研究領域 「医療に向けた化学・生物系分子を利用したバイオ素子・システムの創製」

 

1.

総合所見(研究領域全体としての成果、当該分野の進展への寄与、本研究領域が存在したことの意義・メリット)

 

 平成13年度に本領域は「化学・生物系の新材料等の創製」から出発し、革新的な機能材料、分子機械、バイオ素子、バイオセンサー技術の創製を目指したが、平成14年度「医療に向けた化学・生物系分子を利用したバイオ素子・システムの創製」に改組されており選択テーマも多岐にわたる。しかしいずれの研究グループでも優れた研究成果が得られており、研究内容の進歩は極めて良好である。この中から先進的医療技術が生まれる可能性は高い。総括の指導力も優れている。本分野は我が国がリーディング産業とすべき分野と考えられ、期待も大きいため国際競争力のある技術の実用化への途を進めてもらいたい。また医療に貢献するという共通の目標を持つことによりネットワークが生まれ、CRESTとしての特性がさらに引き出されることによる複合的な実用化への展開に期待したい。

 

 

2.

研究課題の選考(アドバイザーの構成、選考方針及び課題の選考、課題のバランス等)

 

 採択した研究領域は極めて広く、直接的には医療分野に関係しない(平成13年度発足後、平成14年度戦略目標が変更になったため現在の領域には不適合に見える)課題が残っているが、生体分子や合成分子の利用方法の独創性、可能性の高さ、その医療分野への連携を重視して課題が選択されており、全体として課題の選択は適切であるといえる。現在は基礎研究ではあるが戦略目標に向けて早期の5から10年後の応用、実用化を目指すとすると、ニーズ側すなわちシーズの出口側としての医学・医療関係のアドバイザー等の参加も必要になってくると思われる。

 

 

3.

研究領域の運営(研究総括の方針、研究領域のマネジメント、予算配分とチーム構成、今後の取り組み等)

 

 研究総括の方針はアドバイザーと連携して良く反映されている。異分野の研究者の交流促進、研究成果公募に関連する研究者、領域外の著名な研究者に講演を依頼するなど工夫が見られ、研究領域を全体的にきめ細かく指導をしており、予算の重点配分も適切である。一人の研究者の中で異分野が融合した人材を育てるという方針には賛成する。この研究領域のテーマからCRESTの研究者を中心とした研究者間の研究交流をさらに活性化し、それ自体で民間企業の研究者を惹きつけて共同研究への道筋が開かれる事を期待したい。

 

 

4.

研究進捗状況(研究領域の中で生み出されつつある特筆すべき成果、科学技術・周辺分野・国民生活・社会経済等に対する意義・効果に関する今後の期待や展望・懸案事項等)

 

 ナノメディシンへの波及効果の大きい(1)遺伝子等を内包するナノ構造体ベクターの創製とこの系を用いた遺伝子治療による骨再生の成功、(2)ナノ粒子を応用した抗レトロウイルスワクチンの開発、(3)抗原を分解するスーパー抗体酵素(Antigenase)の創製、(4)ES細胞にマイクロインジェクションできる単一細胞操作支援ロボット:SMSRの実用化、(5)細胞シートによる角膜上皮細胞の再生技術、ナノ計測技術の革新展開として@革新的な金属錯体ナノプローブの創製、A人工核酸でDNA、RNAチップの創製等、国内外で評価の高い成果が得られている。しかし応用、実用の段階になると、特に医療応用という分野には、様々な困難があり、ニーズ側や行政・規制方面との摺り合せが必要になる。ニーズ側の方向を良く把握しておくべきである。

 

 

5.

その他

 

 今のところ基礎研究として、かなり卓越した成果が出ている。しかし、次のステージでの応用展開を考えた場合、さらに医学部との連携や産業側との連携等、を進める必要がある。今後アドバイザー等として医学、医療側の専門家を参加させ、その意見を開発に反映させた方が、無駄の無い実用化に結びつき効率が良くなるだろう。

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This page updated on July 26, 2006

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