資料1−2

研究領域 「生体防御のメカニズム」


1. 総合所見
 本領域では、従来個別に実施されてきた生体防御に関する研究を、当初からひとつの組織として活動することを通して、動物(無脊椎動物から脊椎動物)と植物、高等生物に至るまで、総括的な知見の集積と総合的な解釈を可能とすることをめざしてきた。このように、生体防御機構を幅広く捉える視点の適切さは、微生物に対する感染防御機構が動物ばかりでなく植物にも共通していることを示せたことからも明らかであり、我が国からの新しいインパクトのあるコンセプトの発信として高く評価できる。
 ただし、個別の研究としては十分成果が挙がり、研究領域としても全体的な成果の大きさに繋がっていることは理解できるが、領域内での相互の研究交流が少なく、個別の研究集団という感も否めない。国際的な研究交流も含めさらに領域内の交流を促進し、今後の発展に積極的につないで行くことを意識した運営がもう少し行われても良かったと思われる。
 総合すると、本研究領域が存在したことは、この領域の日本の研究ポテンシャルの高さを示したばかりでなく、我が国の生体防御機構の研究の進展に大いに貢献したと判断され、そのような意味からも総括の所期のねらいは概ね達成されたと認められる。
 
2. 研究課題の選考
 本領域のアドバイザーは、幅広い生物対象と分野対象を網羅する6名で構成されており、その人選は適切であった。ただし、6名という人数は他領域と比べても幾分少なく、客観的な選考を行う上にも、現役の大学教授クラスの研究者を加えるなど、さらに人数が多くても良かった。
 課題の採択に関しては、以下の方針に沿って実施されている。
(1) 先導的、独創的な基礎研究であって、国際的にも高く評価され得るもの。
(2) 今後の科学技術に大きなインパクトを与え得るもの、あるいは、技術の進歩に寄与し得るもの。
(3) これまでの研究が著名な学術雑誌に受理されていること。
(4) 研究チームを構成する研究者が大いに飛躍し、将来日本の科学技術の中心的役割を果たし得ることが期待できること。
 これらの選考方針と研究総括が目指す目標に基づき、各分野のアドバイザーの意見を参考にして公正で偏りのない選考を心掛けた、と研究総括より説明があったように、採択された課題は、日本を代表し世界に通じる者が多く、それらのバランスなども適切であったと評価する。
 
3. 研究領域の運営
 研究総括は、各研究チームの研究開始後2年目を経過した時点でサイトビジットを行い、共同研究者を交えながら研究代表者との間で研究成果について議論を行うとともに、アドバイザーと今後の研究の進め方や体制について検討している。
 また、中間評価を受けて、研究計画の見直しやチームの再編なども必要に応じて実施し、全体に研究の展開が円滑に進むように促した点なども評価に値する。
 一方では、公開シンポジウムを行い一般向けに成果の紹介をするなど、研究成果の普及にも努力しており、その運営は妥当であったと思われる。
 ただし、本領域の予算に関しては、途中で研究者の逝去による課題中止を除いて、あまり大きな差異はなく、研究評価に応じて研究費の配分を適度に変更する等考慮しても良かったと思われる。
 
4. 研究結果
 得られた研究成果は1,000を超える国際一流誌の論文と、107件の国内・国外特許に結実している。その中でも、特筆すべき成果としては以下のようなものがあげられる。
(1) 自然免疫に深く関わるTRL(Toll-like receptor)の成果(審良ら)は国際的にみても最高水準のものとして高く評価できるもので、今後、動物に限らず植物の生体防御の基盤研究としてだけでなく、細胞内シグナル伝達と遺伝子発現とに関係した研究分野に与えるインパクトは極めて大きい。
(2) 昆虫における生体防御分子の発現やそれの活用(名取)、さらにNKT細胞の自己免疫病疾患の抑制に関する研究成果(谷口)は癌治療や自己免疫疾患の機能の解明と治療に向けられたものとして社会貢献への期待は大きい。
(3) 高井、田中らの免疫関係で世界を先導する優れた研究成果は、今後、様々な疾患の解明と治療などを通して、国民の健康維持に大きく貢献すると期待される。
 以上のように、課題によっては成果が乏しいと思われるものも見受けられるが、全体として本領域で得られた成果は、科学技術だけでなく国民生活への寄与も極めて大きいと認められ、今後の研究の進展に期待したい。
 
5. その他
 上述のとおり、本領域からは多くの優れた成果が生まれているが、その一方では、採択課題の中に本領域の目標に必ずしも適合していないものも見出される。その課題の代表者が研究者として能力に欠けるというのではなく、一流の研究者であることは研究実績から十分知り得るので、問題はむしろ、その課題の採択が領域として適切であったかという点にあり、本制度の採択における今後の課題を提供するものではないだろうか。

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This page updated on August 1, 2003

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