重要である。研究成果の発表会を広く催したことも評価できる。他省庁の援助の下にある研究を含めたオールジャパンの研究発表、交流の場である糖鎖コンソシアムの発足と進展にも研究総括をはじめ本領域の研究者が中心的役割を果たした。非公開の密接な討論を行う報告会も開催されている。非公開の会は研究推進のためにきわめて重要であり、今後も積極的に開催されることが期待される。強力な指導とサポート体制のため特許取得が順調なことも評価される。

4.研究成果(①研究領域の中で生み出された特筆すべき成果、②科学技術及び社会・経済・国民生活等に対する貢献、③問題点、等)

 国民の関心が高い、インフルエンザ感染やがんの診断や治療に向けた研究成果が期待通りに得られていることは大変心強い。例えば糖鎖に立脚したすい臓がんマーカーは有望である。しかし、中間評価の段階では、多くの研究は特筆するような決定的成果の段階に達していると即断できないので引き続いた努力が要請される。また、将来応用が期待されるような糖鎖の係わる生命現象も次々と明らかになっており、今後の発展が期待される。革新的化学合成法の開発、細胞表面の隣接分子を検出する新技術などの注目される成果も生まれている。また、ショウジョウバエ、線虫での糖鎖遺伝子の網羅的破壊と非活性化が達成されつつあることは重要で、さらなる展開のための基盤となる。
 今後、経済、国民生活との関連では、当初の戦略目標である、がんやウィルス感染症に対する新たな糖鎖医薬などの開発に向けた研究成果が期待される。
 懸念事項について述べれば、本事業は各課題5年間と限られた期間で高額の資金を投入する研究システムであり、厳しい費用対効果を国民から求められる。常に国民に見える形で成果の還元・普及を念頭に置き研究を進めることを希望する。各研究課題は概ね順調に成果が得られていると考えられるが、一部の課題ではより大きな努力が要求され、研究総括のより細かな指導も必要であろう。また、各グループ間の有機的な連携が見えにくく総合力が十分に発揮されていないチームも散見される。当初の戦略目標である、がんやウィルス感染症に対する新たな糖鎖医薬などの開発に向けた研究成果がさらに期待される。今後の欧米との熾烈な競争に勝ち抜くためにも、研究総括の本領域における、さらなるリーダーシップを期待する。

5.その他

 糖鎖科学および他領域との融合研究の進展は、学界の活性化のみならず産業界に大きな影響を与えることが期待される。そのためには本研究領域で得られた成果を産業界に貢献できるような応用研究を積極的に支援する国家レベルの新たな努力も必要であろう
 本領域の採択率は全体的に高く、他の領域のCRESTに比してもっと倍率が高くなってもよい様な気がするとの指摘があった。このCRESTは特定領域研究との重複を厳しく制限した。研究費の一極集中を避け、新しい芽を育てるために、この方針は基本的に正しいが、特定領域研究に関与する研究チームの全員が申請を控えたために、倍率が低くなった傾向があるのではないか。研究費の重複については必ずしも明確な基準があるわけではなく、今後、より明確な指針が生まれることを期待する。
 本領域では若手の育成が積極的に行われている。やや時間を経た後の評価で、若手研究者の育成について、具体的そして定量的評価を行うことも重要であろう。
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This page updated on July 25, 2007
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