参考

戦略目標及び研究領域

  
【チーム型研究(CREST)】
Ⅰ-1. 戦略目標
『大きな可能性を秘めた未知領域への挑戦』
 我が国が、長引く景気の停滞や国内産業の空洞化を克服し、活力ある社会を維持・発展させていくためには、既存の概念にとらわれず、新たな分野・領域を開拓し、独創的・革新的な技術の創生を通じて、新技術・新産業を創出していかなければならない。また、我が国の国際的立場に鑑みれば、それ自身が価値を有するものとしての、人類の新しい知的資産の拡大にも積極的に貢献していく必要がある。
 このような観点から、多くの新たな知見の獲得が期待されてはいるが、未だ知られていないことが多い領域、例えば、複雑で多様な生命現象の解明、分子・原子単位の極微細な領域の解明及び超高庄・超高真空等の極限的な状態における現象の解明、新たな情報技術の探索を通じて、革新的な技術の確立を目指す研究を進めることが不可欠である。
 したがって、戦略目標を、以上のような多くの未知を抱えた領域の現象の解明等により知的資産を拡大するとともに、新技術・新産業の創出を目指す「大きな可能性を秘めた未知領域への挑戦」とする。
 
Ⅰ-2. 研究領域
Ⅰ-2-a.「生命活動のプログラム」
【研究領域】
 生物に特徴的な生命現象の基礎にある生命活動の本態を、主として分子レベルで解明する研究を対象とするものである。
 具体的には、高等生物の発生・分化・老化などを含む生命活動の基本にあるメカニズムやそれを遂行するプログラムについてさまざまな方向から追求するものであり、分子レベルの解明を必要とする種々の研究の基礎となるものである。
 
Ⅰ-2-b.「生体防御のメカニズム」
【研究領域】
 生物が自らを守るために備えている生体防御のメカニズムについての研究を対象とするものである。
 具体的には、動物から植物に至る種々の生物の備えている免疫機能や外的防御の機構を、個体、組織、細胞、分子・遺伝子などの観点から追求する。さらに生体防御の破綻を引き起こす種々の疾病(免疫関連疾患、ウイルス性疾患、癌など)の誘因や、その診断・治療および予防に関する基礎生物科学的な研究も対象とする。
 
Ⅰ-2-c.「量子効果等の物理現象」
【研究領域】
 原子レベルで制御された極微細構造に特に現れる、量子効果などの物理現象についての研究を対象とするものである。
 具体的には、半導体、金属などに形成される人口ナノ構造、自己組織性分子、などに現れる電子と光子が量子性を示す現象、スピン自由度に関連する新奇な現象、極微細領域に現れる量子効果以外の先端的研究などを対象とする。将来的には、量子効果を応用した新デバイスへの発展が期待される。
 
Ⅰ-2-d.「単一分子・原子レベルの反応制御」
【研究領域】
 単一分子・原子レベルの反応に注目し、新規な物質やねらった物質を得る各種の化学反応の研究を対象とするものである。
 具体的には、反応場での分子・原子レベルの反応を理解し、それを制御する反応などを物理・化学・生物的観点から追求することなどが含まれる。特に、各種の化学反応を究極的に制御し、伝統的化学の方法論のブレークスルーにつながるような先端的研究も対象とする。
 
Ⅰ-2-e.「極限環境状態における現象」
【研究領域】
 本研究領域は、極限環境下における物質のさまざまな現象を研究の対象とするものである。
 特に、超高温、極低温、超高圧、極高真空、超強磁場、微小重力場などの極限状態における物質の構造、分子、原子、電子などの挙動、新物質の創製などに関する研究提案を募集する。また、これら以外に、特殊環境下における生物の機能に関する先端的研究も対象とする。
 
II-1. 戦略目標
『脳機能の解明』
 脳は多くの画期的な発見が行われる可能性を秘めている研究対象であり、21世紀に残された数少ない巨大フロンティアのひとつである。また、脳科学の進歩は、人間たる所以の根元である脳を知ることにつながり、脳を知ることは即ち人間を理解することにつながる。また、脳科学研究の成果は、脳の老化の防止、アルツハイマー病等脳・神経系の困難な病気の克服、脳の原理を生かしたコンピュータやロボットの開発による新技術・新産業の創出につながる。このような意味で脳科学の推進を図り、脳機能の解明を行うことは、正に人類的課題となってきている。
 したがって、戦略目標を、人間の理解の基礎として脳の働きを知るとともに、新技術・新産業の創出にも繋がることを念頭においた「脳機能の解明」とする。
 なお、この脳機能の解明を行うためには、脳の働きの理解を目指す「脳を知る」、脳の老化、疾病のメカニズムの理解と制御を目指す「脳を守る」、脳型の情報処理システムの理解と構築を目指す「脳を創る」といった研究領域において、明確な研究目標を設定し、計画的に取り組むことが必要である。
 
II-2. 研究領域
「脳を知る」
【研究領域】
 脳機能の解明のうち、人間たる所以の根元である脳の働きの理解を目標とする研究を対象とするものである。
 具体的には、「脳の発生分化機構」「神経回路網の構造、機能と形成機構」「脳の高次機能(記憶、学習、意識、情動、認識と生体リズムなど)」「コミュニケーションの脳機能」の解明を目標とする。
 
III-1. 戦略目標
『環境にやさしい社会の実現』
 地球上の人口は現在約58億人であり、1970年を境に増加は減速しつつあるものの、依然として年率1.5%で増加しており、2025年には83億人、2050年には98億人に達すると予想されている。今後人類が、真に豊かで快適な生活を実現し、維持していくためには、地球規模での無制限な開発や化石燃料の過剰使用等による環境の破壊を来すことなく、必要な食料及びエネルギーを確保するとともに、種々の人間活動やその結果生じる廃棄物等の生態系への影響を極力低減していくことが重要である。
 このためには、地球規模の諸現象の解明とその予測を行うとともに、これらを基礎として人間の諸活動の環境への影響を正確に把握することや、環境保全関連技術の確立が不可欠であり、それらを踏まえて環境にやさしい社会を構築していくことが必要である。
 したがって、戦略目標を、地球変動のメカニズムの解明とその予測、環境への影響の把握、環境保全関連技術の確立等により人間の諸活動の環境への負荷の低減を目指す「環境にやさしい社会の実現」とする。
 
III-2. 研究領域
「環境低負荷型の社会システム」
【研究領域】
 人類と環境との調和を目指し、環境汚染の計測・評価、環境の保全や改善、これらを実現していくための社会システムに関する研究を対象とする。
 特に、環境汚染の計測・評価、汚染因子の特定・除去等、環境因子の計測・制御と社会設計に関する研究提案を重点的に募集する。また、これら以外に、地球上の物質・エネルギー循環、環境の観測、生態系の変化等に関する先端的研究も対象とする。
 
【個人型研究(さきがけ)】
1.「形とはたらき」
【研究領域】
 生物、無生物などに見られる多様な形とその意義、できかた、相互作用、系の形成、環境への適応などの「はたらき」を研究する。例えば、「形」を利用した分子認識、分子集合体の構築、それら集合体による高次構造の形成、できあがった高次構造の機能、高次構造の究極な「形」である生命、動植物にみられる寄生、共生、擬態などによる系の形成、環境への適応に関する研究などを含む。
 
2.「状態と変革」
【研究領域】
 物質の構造秩序が急激に変革する現象(広義の相転移)、すなわち多様な可能性を秘めた安定秩序構造がどのように他の状態に変革するか、そのダイナミクスと機構を研究するものである。例えば、分子、クラスター、液体、固体物質を研究対象とし、構造秩序変化の理論的・計算科学的研究、非線形光学などの新手法による実験的研究、光誘起構造変化、スピン秩序変化など新規な物性を示す物資の創製研究を含む。
 
3. 「素過程と連携」
【研究領域】
 「素過程と連携」は生命の営みにおける個々の細胞内要素の素過程と、複数の素過程の連携によるさまざまな形質発見のダイナミック様相を包括的に研究する領域である。例えば、刺激の認識と信号伝達、DNA結合タンパク質の活性調節と転写因子の活性化などの素過程からなる遺伝子転写制御系、また細胞周期、成熟分裂への移行、物質輸送、修復と発生から器官分化と形態形成に関する研究などを含む。

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This page updated on August 1, 2003

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